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【奇跡!】君のことを想う私の、わたしを愛するきみ。

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著者 佐木 隆臣

【内容】

人が愛するのは肉体なのか。それとも、魂、心、精神なのか。
魂のみが死滅してしまう奇病、「ルドング病」が流行する2114年の日本。
その唯一の治療法は、過去に死んだ人間の精神を代わりに肉体に入れるというものだった。
2017年、28歳の若さでこの世を去った井上綾乃(いのうえあやの)は、
30歳の「小笠原霧恵」という女性の肉体に精神を宿し、2114年の日本で再び目覚める。


しかし綾乃は、既に自分が愛した夫と娘がいない世界のなかで、
見ず知らずの「霧恵」の旦那である秀(しゅう)と、娘の梢(こずえ)と共に家族として生きていくことを迫られる・・・・・・。

 

書店員が選んだ新世代の才能! 第3回本のサナギ賞 大賞受賞作

 

【感想】

★★★★☆

首都圏震災で亡くなった「彩乃」は百年後「霧恵」という自分のひ孫として目覚める。

そして霧恵として、霧恵の娘「梢」と夫「秀」と生活をすることになる。

 

なかなか斬新な設定。ですが、霧恵の中身の彩乃は私たちと同じ時代を生きた女性。なので彼女とともに百年後の世界を受け入れていくことができました。

自動運転の車、家庭用ぬいぐるみロボット、科学と医療が発達した世界。

娘の梢は、彩乃自身も子供と生後2か月で別れてしまったこともあり、受け入れるのにはそんなに時間がかからなかった。

しかし夫。自分には生前愛した夫がいて、今の霧恵の夫を愛することができない。

しかし一緒に暮らしていくうちに、だんだんと秀のことを理解していく、好きになっていく。

自分がこうなったら果たしてどうなるんだろう。過去の自分とはきっぱり決別して新しい人生をやり直すことができるのだろうか。難しいし、過去のことをやっぱり私も知りたくなるだろうし、会いたくもなるだろう。

この本の中でもやはり、魂の移植によって過去に事件がいろいろと起きていたことがわかる。亡くなった子供の魂の移植先を探して誘拐してしまう親、亡くなった配偶者の移植先を探してつきまとってしまう元配偶者。

亡くなった精神がほかの人の肉体に移植される。きっと実際に起きたら大問題になるだろう。

人の死は、告知され、葬儀を行い、そして何回も法要を行ってだんだんと喪失にを受け入れていくことができる。と書かれていたが、全くその通りだと思う。私もやはり身近な親や友人が突然亡くなったという経験を持つが、「葬儀」の際亡くなった時の顔を見て「法要」までしている親と、「告知」を受け「葬儀」に行ったが、棺の中は見せてもらえず、そのまま家族のみで焼かれ、灰になった友人に関しては、やはり受け入れ方が違う。もういない、会えないということはわかるけど、心の奥底では「どこか遠くで生きているんじゃないか」という気持ちもあったりする。

 

後半で梢が病気にかかり、梢の肉体にほかの人の魂を入れることになった彩乃。そこで「他人の魂を家族に入れて受け入れる」人の気持ちも知ることになる。自分が秀にしたこと、言ったことは彼を傷つけたことが身に染みてよくわかるようになる。私も、彩乃の気持ちに感情移入して、なんかすごくやり切れない気持ちになった。

 

最終的に奇跡的な事実が判明して感動の結末になるのだけれど、この結末にしたことでなんかちょっと安っぽくなってしまったかなと思ってしまった。

 

でも、面白かったです。