【新しい子育ての本】キッズファイヤー・ドットコム
著者 海猫沢めろん
【内容】
少数精鋭、短期決戦をモットーとするホストクラブの店長、白鳥神威。キャストたちの「ウェーイ!」の声に見送られ、いつも通り歌舞伎町から帰った彼を家の前で待ち受けていたのは、見知らぬ赤ちゃんだった!
母親の心当たりは無いが、育てることを決意した神威は、赤ちゃん同伴で出勤するものの、女性客はあっという間に離れてしまった。
窮地に陥った神威は、元ホストのIT社長・三國孔明と一緒に、クラウドファンディングで赤ちゃんを育てることを思いつく。日本を革命するソーシャル子育てサイト、名付けて〈KIDSFIRE.COM〉だ。
試練を前にして逃げることは、カリスマホストの本能が許さない。彼らはITで日本の子育てを変えることができるのか!?男たちが育児の変革に挑む、新時代のイクメン小説!
【感想】
★★★★☆
なんだろう。最初のほうは「阿呆なホストが子育てをするやたらテンション高い話」と読んでいたんですが。
案外深い。
そして白鳥神威がまっすぐすぎる。馬鹿なんだけど、前向きで、応援したくなるような感じ。ある日自宅前に子供が置かれていてそれをすんなり受け入れ子育てをする。大人が悪いんだけど、この子に罪はない、と。
そして思いついたのが「ソーシャル子育て」クラウドファンディングで融資を募って子供の人生を売る。ゴッドファーザープラン、介護プラン、エア家族プラン、小学生プラン・・・内容も、「子供の名付け親になる」とか、「ネットでいつでも子供の姿を見られる」とか、なんか「死ぬときに手を握っていてあげる」とか、介護プランに至っては「介護するけど子供がまだ幼児の場合はスタッフと一緒にお邪魔します。遺産相続歓迎」みたいな。はっきりいって「なんじゃこれ!」って感じでやっぱりネットで炎上するんだけど、白鳥神威とその仲間たちは炎上上等でプロジェクトを展開。テレビに出たりして話題に。
クラウドファンディングの通貨「WEI」とか笑っちゃいます。ウェーイ。
後半からは6歳のKJ(神威の息子(Jr)、捨てられてた赤ちゃんのこと)が彼を取材する小学四年生の男の子と一緒に行動。KJのリセットプランについて取材していく話。6歳ながらKJ、人生を達観してます。
なんか軽い感じの話に見えますし、テンポもすごくいい小説なんですが、結構心に刺さります。馬鹿に見えてホストたちも彼らなりに未来を見ていたり、KJも赤ちゃんの頃から出資者に動画などで見守られてきたプライヴェートのない人生(まさかのむきむき体操を動画で配信されていた!)について彼なりに考えている。「自分自身の死だけは売られなかった。」という言葉も心にグッときました。
どこかおかしさがあるものの、意外と真面目に日本の育児を考える話でした。