【朝井リョウJK疑惑】少女は卒業しない
著者 朝井リョウ
【内容】
今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと―。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。 (解説/ロバート・キャンベル)
【感想】
★★★★★
とてもよかった。取り壊しが決まっている高校の、卒業する学生や、在校生、いろいろな登場人物が出てくる連作短編。それぞれが少しずつ繋がっていて、短編としても面白いのはもちろん、どんどん背景が合わさっていく様もいい。
主人公は7人の女子高生。
朝井リョウ、本当はJKなんじゃないの?って思ってしまうくらい心理描写が素晴らしい。コテの巻き方とか、コテで思ったように巻けないとか、なんでわかるん?巻いてるん?
【エンドロールが始まる】
最初は図書室の先生に恋する女子高生の話。なんかすごくきゅんとしたし、どきどきした。先生の手帳から落ちてしまった写真を見たときの切なさ、そして最後告白するときのこっちまで緊張してしまう感じ。この話はすごく好きだった。
【屋上は青】
芸能界に入り、高校を中退してしまった男の子。その幼馴染の女の子。
最後泣きながらダンスを見せる男の子にこっちもグッと来た。
【在校生代表】
湊かなえの「告白」を思い起こさせる、全部一人の女子生徒のセリフで書かれた話。
ユーモアもあり、先輩への気持ちを伝える告白でもある送辞。すごくすごく心に残った。この話が一番好きだったかも。
【寺田の足の甲はキャベツ】
「何このタイトル」って思ったけど、とても切なかった。まさに「青春!」を思わせる短編。この二人きっと別れ話をするんだろうなという思いがだんだん伝わってきて、青春の切なさを感じた。
【四拍子をもう一度】
ビジュアル系バンドの化粧道具や衣装が消えてしまうところから始まる短編。なんだなんだと思ううちに主人公の思いを知り、「みんなにばれてしまう」の意味をなんとなく感じてきてしまう。そして最後、隠した犯人である子とのやりとりでなんだか爽やかさも感じ、痛みも感じ、英語はへたくそだけどきれいな声を想像しながら読んだ。
「高校の校舎に似合うものは、いつだってとってもかっこわるいものなのだ。」
この言葉。本当にそう思う。
【ふたりの背景】
帰国子女の主人公と、その友達と、ある障がい者クラスの絵の上手な男の子の話。男の子の「ずっと、ふしぎなんだ」がとても印象に残る。
【夜明けの中心】
剣道部の男の子と、料理部の女の子と、南棟の幽霊。
後半に「え!」という事実が判明し、その男の子と女の子がなぜしばらく気まずい関係だったかがわかる。そして二人で話していき最終的にその気持ちが昇華されていく。もう帰ってこない人に想いを馳せながら、二人の気持ちが伝わってきて、とても切ない作品だった。
最後のロバート キャンベルさんの解説もとても素晴らしいものでした。この本を読む人は是非解説まで目を通してほしいです。
朝井リョウの小説はほかに「何者」「星やどりの声」エッセイ二冊を読んだんだけど、だんだん癖になっていくというか、もう私朝井リョウ大好きだわ。
ほかにも同時にいくつか朝井リョウの小説を買ったのでゆっくりと読んでいきたいと思う。
朝井リョウさん、ご結婚おめでとうございます。ますますのご活躍を祈っております。
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