【クレソンみたいな苦さがある】もういちど生まれる
著者 朝井リョウ
【内容】
彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。
【感想】
★★★★★
直木賞候補作にもなったこの小説。連作短編となっていて、つながりがある。
19歳から20歳になる男女の、哀しさ、苦さが描かれている。
「クレソンみたいだな」と思った。瑞々しくて、ちょっと苦い。
とにかく表現が素晴らしい。こんな表現、どんなふうに思いつくんだろう。
たとえば、
そう褒めてくれた桜の声だけが、ミルクティーの中に落とした角砂糖のように溶けて耳の中に沈殿している。
とか
この世界の本当の美しさや汚さは、どんなに上手に絵の具を混ぜ合わせたって表現できないと思う。
とか。
特に私は「僕は魔法が使えない」という話が好きだったんですが、こういったいろんな表現が出ていて、とても読んでいて面白かったし、印象に残った。
表現方法だけでなく、登場人物の心情もすごく上手に表現されていて、そしてたまに出てくる「ぷっちょ」や「iPod」とか「ガリガリ君」などの固有名詞もすごく効いていた。