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【胸のすかない話】死にぞこないの青

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著者 乙一

【内容】

 飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。書き下ろし長編小説。著者は、78年福岡生まれ。今後の日本ホラー小説界の将来を担う書き手として注目を集めている。 

 

【感想】

★★★☆☆

きっかけは、ほんのささいなこと。

 

生き物係を希望していたマサオ。希望者は6人いて、生き物係になれるのは3人+補欠一名。担任の羽田先生から「じゃんけんとかじゃなくて、話し合いで決めなさい」と言われたものの、特に誰からも話しかけられずに一日が終わる。

次の日羽田先生から男の子2人が生き物係を辞退したと聞かされる。「君は生き物係なの?」と聞かれ、その男の子たちが辞退したのならと確かめもせずに「はい、生き物係です」と返事をする。嘘をついたわけでもない。ただ確かめなかっただけだし、先生が「男の子二人から辞退を告げられた」といったのだ。

 

そしてここから羽田先生に目を付けられることになる。

なにかにつけ注意を受けるマサオ。マサオのあくびのせいで授業延長、など。そんなことが続き、クラスメイトからもいじめられるようになる。

 

極めつけには「僕は悪い子です」と復唱させられ、だんだんと自分が悪いのではと思うようになる。本当にクズのような先生。

 

いじめを受けるようになってから、マサオには青い少年が見えるようになる。顔の真っ青な少年。マサオはそれをアオと読んだ。

 

アオの助言により先生と対決。

胸のすかないラストではあったけれど、ある意味リアルさがあった。

 

最後、マサオのクラスに新しい先生が来る。

がんばってもちょっと抜けたところのある先生で、マサオが「周りの人の評価を気にしないのか」と聞いたところ、彼女はこう答えた。

 

「がんばってる結果がこれなんだから、しょうがないでしょ。」

 

この一言で救われた気持ちになった。

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)