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ぶくぶくブックレビュー

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【闇が深すぎる】トマト缶の黒い真実

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著者 ジャン=バティスト・マレ

訳 田中裕子

 

【内容】

・「中国産」が「イタリア産」になる流通の謎
・「添加物69%」の現場
・腐ったトマトの再商品化「ブラック・インク」とは
すべてはトマト缶をめぐる真実だ。
…それでもトマト缶を買いますか?

トマトは170カ国で生産され、トマト加工業界の年間売上高は100億ドルにのぼる。だがトマト缶がどのように生産・加工されているかはほとんど知られていない。
中国、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカを舞台に、業界のトップ経営者から生産者、労働者までトマト加工産業に関わる人々に徹底取材。世界中で行われている産地偽装、大量の添加物や劣化した原料による健康被害、奴隷的に働かされる労働者などさまざまな問題を暴く。
世界中で身近な食品であるトマト缶の生産と流通の裏側を初めて明らかにし、フランスでも話題沸騰の、衝撃的ノンフィクション。

 

【感想】

★★★★★

 普段スーパーで手に取ることも多いトマト缶やケチャップなどのトマト製品。その中にこんなにも深い闇があったとは思いませんでした。

 

読んですぐ、うちにあったトマト缶をチェック。

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右下にイタリア産と書かれています。

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100%イタリア産と書かれていて、「そっか、これはイタリア産なんだ。」とほっとしたのもつかの間、イタリア産の中にも中国のものをイタリアでちょっと加工しただけで「イタリア産」になるということ、そして本当にイタリア産の中でもアフリカ系移民の搾取によってつくられているものがスーパーに並んでいるという事実に驚愕。

果たしてこのトマト缶はどうなんでしょう。よく買うブランドの物ですが。

 

すべてのことがつながっていて、パズルのピースがハマっていくかのような感覚。まるでミステリー小説を読んでいるかのようです。

  • 中国産の濃縮トマト(3倍)をイタリアで水を入れて濃縮2倍にして「イタリア産」と表記。
  • その後、中国が「イタリア通さなくてもアフリカに直接売ったらもっと儲かるじゃん」と、添加物たっぷり(トマト31パーセントに添加物69パーセント。着色料もIN)の低品質のトマト缶を輸出。
  • アフリカ人、「うちで頑張ってトマト育てても中国からこんな安くトマト缶が手に入るんじゃどうやったって勝ち目ないじゃん」とヨーロッパへ。
  • ヨーロッパへ行くもビザが出ず不法滞在。
  • イタリアのゲットーに住み、マフィア所属の不法就労者としてイタリアでトマト栽培(激安)。
  • 就職困難のイタリア人、マフィアから不法就労者の労働時間を買い、年金などを受け取る。
  • マフィア、安価な労働力でつくったトマト缶をヨーロッパのスーパーへ卸す。

もうなんか闇が本当に深すぎる。労働時間の売買ってなに!

 

そして「ブラックインク」と呼ばれる酸化したトマトペースト。

ヨーロッパでの基準を満たされなかったものや、こういった腐ったものは「ゴミ箱」と呼ばれる基準の緩いアフリカの市場へ行くらしい。もともと中国の工場で腐ったトマトペーストや混ぜ物だらけのトマトペーストを缶詰にしてアフリカで卸していたが、それでは儲からなくなってきたのでさらに儲けを出すためにアフリカにて缶詰工場を新設。

安い関税でアメリカ市場に卸すことができる。ちなみに腐ったトマトペーストの処理は中国人が極秘に施す。

ていうかアフリカ「ゴミ箱」ってひどすぎる。

こういうのも人種差別だし、アフリカを馬鹿にしすぎている。

 

それにしても著者は本当によく取材したなあと感服。

これはルポルタージュでもあるけれど、読んでるうちに、あれ、これ恐怖小説だっけ?なんて思ってしまう。とにかく読み応えたっぷり。

 

そして普段の食生活がとても気になってきます。トマト缶、便利だけどもうあまり使いたくない・・・・。でもケチャップは自分じゃ作れない・・・。ものすごくジレンマを感じます。

 

さきほど写真を貼ったうちのトマト缶、搾取のものでした。つまり私はマフィアから買ってたんだな・・・・。

www.theguardian.com

 

トマト缶の黒い真実 (ヒストリカル・スタディーズ)

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