【きっとどこかで今も苦しんでいる】ぼくがきみを殺すまで
著者 あさのあつこ
【内容】
朝日新聞連載時に反響を呼んだ表題作に、対となる中編を加えた鮮烈な小説集。
囚われの身であるベル・エイドの青年Lは、敵国ハラの兵士に語り聞かせる、かつてハラの友人ファルドと過ごした日々のことをーー。
子どもが戦争に巻き込まれることを真正面から描き、物議を醸した衝撃の話題作!
【感想】
★★★★☆
結論から言うと、結末は読者に委ねられています。
舞台は紛争のさなか。少年兵Lは敵国の兵にとらえられて、明日の朝処刑が決まっています。そんな中、エルは見張りの少年兵、ソームにかつての友人ファルドについて語る。
最初は処刑が決まっている少年兵のシチュエーションに「辛い」と思ったが、ぐいぐいと引き込まれて、あっという間に読了。
最近こういった紛争などの本を読むことが多いのだが、この本は兵として働く少年たちの、心の内がよく描かれていたと思う。
どういった心境で敵兵を殺さなければならないのか、どうして兵にならざるを得なかったのか。そんな葛藤と戦いながらも任務を遂行しなくてはわが身が危うい少年たち。
これはきっとフィクションではない。
世界のどこかでこんな思いをしている人が存在するのだと思った。ラストは、戦争が終結して子供たちが自由に勉強できる世界になるようなものを期待した。