【夢と、友情と、テンプテーション】ショコラティエ
著者 藤野恵美
【内容】
母子家庭で育った聖太郎と、大宮製菓の御曹司・光博は、共通の趣味であるお菓子作りを通して親友となる。ある日、聖太郎は光博から、幼なじみが出場するというピアノコンクールに誘われ、凛々花を紹介される。凛々花のピアニストとしての才能と、奔放な性格に惹かれてゆく聖太郎。光博や凛々花との貧富の差も、なぜだか気になり始める。そんな中、ふたりは「中学生お菓子名人コンクール」に応募するが、聖太郎は書類審査落ち、光博は一回戦敗退となる。お菓子作りには誰よりも自信があった聖太郎は、光博への複雑な思いを抱きはじめ、いつしかふたりは疎遠となってゆく……。
【感想】
★★★★★
母親がクリスチャンで、その信仰に完全には傾倒できない母子家庭の聖太郎。
そして小さいころから我慢をすることなく育てられ、親からの期待が少々重荷に感じる大宮製菓の御曹司・光博。
ある日聖太郎が光博の誕生日会に招かれ、そこでチョコファウンテンに出会ったことから二人の仲は親密になり、一緒にお菓子を作ったりして過ごす。
しかし、初恋に目覚めたあたりから聖太郎は嫉妬を感じるようになり、光博との差に劣等感を感じる。光博は光博で大好きな祖父が聖太郎ばかりを褒めることから嫉妬を感じる。
そこから二人のレールは離れ、別れていく。順番に聖太郎についてと光博について描かれていて、その後の二人の意外な人生、生き様に引き込まれていく。そして「光博と聖太郎がまた再び仲良くなれますように」と願わずにはいられなくなる。
舞台も「ノストラダムスの予言に想いを馳せていた子供時代」「ポケベルを持つ高校生」「阪神大震災」など、私も通ってきた道だったのでとても入り込みやすかった。
母親がキリスト教徒という設定もうまく絡んでいて物語に深みを持たせ、聖太郎の生き様や性格に説得力があった。
最後は希望溢れる展開になっていて、とてもよかった。二人の輝かしい未来を想像せずにいられない。
そして読んでる最中ずっとケーキが食べたくなったり、ボンボンショコラが食べたくなった。まさしく誘惑の小説だった。この本ボンボンショコラ(そこは是非4種のボンボンショコラで)と一緒にセット売りしてほしいと思った。