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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【愛に溢れた親子の物語】トレバー・ノア 生まれたことが犯罪!?

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【著者】トレバー・ノア

【内容】

犯罪として生まれた僕に、かあさんは「笑い」という自由をくれた

ビル・ゲイツ絶賛、2017年「夏のおすすめ5冊」に選出
NEW YORK TIMES 2017ベストブック
Amazon.comで50週連続トップ10入り、4776レビュー平均☆4.8の圧倒的高評価! (2018/5/1時点、今も更新中)
★『ブラックパンサー』で注目のルピタ・ニョンゴ主演(母親役)で映画化決定

 

アメリカで人気風刺ニュース番組「ザ・デイリー・ショー」の司会をつとめる、注目のコメディアン、トレバー・ノア。
特にトランプ大統領就任以降、「分断」の騒がれるアメリカでユーモアによって新しい風を吹き込む存在として、注目を集めている。
アパルトヘイト下の南アフリカで、彼の人生は「黒人の母と白人の父から生まれた」という犯罪行為からはじまった。

 

政府の目をかいくぐって暮らした幼少期、生き抜くために上達したモノマネ、悪友たちとの闇商売、モテなかった学生時代の淡い恋……
不条理な状況をユーモアで乗り超えていく母と子の生き様を描いた物語。

 

【感想】

★★★★★

この本を読んだ後、トレバー・ノアさんの生年月日を見て驚きました。私と同年代。っていうかちょっと年下!
それなのに人生でこんな修羅場をかいくぐって生きてきた彼。


アパルトヘイトについては学校でもさらっとしか習っていないと思います。ニュースでも大きく取り扱われていたとは思いますが、正直そんなに覚えてはいません。事実としては知っていましたが、遠い世界の話でした。

トレバー・ノアさんは、そんな時代に生まれた、よりにもよって白人との混血児でした。タブーの子なので、自分が「黒人」「カラード」「白人」のどれに入るのかの位置も微妙で、葛藤がありました。

 

そのお母さんは「自立した、自由で強い女性」のアイコンとでもいうような黒人女性で、子供が欲しいからとオランダ人の男性と子供を作ったり、その後エイブルと結婚し、二児を設けました。毎週教会に行き、「イエスのトップファン100人に入るほど信心深い」女性でした。トレバーが留置場に行ったときに「わたしが叩くのは、あんたのためを思ってのことだけど、世間が叩くのは、あんたをつぶそうと思ってのこと」と母さんが言うんですが、心にぐっと来ました。

 

アパルトヘイト」というのは白人が黒人を差別しているだけだと思っていましたが、それだけではないことがよくわかりました。先に言ったように肌の色も「黒人」「カラード」というものがあるし、アフリカ内でもいろいろな部族があり、言葉も違います。すでに国内でも複雑な関係である上に、そのピラミッドの頂上には白人たち。色のついてるものは不毛な地へ追いやられ、差別を受けます。
1994年、アパルトヘイトが廃止された後も、やはり急にそういった差別意識が変わるわけもなく。

 


「アフリカ人がつける欧米風の名前」エピソードの「ダンスがうまいヒトラー君」の話は面白かったです。ユダヤ人の多い学校にDJとダンサーとして呼ばれたトレバーとヒトラーくん、そりゃ、途中で止められるよね。「いいぞーヒトラー!」なんて掛け声されてたら。

 

たくさんの犯罪も出てきますが、こういう境遇だったらそういう商売をしてお金を稼ぐことも、しょうがないのだろうなと思った。

 


最後、衝撃的な展開を迎えますが、そこでも肝っ玉母さんの「イエスという保険に入っている」オチで笑いのエピソードに帰られて、さすがコメディアンだなと思いました。この母親がいるからこそ、トレバー・ノアさんが生き生きと輝いているのだろうなと思いました。

 

 

トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ?

トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ?