【猫弁著者が描く、愛と復讐の物語】赤い靴
著者 大山淳子
※ゲラ読了 2018/8/2刊行予定
【内容】
この復讐を終えるまでは、死ねない――。
悲劇に取り憑かれた魂の救済を描ききった、まごうことなき著者最高傑作。
母を惨殺された絶望と憎悪を背負い、山犬のように育った少女が、復讐の二文字を魂に刻みつけ、その後の過酷な時間を生き抜き、ついに復讐相手へとたどりつくが、そこで予想もしない出来事に翻弄されることになる---。
【感想】
★★★★★
読み終えたときに思わず感嘆のため息が出た。
研修医椎名が語る「葵」が欲しいものとして漏らした「赤い靴」という言葉から、母親とお手伝いの惨殺事件、山中での謎の男との過酷な生活、そして山を下りてからの「鬼退治」という復讐劇。一体この物語の終着点はどこなんだろうと考えながら読み進めた。惨殺事件や、犯人の正体、そして「鬼退治」の思わぬ展開に息をのみました。
「猫弁シリーズ」が大好きでうちにもありますが、そのほんわかとしていたミステリーと同じ方が書いたとは思えないような重く、深い作品でした。
最終的にこの作品は「愛」を問う作品なのかな、と私は考えました。
母親からのちょっと歪な「愛」、お手伝いさんからの包まれるような愛、櫂からの自立を促す実験のような「愛」、そして笹山からの「愛」など、たくさんの種類の「愛情」が描かれていた作品だったと思います。
葵は最終的に「愛」を見つけられたのでしょうか。特殊な人間に育ったので、なかなかそこが難しいところだなと思います。
とても心に残る作品でした。