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【母親の死を看取る】有村家のその日まで

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著者 尾崎英子

2018/11/19発売予定

【内容】

有村文子はイラストレーターの仕事をしながら、マンションの隣の部屋に住む中野晴也の娘、あおいの面倒をみている。あおいの母・雪乃とは親友のように話せる仲だったが、ある日突然の心筋梗塞で亡くなってしまったのだ。まだ5歳のあおいは、しっかりしてみえるが心の傷は大きい。年が明けて1月3日、姉で医者の美香子から母の仁子ががんであることを知らされた。美香子も兄の優からさきほど知らされたばかりだそうだ。久しぶりに家族がそろって仁子のもとへ集まると、仁子はいつもと変わらぬ調子。標準治療を「つまらないから」という理由でやめ、すごい乳酸菌がきくとか、友人にお金を貸しているとか、拝み屋にみてもらっているとかの話題ばかり。金銭問題で一度は距離を置いた父の照夫は妻の大病に戸惑っている様子だ。近い将来訪れる仁子の最期の日を、有村家の子供たちとそのまわりの人々は、仁子らしく迎えられるよう奮闘するが――誰しもが迎える”家族の死”と、在宅医療の現実をリアルに描いた感動作。

 

【感想】

★★★★☆

主な登場人物は以下の通り

・有村文子・・・有村家の末っ子。イラストレーターで在宅で仕事をしている。隣に住む雪乃とは仲の良い友人だったが、ある日その死に立ち会ってしまう。その後雪乃の娘あおいのシッターもするようになる。

・美香子・・・文子の姉。医者。しっかりしているが自身が医者ということもあり、人の死に対してある意味冷静でもある。

・優・・・文子、美香子の兄。寝具を売っていて人当たりがよく優しい。

・真弓・・・優の妻。気が強い。

・仁子・・・文子、美香子、優の母。癌に冒されるもののきっと治ると信じて怪しげなサプリメントや拝み屋などに頼る。湯水のようにお金を使うエキセントリック。

・照夫・・・仁子の夫。仁子とは別居をしたこともあるが、それでも彼女のエキセントリックさは「面白い」と思え、「困ったな」と思いつつも仁子のいいなりになる。

 

家族(仁子)の死を迎えるまでの物語。 なかなかエキセントリックなお母さん、仁子が癌に冒され、治療もそこそこ、怪しげなサプリや拝み屋さんなどに頼ったり、家族としてはお金はかかるし怪しいし・・・。美香子は医者の視点から「きちんと治療を受けたほうがいいと思うものの、そんなに寿命を延ばすわけでもないのでお母さんの好きなように生きてもいい」と考える。長男・優の妻真弓はできるだけ多くのお金も残してもらいたいし、そういった怪しげなものはすぐにでもやめさせたいと拝み屋にキックをお見舞いする。

 

何よりも仁子の夫、照夫の愛にはとてもいいなと思った。

「結婚するとお金もかかるし大変なのはわかってるから次は友達として会いたい」というのもいいなあ。仁子のエキセントリックさには少し疲れるも、それを楽しめる夫。素敵です。仁子への最後の言葉には泣けました。

 

いろんな愛が詰まった、静かで温かい気持ちになれるお話でした。

 

有村家のその日まで

有村家のその日まで