【サスペンス×SF】帰去来
著者 大沢在昌
【内容】
大沢在昌、作家生活40周年記念の第1弾は、パラレルワールド警察小説
警視庁捜査一課の女刑事が、 「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」にタイムトリップした――。
警視庁捜査一課の“お荷物”志麻由子(しま・ゆうこ)は、連続殺人犯の捜査中に、何者かに首を絞められ気を失う。「殺されたのか・・・・・・」。目を開けると、そこは異次元の「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」、戦後の荒廃した世界だった。 由子は自分が、東京市警の<エリート警視>として存在していること、部下だと名乗る男性は、かつて付き合っていたボーイフレンド・里貴(さとき)にそっくりだった。 由子は犯罪組織から憎まれているだけでなく、警察内部でも強引な捜査方法が非難を浴び、孤立無援の状態だった。そして里貴からは、もし警察官を辞めて一般人に戻ったりすれば、命を狙われる可能性があることを知らされ打ちのめされる。 混乱した状況のなかで、「エリート警視」になり代わらざるを得なくなった由子は、捜査を開始する。そして新宿の闇市に君臨する「羽黒組」と「ツルギ会」を壊滅させようとするのだが・・・・・・。 やがて明かされるタイムトリップが起きた、胸つぶれる理由。 志麻由子は、「元の世界」へ戻ることができるのか?
【感想】
★★★★★
500ページ強もある作品でしたが、長さを感じさせませんでした。
私もページをめくる手が止まらず一気読み。
首を絞められて殺害されそうになった由子が飛んだ先は現在の日本とは似つかないパラレルワールド。
最初は読者である私もその世界観を知るためにゆっくりとページをめくっていく。
光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市で由子はエリート警視として活躍。なんだか戦後の日本みたいで闇市があり、そこを仕切っている2つのグループがある。その組織を壊滅させようと奮闘していくうちに、由子は自分を殺そうとした犯人の正体につながっていく。
その世界での由子の父親に会ったぐらいから物語は加速。ページをめくるのも加速。
父親の顔は由子の知っている父親の顔とは少し違っていた。別人だったのだ。しかもその父親は「パラレルワールドの存在を知っていて、そこへ行き来している人物を知っている」もう気になって仕方がない!!!
由子を殺害しようとした犯人の正体とは。パラレルワールドならではの展開に息をのむしかない。複雑に見えた現代日本と日本共和国の人間関係も、案外わかりやすくのめりこみやすかった。
文句なしに傑作!