【あの子供たちの、その後】心音
著者 乾ルカ
【内容】
私は、一億五千万円さんと呼ばれていました。
城石明音は先天性の心疾患を患っていた。両親は渡米しての心臓移植手術を決断する。そのためには1億5千万円という莫大な費用が必要だった。募金活動の末、明音はチャーター機でアメリカに渡った。ドナーも見つかり、手術も無事に成功し、明音は一命を取り留めた。誰もが明音の生を祝福しているかのようだった。このときまでは――。
白村佳恵は夫の康太とともに、8歳のひとり娘・若葉の渡米と心臓移植手術のため、募金活動に奔走していた。目標額は一億五千万円。しかし、目標の半分も集まらないうちに、若葉は帰らぬ身となった--。若葉が海外での移植手術を目指し始めた頃、佳恵は「明音ちゃんを救う会」のサイトを見つけていた。年齢こそ若葉の2歳上だが、もとの住まいが北海道であること、病名、診断された時期、転院先が東京であることなど、何か何まで似通っていた。明音には募金が集まり、手術に成功し、一命を取り留めた。娘を亡くして3年、佳恵は更新が続く「明音ちゃんを救う会」のサイトを見続けていた。明音の中学校入学にあわせて制服を買い、バイオリンを始めたと見ればバイオリンを買った。「明音ちゃんを救う会」がなければ若葉は助かったのではないか--。歪んだ思いを胸に、佳恵は明音の元に向かう--。
【感想】
★★★★★
多額の寄付を募ってアメリカで心臓移植をした明里のその後の人生の話。
よくある、子供の心臓移植のために募金を募る人。NYに旅行に行ったときに、一緒に飛行機に乗っていたこともある。
その結果命が助かり、心臓が丈夫ではないものの普通に生きることのできた「幸運な」子供のその後の物語。
なかなか心が締め付けられる展開でした。
「一億五千万円さん」などと呼ばれイジメられ、でも「死は絶対に選べない」ということがまたとても苦しく、辛くて辛くてどうにかこれから幸せになってほしいと思いつつもなかなか思い通りにいかず、幸運なことであったのにそれが呪いのようになってしまい、読んでいてとても辛かったです。
他人事だと思うと、「せっかくみんなから生かされたんだから、人生を謳歌してほしい」と思いますが、当事者だとすると、こういったプレッシャーを背負うことになるんだなと思いました。確かに自分が当事者だったら明音のように抱えながら生きるかもしれない。
考えさせられました。