【神は何もせず、ただ沈黙するのみ】沈黙
著者 遠藤周作
【内容】
「転びキリシタン」もまた、「神の子」なのか?
カトリック作家が描く、キリスト教文学の最高峰。
島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。
神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。
【感想】
★★★★★
映画「Silence」を観てとても感銘を受けた作品。
今まで歴史系の小説は苦手としていたが、この作品を観てから本を読むまでに自分なりに色々「隠れキリシタン」や「フランシスコザビエルが日本にやってきてからルターの宗教改革が起こるあたり」そして「日本でキリスト教が禁止される」ことについて勉強した。
歴史の時間、隠れキリシタン、日本でキリスト教が禁止になったところについては中学の時にさらっとやったりルターの宗教改革については高校の時に世界史で習ったりしたけれど、今またこのあたりに絞って勉強をするとすべての知識がつながり大変わかりやすくなった。ということで教えている高校生クラスでこのあたりについて授業をしたりもした。彼らもカトリックの知識などはあってもなかなか日本の宗教観やどのような変遷をたどっていって今のような宗教観になっているのかはわからないと思うけれど、また大人になってふと学びなおした時に私のように「目からウロコ」状態になるような経験になったらいいなと思う。
さて、「沈黙」だが、思ったよりだいぶ読みやすかった。映画を観ていたからかもしれないが、文章も思ったほど堅苦しくはなく、すらすら読めた。
そして隠れキリシタンが拷問をうける場面などは読んでいて辛かった。
でも、イノウエの言っていることも、フェレイラが言った日本の宗教観についても、私は納得してしまった。それだけ日本という国は宗教が独特で、よく聞かれたりするけれど実際に一言で説明なんて絶対に不可能だ。
神は何もせず、ただ沈黙するのみ。とても残酷で美しい表現だと思った。
キチジローの弱さも理解できた。実際に私だったらキチジローのように裏切ったりするし絵も踏むしそれでも救いを求めてしまうだろう。
映画の方もとてもよかった。読書が苦手な人は映画をおすすめします。