【何も考えていないようで実はすべてが見えているかのような王】東の海神 西の滄海
著者 小野不由美
【内容】
国が欲しいか。ならば一国をやる。延王(えんおう)尚隆(しょうりゅう)と延麒(えんき)六太(ろくた)が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くのか。そして、血の穢(けが)れを忌み嫌う麒麟を巻き込んだ争乱の行方は。
【感想】
★★★★★
十二国記、500年以上前のエピソード。
十二国記の世界観ならではです。王やその下で働く仙は年を取らない。何百年でも。
雁(えん)の国の延王尚隆と、延麒六太の物語。
尚隆はやることなすこと結構ハチャメチャな王ですが、それでも500年も続く雁国。
その延王尚隆と、延麒六太の信頼関係が生まれるストーリーでした。
ここで延麒六太の言葉が気になります「尚隆は雁国を滅ぼす王だ」
これはずっと十二国記を読んでいくと短編に出会い、そこで奏の太子と会話をしているときに「なるほど、そういう意味なのか。ある意味めっちゃ怖いな」なんて思いましたがここでは割愛。是非読んでみてください。
尚隆もなかなか、市井に紛れ込んで内側からいろいろと活躍していきます。何も考えていないようで実はすべてが見えているかのようなそんなかっこよさがあります。六太が救出されたときに「あまり心配をかけるな」と声をかけたのにはもううるっと来ました。かっこよすぎでしょ。
ここでとても怖いエピソードがありました。
幽閉されている人が出てきますが、仙は年を取らず、病気などで死ぬこともないので飲まず食わずでも生きながらえてしまう。誰にも会わずひたすら長い時を死ぬこともできずに生きるというのは何と辛いことなのだと思いました。
ここで出てくる六太の友人、更夜ですが、またまた後のエピソードで登場し、感動します。一気読みのいいところはたくさんいる登場人物を覚えているということですね(笑)その時々で読み直しするのもそれはそれで楽しいですが。