【悲喜こもごものお誕生日会】お誕生会クロニクル
著者 古内一絵
【内容】
3.11に双子を出産した遠野多香美。4歳になる双子を保育園に預け仕事に育児に奮闘する日々だが、3.11に生まれたということで仙台に住む実母との間にわだかまりがずっと残っている。多くの命が犠牲になった日だが、多香美にとっては大切な双子の生まれた祝いの日。しかし東北に住む母は素直に祝う気持ちになれないようで――「あの日から、この日から」
娘の小学校ではお誕生日会を開くことが禁止されている。しかし、中国籍のクラスメイトがそのことを知らず、クラス全員を誘ってお誕生日会を開くといい――「ドールハウス」
実は戦後の文化であるお誕生日会。その有様をみることで、家族が、人間が見えてくる。
全7篇の短編集。
【感想】
★★★★★
大好きなマカン・マランシリーズの古内一絵先生の新作。
「お誕生日会」をテーマに書かれた短編集ですが、お誕生日会でここまで幅広く書けるのはすごいなあと思いました。
ちょっと苦い感じのお話もあればほっとするお話もある。
プランナーのお兄さんが姪っ子のためにお誕生日会企画をする話などは苦くてたまりませんでした。
でも苦いだけで終わらないのが古内先生の作品なのかなあと思いました。
お誕生日会、私も小さいときにやったことあるけれど、私もそんないい思い出がないなあと想いを馳せながら読みました。お母さんとかはやっぱり料理を張り切ってくれたり、手作りケーキも今ビデオで見たらプロ級ですごいなとは思うけれどいかんせんそんなに活発な子ではなかったので、お誕生日会でたくさん友達を呼んでもそんなに楽しく遊べないというか。少人数のが楽しい・・・みたいな。お母さん、頑張ってくれたのにごめんなさい。
欧州では子供の誕生日会すごいですね。プールやらレストランやらアスレチックやら貸し切りでお菓子もついてのお誕生日会プランもある。共働きが基本で忙しいご両親にとってはそういったプランも悪くない。お金はかかるけれど。
自宅でやる場合はピニャータを準備したりゲームを準備したり、まさにこの本に出てくる雑誌「メイリー」の特集のような世界。
作品中にたびたび出てきた「昔の人は年明けに一斉に年を取る。」という文が、なんか心に残りました。昔の人はお誕生日とかそんなに気にしてなかったのかな。
コロナウイルスでの影響についても書いてあり、今の時代をぐっと反映している本でした。