【ある男の悲しい人生】わたしが消える
著者 佐野広実
【内容】
第66回江戸川乱歩賞受賞作!
綾辻行人氏(選考委員)、推薦。
「序盤の地味な謎が、物語の進行とともに厚み・深みを増しながら読み手を引き込んでいく」
元刑事の藤巻は、交通事故に遭い、自分に軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。
途方に暮れていると、当の娘が藤巻を訪ね、相談を持ちかけてくる。介護実習で通っている施設に、身元不明の老人がいる、というのだ。その老人は、施設の門の前で放置されていたことから、「門前さん」と呼ばれており、認知症の疑いがあり意思の疎通ができなくなっていた。
これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。そう考えた藤巻は娘の依頼を引き受け、老人の正体を突き止めるためにたった一人で調査に乗り出す。
刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は、「門前さん」の過去に隠された恐るべき真実に近づいていくーー。
残された時間で、自分に何ができるのか。
「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!
【感想】
★★★★☆
この中に一回出てきた町に、私は住んでいた。
一回出てきたというか、駅の名前が出てきただけなんだけど、そこに住んでいたし今も相続は放棄して従兄弟に譲った祖母の家があるので、想いを馳せた。
さて、軽度認知障碍と診断されたマンション管理人のおじさん。元刑事。
離婚してからずっと会ってなかった娘が上京してきて、介護の勉強をしているのだが、介護施設で出会った門前さんという人が身元不明である日施設のまえに放置されていたのだけれど、元刑事のお父さんなら身元探れるんじゃない?ということで刑事なんて何年も前にやめたおじさんが頑張る。門前さんが自分の何年後かの姿に見えて放っておけなくなったという気持ちもある。
さて、探っていけば探っていくほど闇。
ちょうど同時進行で伊岡瞬さんの『いつか、虹の向こうへ』を少し読んでいて、設定が少し被る。元刑事のおじさんってとことだんだんなんかおっさんが命狙われている感じ。これ、同時に読まない方がよかった。こんがらがってくる。
最後はその門前さんの一生が判明するのですが、「哀しい」という言葉がぴったりの人生で、本当に正義って何だろう、警察って何なんだろうと思いました。