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【食の好みでの夫婦のすれ違い】二人がいた食卓

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著者 遠藤彩見 

【内容】

良かれと思ったことが、押しつけがましさに。理想を追い求めるあまり、頑なになる。相手への気遣いが、裏目に出る。一番わかってほしい相手に限って自分の努力が伝わらない……。
そんな夫婦関係の迷宮に迷いこんだ泉と旺介、きっかけはまさか、食の好みの違い――!

ドリア、生姜焼き、ハンバーグ、キッシュ……出てくる料理は、「食の検定」1級を持つ著者だからこそ表現できる、読むだけで美味しそうなものばかり――だからこそ、夫婦のすれ違いのきっかけとして、鋭く鮮やかな物悲しさを湛えています。

おいしさは恋で栄養は愛? 家族として、好きを越えた関係を築いていく覚悟を持てるのか――。
泉と旺介、二人の選択とは。

 

【感想】

★★★★★

 

新婚の奥さんなら夫に長生きしてもらいたいが故に、ヘルシーな食生活を心がけたいもの。私も今はあまり言わないけれど「これは〇〇にいい食材なんだって!」と夫に言いながらご飯を作ったりしてウザがられた覚えがあります。

 

この作品はそんな奥さんの思いが伝わらず、だんだんとすれ違っていく夫婦の物語でした。


ヘルシーな食事なのに、夫にとっては「重い食事」だった。

 

私は泉の気持ちがめちゃめちゃわかるので、読み進めていくうちにどんどん辛くなりました。
美味しいご飯の描写が、味がしない、まずく苦々しく感じてきてしまう。


「思いやり」が「押し付け」に代わってしまうことにも気づかず、泉は「体にいいものは絶対にいい」という姿勢を崩さない。だんだん旺介の嫌になってくる気持ちもわかってきて、どうにかうまく話し合って解決できないのかなと思うもののどんどんすれ違っていく二人にとても心が痛くなりました。でもそこでほかの女に走るなよ!そこはほんとイラっと来ました。泉の気持ちのが理解できるので辛すぎる!

 

自分の家族に対する旺介の態度はこの人いい人だな!と思ったのに。

義母さんも、義父がたばこを吸うことを隠していてくれたというセリフに、ここもいい夫婦なんだなあと思いました。

 

泉と旺介、泉の両親、旺介の両親と三つの夫婦像が効果的に描かれていて、とても面白かったです。

 

階段に水をまいていた千代田さんに夫のことを相談すると、衝撃の一言が返ってきた。これはめちゃめちゃ私にもずしんと来ました。

辛い相談は幸せな人にはしたくない。ほんとよくわかる。

 

たまにはこういった苦い話も読んでみると面白いかもしれない。

 

二人がいた食卓

二人がいた食卓

  • 作者:遠藤 彩見
  • 発売日: 2020/12/09
  • メディア: 単行本