【最後にやられた】方舟
著者 夕木春央
【内容】
9人のうち、死んでもいいのは、――死ぬべきなのは誰か? メフィスト賞作家・新境地の一作!
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、
偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。
さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。
――犯人以外の全員が、そう思った。
【感想】
★★★★★
最初はよくある感じのミステリーだなって思ってたんですよね。
大学時代の仲間と怪しげな地下建築に入っていき、出られなくなってしまう中で殺人事件が起きる。よくありそうな感じじゃないですか。
しかも後から迷い込んできた家族とか出てきてなんかその人たちも訳ありっぽくて。
最後の最後で声を出さずにはいられない小説です。
ネタばれしたくないのであまり話せないんですが、ちょっと普通のミステリーには飽きたな、ちょっと変わったの読みたいなっていう人にお勧めです。
ネタバレせずに感想を言うのは非常に難しいので是非読んでください。
【地方病院がんばれ!】 奇跡を蒔くひと
著者 五十嵐貴久
【内容】
年間四億円の赤字を理由に、地方小都市の市民病院は消滅寸前。医師たちがこぞって辞めていく中、三十四歳の青年医師、速水隆太は院長に名乗り出た。課された使命は三年で赤字ゼロ――。無理難題を前に、「すべての患者を断らない」という方針の下、病院再建に奔走する隆太の行動力は、周囲の人びとをも巻き込んでいく。医師会、市議会、そして国。巨大な壁を相手に奇跡は起きるのか!? メディアで注目の病院の復活劇をモデルに、ベストセラー作家が描く勇気ある人びとの戦いの物語!
【感想】
★★★★☆
地方の市民病院の奮闘を描く物語。
市民病院経営というのはこんなにも大変なのかとびっくりした。自分も社会人の時に市民病院に救急で運ばれてそのまま入院したことがある。確かに私立の病院などと比べてトイレが和式だったり、施設が古かった覚えがある。
市民病院がある市によって補助金などの額や患者層もかなり変わってくるんだなあとこの本を読んで、その通りだと思った。普段別段考えたこともないけれど、入院したりその病院に通う患者になって初めて気づくことだろう。
病院や学校のない市には人は暮らしたいと思えない。なので病院をなんとか再建させたい!
お年寄りばかりの小さな市、詩波市の市立病院を救うために立ち上がったのは若き医師。というか上の人がみんなよそに移ってしまったりでいきなり院長に就任してしまった。
病院祭をやってみたり、病院内では就寝時以外服に着替えるなとの変わったアイディアを出し、着替えのお手伝いを大学生ボランティアに頼んだり、中学生に病院見学に来てもらい入院患者と会話をしてもらったり。
章に日付が書いてあるので、もうすぐ、もうすぐコロナが上陸してしまう!!!と思いながら読み進めていくのはなんかちょっと面白かったです。
五十嵐さんはホラーから恋愛小説からはたまたブロマンス小説(ちょっと読んでみたかったが発売に間に合わなかった)からこういったお仕事小説までいろんなジャンルのお話を書いてくれて、どの作品も面白い。これからもいろいろな作品を生み出してもらいたいです。
【お金について考えてみる】僕らの未来が変わるお金の授業
池上彰(監修),佳奈(漫画),モドロカ(絵)
【内容】
累計発行部数約50万部の『なぜ僕らは働くのか』スタッフが再集結!今度のテーマは”お金”】
物語の主人公は,高校2年生の中倉美帆。大学で開講されたお金にまつわる夏休み特別授業に参加した彼女は,生きていくために必要なお金の知識や,社会に出る前に知っておくべき世の中のしくみ,解消されない社会の不条理な問題を知り,少しずつ大人になっていきます。自分の目指したい生き方,あるべき未来について,考えを深められる一冊です。
お金の意味、貯蓄、投資、インフレ、円安、人生の三大資金、働き方と年金、老後2000万円問題、資本主義と格差、年収と幸福感など、多岐にわたるテーマをストーリーと図解でわかりやすく解説しています。
【感想】
★★★★★
久しぶりにこれはいいなという本を読んだので感想を書きたいと思います。
が、この本が出るのは2023年の2月。NetGalleyさんで読ませていただきました。
この本の対象年齢としては中学生から大人です。
絵や写真でとても分かりやすくなっています。
お金の役割、価値、使い方、働き方、世界とのかかわりや仮想通貨など、経済のいろいろなことが学べる本です。家に一冊あるとすごくいい本だと思いますので発売されたらぜひ購入したいなと思いました。テキストとしても使いやすそうです。
各章の導入にマンガがあるのですが、それもとてもいい。主人公の高校生の女の子が銀行で働く母親の勧めで高校生大学生向けの大学で行われる講義に参加するのですが、この女の子と一緒に私たちも学んでいき、これからの生き方や働き方、暮らし方を見つめなおせるお話になっています。主人公のお父さんの決断にも応援したくなります。
商品の価値について学んだあと、無料のコンテンツについてもなぜ無料なのかがわかりやすく学べて、Youtubeやspotifyや、ジャンプ+などの無料で見られるマンガサイト(私も大変お世話になっております!!)など、現在無料で楽しめるコンテンツがたくさんありますが、なぜこれらは無料なのかなどもすごくわかりやすいので中高生にお勧めです。
経済ってなんか難しそうと私も高校生の時に思っていましたが、すごく身近なことから学べるので後々すごく役に立つと思います。なので高校生に是非お勧めです。
基本的に日本の経済などについて書かれていますが、私は現在海外在住で、この本を読みながら、自分の住む国についてもいろいろと考えてみました。やはり国民性もあるので、お金の使い方はすごく違います。あと、年齢によってもやはりお金についての考え方って変わってくるので(若いときはあまり何も考えずに使っていた)、自分を見つめなおすのにいい機会でした。
大学生の時、サークルや部活には入らずに高校生まで学校で禁止されていたアルバイトというものがしてみたくて早朝は週4日近所のコンビニ、学校の後はカフェやレストラン+家庭教師や塾系を一日2つかけもちでほぼ毎日やったりしていて、そのおかげで留学費用はためられたんですが、もうちょっと学生生活を満喫しておけばよかったなとか今になって思うこともあります。
時間を取るか、お金を取るか。いろいろな考え方があると思います。
大人になった今、やはりいろいろなことを経験する「時間」は大切だったなあと思います。
とても素晴らしい本でした。
↓この本も読んでみたいなと思いました。
【性犯罪撲滅】いっそこの手で殺せたら
著者 小倉日向
【内容】
元教師のライター・筒見芳晃は十歳年下の可愛い妻・絵梨、年頃の愛娘・沙梨奈と何不自由のない暮らしを営んでいた。
だが、穏やかな日々は突如一変する。
勤め先から妻が帰ってこない。携帯電話も不通。不吉な予感に駆られて交番を訪ねた芳晃は、驚天動地の事実を告げられる。
しかしそれは、やがて始まる忌まわしい悪夢の幕開けに過ぎなかった!!
衝撃ミステリー『極刑』で鮮烈デビューを飾った小倉日向が放つ、業と毒の問題作。
【感想】
★★★★★
NetGalleyの本も、ずっと読みっぱなしでネットギャリーさんの方でしか投稿してませんでした。
この本は、性犯罪をテーマにしたものなので、読みたいと思う人が限られてくるかもしれません。Me, tooとかありましたよね。性犯罪にあってトラウマがあるという人は苦しいかもしれません。
まずプロローグからすごく苦しい展開。
そして主人公の元教師・筒見芳晃が出てくるんですが、最初、プロローグに出てきた先生かと邪推しました。奥さんが急に行方不明になり、仕事を依頼されるんですが、学校での性犯罪、セクハラについてを書かされる。そして元生徒が自殺を図ったことを知る。
性犯罪を行った教師の言葉の嫌悪感がすごいです。こんなこと考えながら罪を罪と思わず、むしろやってやった感、いいことをしてあげた感を持って犯罪を犯すのでしょうか。
私も痴漢程度の性犯罪は受けたことがあります。痴漢程度でも、知らない人が自分の体を触ってくるのって本当に怖いし、大したことではないのかもしれないけれど、ずっと心に残るのも確か。大したことはされていないからと声を上げていない人が、性犯罪を受けた人の中のほとんどだと思います。
人によると思いますが、このお話を読み、私はちょっとすっきりしました。
【ずっと待ってました】そして誰もゆとらなくなった
著者 朝井リョウ
【内容】
『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』に続く第三弾にして完結編。
怒涛の500枚書き下ろし!頭空っぽで楽しめる本の決定版!
修羅!腹痛との戦い
戦慄!催眠術体験
迷惑!十年ぶりのダンスレッスン
他力本願!引っ越しあれこれ
生活習慣病!スイーツ狂の日々
帰れ!北米&南米への旅etc……
一生懸命生きていたら生まれてしまったエピソード全20編を収録。
楽しいだけの読書をしたいあなたに贈る一冊です。
【感想】
★★★★★
相変わらず面白く読みながら声出して笑ったけど、マスクのおかげできっとあまり気が付かれてないと思う。
朝井リョウさんのエッセイ大好きで、夏に出るということですごくドキドキして待ってました。コロナでずっと帰国できずに数年ぶりの帰国!そして予約して買いました!
待ってた甲斐があった!どれもこれも面白い。
旅行記が特に面白かったです。やはり朝井リョウさんのお腹との戦いでは、海外旅行って難しいんだな。数年前かな、結婚されたとのことですが新婚旅行とかも難しかったんだろうか。朝井さん、実際大変なんだろうけど、文章にして客観的に読ませてもらうと笑いしか出ない・・・。
ゆとり三部作、現在第二作まで文庫でも出ております。
とにかく笑いたいときにお勧めです。
それにしても久しぶりのブログ。いろいろと忙しかったりしてできませんでしたが、ちょこちょこ再開したいなとは思っています。
【現代社会の縮図】誰かがこの町で
著者 佐野広実
【内容】
江戸川乱歩賞受賞第一作!!
今、どこかで起きているかもしれない
明日、巻き込まれるかもしれない
その時、あなたはどうする
人もうらやむ瀟洒な住宅街で、19年前に何が起きたのか。
いま日本中のあらゆる町で起きているかもしれない
一人一人に問いを突き付けるサスペンス!
【感想】
★★★★★
これを読んで、コロナが始まってからの日本の縮図みたいだなあと思いました。
日本だけでなく世界のあちこちでも起きているだろうけれど・・・。
特にコロナ禍で、日本に感じている気持ちがまさにこの本。
海外在住ですが、今の状況で日本に帰ったら家族ごと村八分になりそうということでかなりの人が一時帰国をためらっています。
「コロナに感染した人が自分の身勝手な振る舞いでほかの人に感染させた」とニュースに上がるたびその人が特定されてしまったり。オンラインで家族を見ながら話すことはできるけれど、親が生きている間にあと何回会うことができるのかなと考えてしまう。
日本の闇、薄気味悪さを少し感じてしまう作品でした。
【家族とは】月の光の届く距離
著者 宇佐美まこと
【内容】
17歳の美優は、望まない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によってあるペンションに預けられ、出産後は特別養子縁組を待つことになる。ペンションの経営者は中年の男女で、高齢の母親の世話もしている。そして自らが里親となり、3人の子供たちを育てている。その里子たちはそれぞれが難しい背景を持っていたが、どの子も慈しんで育てられていた。その子らの世話と認知症の母親の面倒を手伝っているうちに、美優の心にも変化が生まれていく----。
『展望塔のラプンツェル』で山本周五郎賞候補となり、『ボニン浄土』で大藪春彦賞候補、 最新刊の『羊は安らかに草を食み』は、読書メーター読みたい本ランキングで1位となり、版を重ねている。今、ノリに乗っている著者の今作は、『展望塔のラプンツエル』で、児童虐待のシンポジウムなどに参加し、福祉や里親団体、児童養護施設の関係者たちとかかわることで生まれた、家族の在り方に迫る物語。
【感想】
★★★★☆
「子供に親にしてもらう」いい言葉だと思います。
自殺しようとした思わぬ妊娠をした17歳の美優が知り合った、養子や里子を育てる「ゲストハウス」をやっている兄妹。
家族とは何か、養子や里子について考えられさせられます。 グリーンゲイブルズのマシュー「明良」とマリラ「華南子」の関係はとても切なかったですが、でもこの二人の家族の形も、とても素敵なものだと思いました。
美優が下した決断も、尊重されるべきものだと思います。
最近こういう「家族の在り方を考える」系の本、多いですね。
赤毛のアン、プリンスエドワード島に私も行ったことがあるので、懐かしいと漢字ながら読む場面もありました。