嶋浩一郎/著
松井剛/著
【内容】
女子力、加齢臭、草食男子、美魔女、おひとりさま、イクメン、スーパーフード、インスタ映え……。これら、どこからともなく現れて、ある日気づいたら一般化ていたことばを、著者は「社会記号」と呼ぶ。それは世界の見え方を一変させ、私たちの思考や生活、ひいてはマーケットを支配していくという。では、「ことば」はなぜどのように生まれ、どんなプロセスを経て社会に定着していくのか。そして、なぜ人は新しい「ことば」を求めるのか。
本書は、マーケティングのプロと学術研究者がタッグを組み、それぞれの視点で「社会記号」について考察。人々の潜在的な欲望をあぶり出し、世の中を構築し直す、知っているようで知らない「ことば」のダイナミクスに迫る。
【感想】
★★★☆☆
久しぶりに新書を読んだ。内容は実に分かりやすく、興味深い。誰もが知っていることばを筆者は「社会記号」と位置付ける。それは、コピーライターが流行らせた言葉でも、広告代理店がマーケティングに為に作った言葉でもない。逆にそのような言葉は意外と浸透していかないものもある。「社会記号」になった言葉は、メディアがメディア同士確認しながら生まれていった言葉であり、その結果マーケティングにも繋がっている。
加齢臭の話で、
「加齢臭」と呼ばれる体臭が1999年あたりから急に臭いだしたわけではありません。おそらく昔から、中高年の人々は若い人にはない独特な臭いを発していたはずです。
確かに、その通り。
実はこの言葉は資生堂が1999年に作り出した言葉で、あるときに資生堂の調香師が、中高年が集まった時に感じる独特のにおいが気になって研究を始めて臭いの正体を突き止め、「加齢臭」というラベルを与えたらしい。ラベルを与えたことによって人々が気にしだして対処を考えるようになったとか。なるほど。
それは「メタボ」など他の言葉にも言えることだが、このようにラベルを与えることで人々がそれに気づくきっかけにもなり、対策を出すことでマーケティングにも繋がっている。
とにかく知っている流行り言葉などがたくさん例に挙げられて、分かりやすく生まれた背景、ビジネスへの繋がりなどが書いてあり、読んでいてとても面白かった。
実は著者は本屋大賞の立ち上げにも関わっている人らしく、私は本屋大賞毎回注目しているので実はこんなところでも活躍されている人なんだなとも思った。