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ぶくぶくブックレビュー

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【死を見つめる】夜明けのはざま

著者 町田そのこ

【内容】

『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞!
3年連続、本屋大賞ノミネート!!

自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。


地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。

死を見つめることで、自分らしく生きることの葛藤と決意を力強く描き出す、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこ、新たな代表作!

【感想】

★★★★★

死とかかわる仕事をしている佐久間真奈。友人楓子の結婚式なのに義両親がいろいろと決めたんだろうなというのを見てげんなりとする。そして自分も結婚を考えている彼がいるけれど今の葬儀社での仕事を辞めろと言ってくる。

 

真奈の友達の話、真奈の彼氏の話、そして友人の話、そして家族の話、同僚の話など真奈を中心とした家族の話とそれぞれの話には誰かの死が合わさっている物語でした。一番つらかったのは同僚の話。いじめられっ子だった彼は元同級生にその元同級生の父親の葬儀で会ってしまい、その元同級生が昔のことを謝ってくるのだけれどすごく須田の気持ちに共感してしまいイライラした。須田の境遇もしんどすぎて辛かったけれど、生きづらいのは彼だけではない、「けしのみ」の話を読んで「確かに私たちには受け入れることしかできないんだなあ」などと思った。

 

お花屋さんの話も、須田さんやほかの人の話も読んでいてうわーと思うことがあったけれど、なんというか、すべてうわ、しんどい、これはつらい」なんて感じで読み始めるんだけれど、最終的にはこれを飲み込むというか。消化していくしかないのかなと思った。

 

それぞれ生きづらさを抱えているけれど、実は誰もがそういったことをおなかに抱えながら生きていくしかないんだなと思った。

 

町田そのこさんの紡ぎだす言葉はすごいなと思った。心に残る本だと思う。