【人によって、全然違う一日だった「あの日」】あの日からの或る日の絵とことば 3.11と子どもの本の作家たち
編 筒井大介
【内容】
「あの日から」を生きる、すべての人へ。
――3.11と子どもの本の作家たち。
現代を代表する絵本作家たちが描く、震災をめぐる或る日の記憶。
*『翻訳できない世界のことば』のイラストブックシリーズ。
*現代を代表する絵本作家たちによる、絵とエッセイを収録。
*初のエッセイ書き下ろしとなる作家も多数。
【イラストとエッセイ】(五十音順) 阿部海太/荒井良二/飯野和好/石黒亜矢子/植田真/及川賢治/大畑いくの/加藤休ミ/軽部武宏/きくちちき/坂本千明/ささめやゆき/スズキコージ/高山なおみ/tupera tupera 亀山達矢/寺門孝之/中川学/中野真典/nakaban/長谷川義史/ハダタカヒト/原マスミ/樋口佳絵/穂村弘/牧野千穂/町田尚子/ミロコマチコ/村上慧/本橋成一/本秀康/ヨシタケシンスケ/吉田尚令
【編者より】(前書きより抄録) 僕は絵本編集者だ。2002年からこの仕事をしているのだが、2011年3月11日以降、出る絵本の傾向が変わったと感じるようになった。生命力にあふれたもの、逆に死をテーマにしたものも増え、以前なら「怖い」といって避けられたようなインパクトのある絵や物語を描く絵本作家も多くなった。 僕が日々感じる「楽しい」も「嬉しい」も「悲しい」も「寂しい」も、その根っこはあの日を境に大きく変わった。読者の中にも見えない、でも消えない感覚がうずき始めたのかもしれない。そして、絵本作家はそのことをより切実に抱え込んで、絵と言葉を紡ぎ始めたように思えるのだ。 § この本は32人の絵本作家による、ごくごく個人的なエピソードの集積で出来ている。それは一見あなたには関係ない、もしかしたら些細に思える、あの日にまつわる、ある日の物語。 しかし、読み進めるうちに、いつしか自分を重ねる瞬間がやってくるかも知れない。自分の物語を誰かに聞いて欲しい。近しい誰かの物語を知りたい。他の誰かが抱えているものを、気持ちを、共有することはきっと出来ない。それでも、みんなあの日から同じ地続きの日々を生きている。何かを乗り越えたりせず、ただただ抱えて生きている。 § あの日にまつわる、個人的な、他人にとっては些細な物語。そんな物語を沢山聞いてみたい。 どこからでも、この本を開けば、誰かのそんな瞬間の物語に出会う事ができる。そしてそれを、心強く思う日があるかも知れない。 あの日からの絵と言葉の物語は、僕やあなたと同じ日々を歩んでいるはずだ。
【感想】
★★★★★
絵本作家さんによる「あの日」の話。
詩であったり、日記やエッセイのようなかんじであったり、物語のようであったり、はたまた堅い文章であったり。
作家さんによって「あの日」という同じ日、同じ体験がこんなに違って表現されていてとてもよかったです。
それぞれの絵も抽象的であったり、絵本のようであったり、漫画のようであったり。
私はあの日、家に友人が泊まりに来ていた。
海外在住ということもあったがテレビの中の映像はまるで日本であるとは信じがたく、
関東出身の友人も一生懸命うちから実家へと連絡を取ろうとしていた。
誰にとっても、「忘れられない出来事」「忘れられない日」だったと思う。
今一度思い出し、あの日のことを想った。
【90年代のなつかしさとグッとくる愛の物語】僕の母がルーズソックスを
著者 朝倉 宏景
【内容】
朝起きたら、母親が17歳になっていた――。
外見はアラフォーの専業主婦なのに、 16歳の息子の俺に向かって
「ねぇ、君さ、ウチのピッチ知らない?」と言い放ったのだ。
一人息子の俺が、昨日あんなことをしでかしたからなのか。
原因はともかく、女子高生に「逆戻り」してしまった 母・芽衣子(めいこ)の不安を除くため、 息子・潤平(じゅんぺい)は、両親の過去を探ることに。
家族の奥底に埋められた謎が明らかにされる。
【感想】
★★★★☆
最後、グッときました。
どこかへ逃げたいと思っていた潤平。
ある日、母親の芽衣子が記憶をなくし、コギャル時代に戻っていた。
潤平ははじめは困惑し、芽衣子のことを受け入れるのが難しかったものの、
話を聞いていくうちに両親の過去について知らなかった事実が判明。
90年代のなつかしさに「あー!あったあった!ピッチとかルーズソックスとか懐かしい!」とくすっと笑えたり、
グラフィティについて何も知らないので、「なるほど、こういうルールがあるんだ」と感心したり、
芽衣子の過去を探っていくうちにほろりと涙したり。
コミカルな設定の中にもグッとくるものがあり、とてもよかったです。
【サスペンス×SF】帰去来
著者 大沢在昌
【内容】
大沢在昌、作家生活40周年記念の第1弾は、パラレルワールド警察小説
警視庁捜査一課の女刑事が、 「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」にタイムトリップした――。
警視庁捜査一課の“お荷物”志麻由子(しま・ゆうこ)は、連続殺人犯の捜査中に、何者かに首を絞められ気を失う。「殺されたのか・・・・・・」。目を開けると、そこは異次元の「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」、戦後の荒廃した世界だった。 由子は自分が、東京市警の<エリート警視>として存在していること、部下だと名乗る男性は、かつて付き合っていたボーイフレンド・里貴(さとき)にそっくりだった。 由子は犯罪組織から憎まれているだけでなく、警察内部でも強引な捜査方法が非難を浴び、孤立無援の状態だった。そして里貴からは、もし警察官を辞めて一般人に戻ったりすれば、命を狙われる可能性があることを知らされ打ちのめされる。 混乱した状況のなかで、「エリート警視」になり代わらざるを得なくなった由子は、捜査を開始する。そして新宿の闇市に君臨する「羽黒組」と「ツルギ会」を壊滅させようとするのだが・・・・・・。 やがて明かされるタイムトリップが起きた、胸つぶれる理由。 志麻由子は、「元の世界」へ戻ることができるのか?
【感想】
★★★★★
500ページ強もある作品でしたが、長さを感じさせませんでした。
私もページをめくる手が止まらず一気読み。
首を絞められて殺害されそうになった由子が飛んだ先は現在の日本とは似つかないパラレルワールド。
最初は読者である私もその世界観を知るためにゆっくりとページをめくっていく。
光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市で由子はエリート警視として活躍。なんだか戦後の日本みたいで闇市があり、そこを仕切っている2つのグループがある。その組織を壊滅させようと奮闘していくうちに、由子は自分を殺そうとした犯人の正体につながっていく。
その世界での由子の父親に会ったぐらいから物語は加速。ページをめくるのも加速。
父親の顔は由子の知っている父親の顔とは少し違っていた。別人だったのだ。しかもその父親は「パラレルワールドの存在を知っていて、そこへ行き来している人物を知っている」もう気になって仕方がない!!!
由子を殺害しようとした犯人の正体とは。パラレルワールドならではの展開に息をのむしかない。複雑に見えた現代日本と日本共和国の人間関係も、案外わかりやすくのめりこみやすかった。
文句なしに傑作!
【言葉を使った青春ミステリー】ことのはロジック
著者 皆藤 黒助
【内容】
元天才書道少年が恋したのは
日本語を愛する金髪転校生だった――
「月が綺麗ですね」を超える告白をして、青春を取り戻せ!
書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇は、金髪碧眼の転校生アキに一目惚れ。
しかし、アキの憧れがI love youの名訳といわれる「月が綺麗ですね」を超えた日本語の告白をされることだと知り、頭を抱える。
回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字“彁”、同人誌の不可解な改変など言葉にまつわる事件を解決し、肇は日本語史上最大級の無茶ぶりに応えて告白できるのか!?
【感想】
★★★★★
言葉のロジックで楽しめるミステリー。
元書道の天才少年肇と、転校生、アキ・ホワイトが挑む言葉にまつわる謎。
部活動の集合場所から幽霊文字、小説に隠された謎までワクワクしながら読めました。
特に幽霊文字「彁」のエピソードについては「幽霊文字!そんなのあるんだ!」と驚き。そしてその謎の背景には悲しい真実。
小説にまつわる謎解きは、ほっこり。
アキ・ホワイトの隠された真実にもなるほど。と思いました。
「月が綺麗ですね」を超える愛の告白、とても素敵だと思いました。
学生さんにおすすめの一冊です!
【皇室女子の苦しみは現代に生きる女性の苦しみとリンクしている】皇室女子
著者 香山リカ
【内容】
本書は、美智子さま、雅子さま、紀子さま、愛子さま、眞子さま、佳子さまの6人の皇室女性を通して見えてくる、日本の多くの女性たちが抱える共通の課題・問題を論じます。
働き方、婚約、結婚、出産、子育て、ジェネレーション・ギャップ等々、皇室のやんごとない女性たちも、日本の多くの女性たちと同じ問題を抱え、それを克服しながら、平成という世を渡ってきました。いわば皇室は私たちを写す〝鏡″でした。
①「〈努力ではどうにもならないことがある〉と気づけない」
②「やっぱり〈婚家より実家が頼り〉に思える」
③「〈私事より義務優先〉を次の世代にも求めてしまう」
④「〈子どもはまだ?〉がタブーでない社会に日々傷つく」
⑤「自分の〈痩せすぎ〉を自覚できない」
⑥「〈ふつうの生活〉が一番むずかしい」
⑦「〈子どもが自分の思い通りにならない〉ことに愕然とする」……等々、
男女雇用機会均等法施行以後、日本の多くの女性たちが当人として、また家族としてぶち当たってきたさまざまな心の問題を、〝写し鏡″としての皇室女性たちのお姿を通して、精神科医の香山リカ氏が鮮やかに切り取ります。
【感想】
★★★★★
皇室での話は遠い話と思っていましたが、この本を読んでみて、今を生きる女性の悩みってやっぱり同じなんだなあと共感しました。
もちろん雅子様のようにすばらしい経歴を持っているわけではないですが、昔から私も努力して大抵のものは勝ち取ってきていたので、大人になってから「努力ではどうにもできないこと」に対面し、かなり悩みました。今もやっぱり悩んでいますが、雅子様のように周囲からのプレッシャーはそこまでないため、気楽なのかもしれませんが、その分「自分で自分にプレッシャーをかけてしまう」ということがあります。
愛子様にも並々ならぬ苦労があるんだと思います。お母様はとても優秀な人で、しかし適応障害で色々世間から言われていたり、自分に関しても週刊誌でいろいろなことを言われてしまう。小さいのにいろいろなプレッシャーなどを背負ってこられたんだなと思いました。
美智子様に関しても、テレビで拝見する限りでは聡明なおばあちゃまという感じですが、彼女にも彼女なりの苦労があったんだと思い、すごいなあと思います。
そして紀子様。彼女に関しては順風満帆だなとずっと思っていたんですがここにきての苦労。眞子様の結婚報道。正直秋篠宮様と紀子様のお気持ちは私もわかります。
「若いんだから一度や二度失敗したって」とは思いますが、結婚の際に出るお金があります。なので離婚やうまくいかなかったときなど、そういった普通の家庭にはない悩みもたくさんあるんだと思います。
たくさんの女性が抱えている悩みを、さらに大きくして縮図にしたものが、皇室女子の苦悩。今を生きる現代女性に是非読んでもらいたい一冊です。
【こじらせ女子の自慰ワールド】この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ
著者 新井見枝香
【内容】
某有名書店の"型破り”書店員によるエッセイ第2弾。前作の『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』から、さらにパワーアップ。30代後半独身女性の日常生活を、赤裸々に綴った「うまくいかない仕事」「うまくいかない美」「うまくいかない恋」「うまくいかない人生」は、新井ワールド全開、面白さ半端ない。
【感想】
☆☆☆☆☆
新井ワールド、私はどうもハマれないようだ。
彼女の本は『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』を読み、「本にするほどの物でもないな」と思った。
エッセイ第二弾ということで、そんなに良かったのかな、と確かめるために読みました。
が、私には合わないようです。
新井賞なんかは結構楽しみにしてるくらいなんですが。
いかんせんこじらせてるなっていう感じが文章からにじみ出ていて、イラっときてしまいます。こういう女子、好きじゃないんですよね・・・。むしろ嫌い。
タイトルは面白いんですけど、内容は「ブログに書いたら?」って思う程度・・・。ごめんなさい。
【幽霊とお話するだけの簡単なお仕事です】送り屋 ―死者を送る優しく不器用な人たち―
著者 御堂彰彦
【内容】
想いを残して不慮の死を遂げた人たち。調査員はその死の真実を探ろうとする。“死者”本人から聞き取ることによって。死者と話せる調査員は、調査の過程で今は亡き人たちの願いに触れる。そしてそれを叶えることで、“向こう”へ送ろうとするのだった。自分の葬式に行きたいという少女。君なしでは生きていけないという恋人の言葉を心頼みにする女性。それは謎めいたものあり、切実なものあり―。不器用で、そして優しい送り屋の物語。
【感想】
★★★☆☆
調査員として「幽霊」に直接話しかけ、事故などの原因などの調査をする傍ら、その幽霊の未練を取り除き昇天させる「送り屋」という仕事。
主人公託実は、小さいころから幽霊が見えていて、でもそれををほかの人に言ったりすることで気味が悪い子などと遠ざけられたりしていた。両親の死後、東京でアルバイトをしていると、そのアルバイトの同僚の調査に来ていた調査員に出会い、ひょんなことから託実も調査員として働くことに。
もうなくなっている人と触れ合うのはとても切なく、昇天できるように彼らの未練を取り除くのはなかなかコミュ障の託実には難しいけれど、仕事を通して彼も成長していくような物語でした。
切ないミステリ好きにおすすめです。
送り屋 ―死者を送る優しく不器用な人たち― (メディアワークス文庫)
- 作者: 御堂彰彦
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2013/09/25
- メディア: 文庫
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送り屋 (2) ―死者を送る優しく不器用な人たち― (メディアワークス文庫)
- 作者: 御堂彰彦
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: 文庫
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