【再生の物語】エンディングドレス
著者 蛭田亜紗子
【内容】
32歳の若さで夫に先立たれてしまった麻緒(あさお)は、自らも死ぬ準備をするうち、
刺繍洋品店で小さなポスターを見つける。
<終末の洋裁教室>
講師 小針ゆふ子 毎週日曜午後一時から
春ははじまりの季節。
さあ、死に支度をはじめましょう。
あなただけの死に装束を、手づくりで。
死に装束=エンディングドレスを縫う教室。
人生最後に着る服を自分でつくるということに、興味が湧いた。
教室へ足を運んだ麻緒が出会ったのは、ミステリアスな先生と、3人の陽気なおばあさん。
聞けば、エンディングドレスを縫う前に、いくつかの課題があるという。
はたちの時にいちばん気に入っていた服
十五歳の時に憧れていた服
自分以外のだれかのための服
自己紹介代わりの一着……
先生やおばあさんトリオの助けを借りながら、麻緒は洋服づくりに無心で取り組んでいく。
夫の弦一郎に、命にかかわる持病があることはずっと知っていた。
それでも二人は、一緒にいることを選んだ。
洋服の思い出が、忘れていた想いや出来事を次々に引き出して――。
あつい涙があふれる! 再生のその先を描く、希望に満ちた傑作長編
―――
今はもう手元にはない、昔大好きでよく着ていた服を思い出した。
その手触りや着心地は、恐がりな自分をどんなに励ましてくれただろう。
人は生まれることも死ぬことも自分では選べないけれど、
何を纏って生きるかは選択することができる。
――山本文緒(作家)
【感想】
★★★★★
前半は読んでいてとても辛かったです。気持ちが追い付かず、少しずつ、少しずつ読みました。
夫に先立たれた麻緒の気持ちがしみてきて何度も涙がこぼれました。自分だったらどうなるだろうなんて考えました。やっぱり麻緒のように人生を終わらせることを考えてしまうかもしれない。
エンディングドレスを縫う。少しずつ時間をかけて、エンディングドレスを縫う前にいろいろなお題の物を縫う。「二十歳の時にお気に入りだった洋服」「15歳の時にあこがれていた洋服」「人の為に縫う」などいろいろなテーマでエンディングドレスに向かうまでにいろいろなものをつくる。そのたびに登場人物の思い出や過去などと向き合うことになるのだけれど、とても心に沁みた。
「人の為に」というときに麻緒は同じ教室に通う仲間からあるサプライズを受ける。もうそこがピークでした。号泣必至。
麻緒が前向きになったのはとてもよかったですが、このタイミングで前向きになれるのかと、私はあまりそこは共感できませんでした。
小針先生の過去の話も、なんか心に沁みました。
でも少しずつ立ち直る、少しずつ前向きになっていく、光が少しずつ差し込むような素敵な話でした。静かに、大切に読みたい本です。