【少子高齢化を考える】対岸の家事
著者 朱野 帰子
【内容】
「定時」の次は「家事!」
話題沸騰『わたし、定時で帰ります。』の著者、最新作!
「専業主婦なんか、絶滅危惧種だよね」
村上詩穂は、今ドキ珍しい「専業主婦」。居酒屋に勤める激務の夫と、おてんばな2歳の娘。
決して裕福ではないけれど、家族のために専業主婦という道を選んだ詩穂のまわりには、同じ主婦の「ママ友」がいなかった。娘とたった二人だけの、途方もなく繰り返される毎日。
誰でもいい、私の話を訊いて――。
幸せなはずなのに、自分の選択が正しかったか迷う詩穂のまわりには、苦しい現実と戦う人たちがいた。
二児を抱え、自分に熱があっても仕事を休めないワーキングマザー。
医者の夫との間に子どもができず、患者たちに揶揄される主婦。
外資企業に勤める妻の代わりに、二年間の育休をとり、1歳の娘を育てる公務員。
夫に先立たれ、認知症の兆候が見え始めた中年の主婦と、結婚よりも仕事を選んだその娘。
頑張り続け、いつしか限界を迎えた彼女たちに、詩穂は専業主婦として、自分にできることはないかを考え始める――。
どうしてこんなに大変なんだろう?
特別なことなんて、ひとつもない。何気ない日常でさえ必死でもがく人たちを描く、リアルファミリーストーリー。
この本を読めばきっと、明日が来るのが待ち遠しくなる!
【感想】
★★★★★
「対岸の火事」にひっかけたタイトルがなんとも秀逸。
専業主婦、ワーキングマザー、育児休暇中のパパ、不妊治療中の若奥様、結婚も子供も必要ないと働くキャリアウーマン、そしてシングルマザー。
それぞれの家事や育児の悩み、そそしてそれぞれの生い立ちから来る考え方が描かれた作品。読み手も誰しもがきっとそのうちの一人ではないだろうか。なので非常に共感をしてしまうし、一緒に苦しい思いを感じ、そして違う立場から見るとこういう感じで、この人たちもこのように悩んでいるんだとわかる。読んでいて胸が詰まる箇所がたくさんあった。是非、政治家にも読んでもらいたいですね。
子どもを産めという政治家や年配者、子供を産むと仕事がしづらくなる環境、待機児童問題、家事や育児に協力的ではない夫、そして莫大なお金がかかり、ストレスも半端ない不妊治療。そして簡単に養子縁組ができない風潮。
私たちの身の回りは「安心して子供を産めない。育てられない」状況である。
昔とはあらゆることが変化した。子供を増やすのは国にとって大事なことだけれど、まずは土壌をきちんと作らなくてはならない。
逆に私の住む欧米では働いてないものが社会的弱者なので、日本人主婦で言葉の問題などもあり、専業主婦をしている人は周りから
「やることなくて暇でしょ。ふだん平日何やってるの?(この場合、「家事」は答えとして認められない)」
なんていわれたり哀れまれてしまったりすることも多いし、夫によっては「男も女も平等に働くのが当たり前なんだから、専業主婦は甘えである」という人もかなりいる。人によっては産んで1か月で職場復帰する人もいる。
働いていても働いていなくても「領収書制度」をとる夫婦もいる。これは何人かの友人のうちで採用されている制度だけれど、旦那さんがメインで働いていて、奥さんもフルタイムだけれど収入は旦那さんほどよくないとか、奥さんが主婦の場合に採用されていることが多いんですが(旦那さんも奥さんも同じくらい稼いでいる場合は完全に折半が多い)、奥さんが買い物に行って、買い物のレシートを夫に見せる。そして夫がそのレシートの中で食べ物や生活必需品などのお金を奥さんに後で支払うというシステム。たとえば奥さんがちょっと化粧品を買ったり生理用品を買ったり、そういうものに関してはお金を支払ってくれないので、奥さんが独身時代にためていた貯金から出すか、もしくは働くしかない。
これを最初に聞いたときは「え!それモラハラじゃないの!」なんて思いましたが、何人かその制度を採用されている夫婦がいたのでそれはそれでこちらでは「当たり前」な風景なのかもしれません。
でもそのかわり、夫も家事や育児には積極参加です。何曜日と何曜日は夫が子供のお迎え(小学校終わるまでは保護者のお迎えが絶対に必要)なんて決めて、お父さんがお迎えに行く光景もかなり見ますし、日本と違ってそこまで残業しません。なので帰ってきてから食事の支度もしたり、まあ後片付けは食洗機とかが多いかな。あと、冷凍食品も充実してるので料理時間の短縮にも一役買っています。
個人的にはワーキングマザーの礼子が最終的にカッコイイと思った。「子供に楽しむ親の背中を見せてあげたい」最高だと思う。親が生き生きとしているカッコイイ姿を子供たちが見て育つ。子供はそんな両親を誇りに思うだろう。これは働いているにして緒働いていないにしても、自分の生き方を子供に誇れるような暮らし方がいいなということであり、別に私自身は奥さんが専業主婦でも正社員でもパートでも、生活が成り立っていくんならそれは個人の自由だと思っています。
専業主婦、ワーキングマザー、キャリアウーマン、選ぶのは個人の自由だし、選べない場合もある。すべての人にとって暮らしやすい社会になればと思った。
2018年8月末ごろ刊行予定。