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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【車椅子ホストの奮闘記】車輪の上

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著者 乙武洋匡

【内容】

600万部のベストセラー『五体不満足』から20年。
乙武洋匡、復活第1作は、小説!


車椅子ホストのシゲノブが主人公。大学卒業後、就職が決まらぬまま上京し、ひょんなことからホストになった。客から障害者は席に来るなと言われたり、テレビに取材されたり、「障害者」というレッテルに振り回されながら、ホスト稼業に精を出していた。シゲノブは、歌舞伎町はレッテルをはられた人間の坩堝だと気づいていく。ホスト、風俗嬢、LGBT……。
そんな人たちとの交流や恋愛を通じて、シゲノブが変わっていく。

【感想】

★★★★★

乙武さんだからこその説得力というかリアリティ。

車いすの男性を主役にした、前向きになれる話。

ひょんなことから車椅子ホストになったシゲノブは、「やっぱり車椅子だから売れない」と思い、自分なりに頑張るもなかなか指名が取れない。

シゲノブを「不良品」などと呼ぶ同僚ホスト「ヒデヨシ」や、いろいろな注意や叱咤してくれる「ヨシツネ」友好的でいつもシゲノブのことを助けてくれる「タイスケ」などいろいろな同僚に囲まれながらも自分の場所を見つけようとするシゲノブ。

ある日、ヨシツネの秘密がばれてしまい、ヨシツネはお店を辞めてしまう。その秘密というのは「身体障がいがあること」とはまた別ではあるけれど差別の対象となってしまいがちなもの。でもそれでもヨシツネは頑張っていた。そしてシゲノブを応援してくれていた。

 

シゲノブに対して、「そんな自分のこと車椅子だから・・・って卑下してばっかりでイライラする」なんて思うこともあった。

でもそれはもしかしたら自分にそういった「特徴」がないから言うのかなとも思う。

大人になり、私自身にもそういった「卑下するポイント」というか、小さいことかもしれないけれど「欠陥」が出てきたことにより、やはり他人が何の気なしに言った言葉に勝手に傷ついてしまうことがある。それが子供のころからだったらやはりそういう風に考えてしまうのは仕方がないことだと思う。傷つくことに慣れてしまっていて、それを自虐していかないと辛くなってしまったりとか。


そんななか、ホストクラブの経営者かつホストのリョーマさんがとてもよかった。「車椅子だから」と卑下しているシゲノブに気づきを与えられる存在として描かれてて、私もこういう考え方になれたらいいなと思いました。

 

差別はどこにでもある。どんな小さなことでも差別の対象になってしまう。
人は本当にそれぞれ。それぞれを認め合い生かしあい、素敵な社会になっていったらなと思います。

 

 

車輪の上

車輪の上

 

 

【フジコ以上の衝撃】インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実

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著者 真梨幸子

【内容】

一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。
男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。
茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !

【感想】

★★★★☆

『殺人鬼フジコの衝動』は二年ほど前に読みました。でも内容を少し忘れてしまったので以下のサイトであらすじを確認してから読みました。

tomaty.jp

ある日、左耳と左手の指が全てない北野由莉という女性が保護される。話しによれば、下田健太とその内縁の妻、藤原留美子が7名の男女を団地の一室に集め、凄惨なリンチを受け殺害したといいます。

警察は下田健太と留美子を逮捕。藤原留美子は自首し、容疑を認めました。検察は藤原留美子に無期懲役刑を、下田健太に死刑を求刑。しかし、証拠不十分により下田健太は無罪判決を勝ち取りました。翌日藤原留美子は自殺。下田にマスコミが殺到しましたが下田は姿を消します。

 

 

 

フジコの育ての母で健太の実母、茂子が独占インタビューをするということでやってきた井崎智彦、村木里佳子、そして下田茂子に直接指名された吉永サツキ。

しかし「時間に遅れた」「早すぎた」などの理由でインタビューが中止になったり、里佳子は「特別よ」と言われ茂子の家に何日も泊まったり。そこで変な声を聴いたり・・・。怖い。

 

読み進めていくうちに衝撃の真実が明かされていき、「みっちゃん」と呼ばれる、みっちゃんの真実が明かされたとき「えええええ!」と驚いた。これは衝撃。

 

ぜひ、

 

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

 

 

と一緒に読んでもらいたい。

 

 

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
 

 

 

【母親の死を看取る】有村家のその日まで

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著者 尾崎英子

2018/11/19発売予定

【内容】

有村文子はイラストレーターの仕事をしながら、マンションの隣の部屋に住む中野晴也の娘、あおいの面倒をみている。あおいの母・雪乃とは親友のように話せる仲だったが、ある日突然の心筋梗塞で亡くなってしまったのだ。まだ5歳のあおいは、しっかりしてみえるが心の傷は大きい。年が明けて1月3日、姉で医者の美香子から母の仁子ががんであることを知らされた。美香子も兄の優からさきほど知らされたばかりだそうだ。久しぶりに家族がそろって仁子のもとへ集まると、仁子はいつもと変わらぬ調子。標準治療を「つまらないから」という理由でやめ、すごい乳酸菌がきくとか、友人にお金を貸しているとか、拝み屋にみてもらっているとかの話題ばかり。金銭問題で一度は距離を置いた父の照夫は妻の大病に戸惑っている様子だ。近い将来訪れる仁子の最期の日を、有村家の子供たちとそのまわりの人々は、仁子らしく迎えられるよう奮闘するが――誰しもが迎える”家族の死”と、在宅医療の現実をリアルに描いた感動作。

 

【感想】

★★★★☆

主な登場人物は以下の通り

・有村文子・・・有村家の末っ子。イラストレーターで在宅で仕事をしている。隣に住む雪乃とは仲の良い友人だったが、ある日その死に立ち会ってしまう。その後雪乃の娘あおいのシッターもするようになる。

・美香子・・・文子の姉。医者。しっかりしているが自身が医者ということもあり、人の死に対してある意味冷静でもある。

・優・・・文子、美香子の兄。寝具を売っていて人当たりがよく優しい。

・真弓・・・優の妻。気が強い。

・仁子・・・文子、美香子、優の母。癌に冒されるもののきっと治ると信じて怪しげなサプリメントや拝み屋などに頼る。湯水のようにお金を使うエキセントリック。

・照夫・・・仁子の夫。仁子とは別居をしたこともあるが、それでも彼女のエキセントリックさは「面白い」と思え、「困ったな」と思いつつも仁子のいいなりになる。

 

家族(仁子)の死を迎えるまでの物語。 なかなかエキセントリックなお母さん、仁子が癌に冒され、治療もそこそこ、怪しげなサプリや拝み屋さんなどに頼ったり、家族としてはお金はかかるし怪しいし・・・。美香子は医者の視点から「きちんと治療を受けたほうがいいと思うものの、そんなに寿命を延ばすわけでもないのでお母さんの好きなように生きてもいい」と考える。長男・優の妻真弓はできるだけ多くのお金も残してもらいたいし、そういった怪しげなものはすぐにでもやめさせたいと拝み屋にキックをお見舞いする。

 

何よりも仁子の夫、照夫の愛にはとてもいいなと思った。

「結婚するとお金もかかるし大変なのはわかってるから次は友達として会いたい」というのもいいなあ。仁子のエキセントリックさには少し疲れるも、それを楽しめる夫。素敵です。仁子への最後の言葉には泣けました。

 

いろんな愛が詰まった、静かで温かい気持ちになれるお話でした。

 

有村家のその日まで

有村家のその日まで

 

 

【綿矢りさの怖い話】憤死

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著者 綿矢りさ

【内容】

 自殺未遂をしたと噂される、小中学校時代の女友達。興味本位で病室を訪れた私は、彼女が自宅のバルコニーから飛び降りた驚きの真相を聞く…表題作のほか、「おとな」「トイレの懺悔室」「人生ゲーム」を収めた、綿矢りさによる世にも奇妙な物語。 

 

【感想】

★★★★☆

綿矢りささんの本は久しぶりです。彼女がデビューしたころの物は割と読んだかな。

サイコホラー短編集。

掌編「おとな」
「トイレの懺悔室」
「憤死」
「人生ゲーム」

 

「おとな」は「え?これ綿矢りさ経験談?」なんて思っちゃいました。想像しただけで怖いです。

「トイレの懺悔室」はただ奇妙で怖かったです。

「憤死」はあるいみのおかしさなどもありました。ブラックな感じ。

「人生ゲーム」は「ザ・世にも奇妙な物語」っていう感じで。この中では一番好きだったかな。

移動時間などに軽く読めます。

 

 

 

憤死 (河出文庫)

憤死 (河出文庫)

 

 

【コーヒーが冷めきる前にタイムトリップ】コーヒーが冷めないうちに

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著者 川口俊和

【内容】

 映画化決定!!
主演:有村架純
2018年9月21日(金)公開


とある街の、とある喫茶店
とある座席には不思議な都市伝説があった
その席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという

ただし、そこにはめんどくさい……
非常にめんどくさいルールがあった

1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない
2.過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない
3.過去に戻れる席には先客がいる
その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
4.過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
5.過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ

めんどくさいルールはこれだけではない
それにもかかわらず、今日も都市伝説の噂を聞いた客がこの喫茶店を訪れる

茶店の名は、フニクリフニクラ

あなたなら、これだけのルールを聞かされて
それでも過去に戻りたいと思いますか?

この物語は、そんな不思議な喫茶店で起こった、心温まる四つの奇跡

第1話「恋人」結婚を考えていた彼氏と別れた女の話
第2話「夫婦」記憶が消えていく男と看護師の話
第3話「姉妹」家出した姉とよく食べる妹の話
第4話「親子」この喫茶店で働く妊婦の話

あの日に戻れたら、あなたは誰に会いに行きますか?
 

【感想】

★★★☆☆

話題になっていた本なので気になって購入、映画化もされたみたいですね、

 

さて感想はというと、心に沁みる話ではありましたが、そこそこという感じでしょうか。舞台などの脚本家さんだけあって舞台っぽいですね。舞台で見たら面白そうです。

 

謎なのは幽霊の存在。気になりますがこの本では謎のままでした。続巻がでていますのでそちらでは明かされているのでしょうか。

 

幽霊がトイレに行ったすきに彼女がいつも座っている席に座り、コーヒーを入れてもらう。そのコーヒーが冷めないうちにタイムトリップをする。

しかもルールは結構たくさん。正直面倒くさい。席を離れられないので常連でもないと行く価値もない(笑)

 

でも、アルツハイマーの夫の手紙や、最後の話はうるっときました。

コーヒーが冷めないうちに

コーヒーが冷めないうちに

 

 

 

この嘘がばれないうちに

この嘘がばれないうちに

 

 

【死神の千葉さん、再び!】死神の浮力

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著者 伊坂幸太郎

【内容】

 娘を残虐に殺された小説家の山野辺は苦しみのなかにいた。
著名人であるが故にマスコミからの心無い取材に晒され、さらに犯人とされていた男・本城が第一審で無罪になったのだ。
しかし、山野辺は彼が犯人であることを「知っていた」。 彼はサイコパスと呼ばれる反社会的人格者で、 自分が犯人である証拠を、山野辺宛てに送ってきていたのだった――。

控訴の猶予期間は二週間。山野辺とその妻、美樹は一時的に自由の身になった本城を探し、動き始める。そこに千葉という男が現れ「本城の居場所を知っている」と言う。 山野辺夫妻は半信半疑ながらも、この妙な男と行動を共にすることにする。
。 山野辺夫妻・千葉チーム対サイコパス本城の勝負の行方は?
今回、千葉が「担当している」のは誰なのか? そして調査の結果は?

 

【感想】

★★★★★

死神の千葉さんリターン。

今回は前回の『死神の精度』のような連作短編ではなく長編。

音楽が大好きで、人減とはちょっとずれた感覚の死神、千葉さん。

 

今回の担当は「山野辺」という作家。しかも本城というサイコパスに娘を殺されたばかりで復讐を企てている。

内容はシリアスなのに千葉さんで少し脱力&和む。

本城のサイコパスぶりと本城の担当死神の決断には「ええ!」と思うが、最終的には胸のすく結論でした。面白かった!

 

 

死神の浮力 (文春文庫)

死神の浮力 (文春文庫)

 
死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

【もしも自分に罰を与える力があったら】ぼくのメジャースプーン

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著者 辻村深月

【内容】

 ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。 

 

【感想】

★★★★★

辻村深月さんお得意のSF(スコシフシギ)な物語。

学校でウサギがひどい殺され方をして、犯人を見た、ぼくのともだちのふみちゃん。

ふみちゃんはその後心を閉ざしてしまった。

ぼくには不思議な力がある。それを使って犯人に罰を与えようとするという話。

 

力を使うことにおいて不安な母親は親戚の、同じ力を持つ大学の教授に息子に力についてのレクチャーをしてもらうことに。

 

そのレクチャーを通して相手にどんな罰がふさわしいか、力を使うべきなのか使わないべきなのかなど、自分も考えさせられていく。

 

相手に罰を与えるという力、普通は司法で裁かれたりするけれど、もしその力が自分にあったら・・・・。しかも同じ相手には二度と使えない。

 

最後に「ぼく」が下した結論は、思いもよらない結論でした。

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)