【途中下車は不可能、怖さのジェットコースター】スイート・マイホーム
2019/01/10発売予定
著者 神津 凛子
【内容】
第13回小説現代長編新人賞受賞作!
選考委員 全員戦慄。
「イヤミス」を超えた、世にもおぞましい「オゾミス」誕生。
スポーツインストラクターの賢二は、寒がりの妻のため、たった1台のエアコンで家中を暖められる「まほうの家」を購入する。ところが、その家に引っ越した直後から奇妙な現象が起こり始める。
我が家を凝視したまま動かない友人の子ども。赤ん坊の瞳に映ったおそろしい影。地下室で何かに捕まり泣き叫ぶ娘――。
想像を絶する恐怖の連鎖は、賢二の不倫相手など家の外へも波及していき、ついに関係者の一人が怪死を遂げる……。
人間が抱えるおぞましさや闇を描くホラー・ミステリー。
【感想】
★★★★★
小さな女の子がいる幸せな夫婦が、「あたたかい家」と呼ばれる一軒家を買うところから始まる物語。
旦那の賢二は浮気してるし、旦那の兄は統合失調症でなんか妄想などを口にしていたり、そして家を買った会社には「甘利さん」というおかしなセールスマン。担当の本田さんという女性に、「彼は問題のある社員なので気を付けて」と言われるも、めっちゃ寄ってきて「家族を大事にした方がいい」などと変なことを言ってくる。
しかし、物語の途中から賢二の近くで不可解な出来事が起こりだす。
賢二の周りで人は死んでいくし、浮気相手には変な写真が送られてくるし、遊びに来た妻の友人の子供は帰り際に死んだように蒼白になってるし、遊びに来た同僚に幽霊がいると言われるし、兄にも「そこらじゅうにいる」と不可解なことを言われる・・・・。
家の中に巣くうのは幽霊なのか、それとも妄想なのか、はたまた人なのか。
読んでいくうちに怖さが止まらない、けど面白くてページをめくる手も止まらない。
お兄さんの優しさに少し涙ぐんだあと、事件や過去の真相を知ってエンディングへ向かい収束していく気分。
からの衝撃のラストシーン!!!!
すごかったです。
ホラー好きにはかなりお勧めです。
【ドイツでの癌治療体験私小説】前立腺歌日記
著者 四元 康祐
【内容】
がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…!? ドイツ在住の詩人が、自らの体験を飄々と綴った、ユーモアあふれる闘病私/詩小説。
【あらすじ】
長年ドイツ・ミュンヘンで暮らす「私」に、ある日、前立腺がんが見つかった! 現地での、手術、がんのリハビリセンターに滞在しての「機能回復訓練」、その後の放射線治療、そして得たものは、臍の下の空洞と……。
【柴田元幸さん推薦!】
「前立腺を除去してみれば、おくのほそ道、ダンテの宇宙。 詩と散文の、どこか怪しげな、にもかかわらず(否、だからこそ)胸に迫る融合。」
【本書より】
手術の場合の後遺症って、なんなんですか? と私は訊いた。 主に尿漏れと性的不能です、と彼は答えた。 あはははは、私は笑った。生きるか死ぬかの話をしているときに、漏らすか立つかの話はあまりに次元が違っていると思えたのだ。 漏れと萎えマフラーのごとく靡かせて三つ子の魂冥途の飛脚 じゃあ切りますか、と私は言った。どれくらい仕事を休むことになりますかね?
【感想】
★★★☆☆
私も海外在住で入院したことがあるので、なんかその時の経験を思い出しながら読みました。
私の場合、絶対安静時は尿カテーテルではなく、お尻の下にちりとりのようなものを敷かれ、これにしてね。と言われました。いやー、全然できない。日本で入院してた時は尿カテーテルがいつの間にか刺さってましたが、そっちのが楽でした。
最初の方は文章になれなくて読みにくかったんですが、なれたらサクサク読めます。
途中途中に歌や詩がなどが挟まれていて、面白いです。
全体的には面白いんですが、なんていうか、プチ浮気みたいな、妻子いるのに女の人誘ったりするところは、嫌悪感が湧きました。私が女だからかもしれませんが。
【読んでいくうちにぞくっとする】Q&A
著者 恩田陸
【内容】
都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。
【感想】
★★★★★
ショッピングモールで起きた、原因のわからない死傷者がたくさん出た事件について、すべてが会話で話が進んでいく。
読んでいくうちにだんだんきな臭くなっていき、怖さが増す。
はじめはガス漏れや火災か何かかと思ってみんな一斉に逃げ出すも、実際にガス漏れや火災の痕跡もなし。いくつかみんなが逃げ出す前に変わったことがある。それは、万引きをする老夫妻、液体が入った袋を床に投げつけた男・・・・など。
一体原因は何だったのか。亡くなった人はほぼ逃げ出したことによる圧死。
事の真相を知るタクシー運転手、その真相と彼のその後にぞくっとします。
インタビューや会話を通して、背中がぞくぞくしてきます。
とても面白かったです。
単行本とは少し内容が変わっているらしく、両方読んでみたいなと思いました。
【好きになっていく過程にきゅんとする】隣の席の佐藤さん
著者 森崎緩
【内容】
実写PVがYouTubeにて公開中の
第6回ネット小説大賞受賞作!
コミカライズも決定!!
地味で、とろくて、気が利かなくて。おまけに大して美人でもないクラスメイトの佐藤さん。なのに隣の席になった途端、気になり始めたのはなぜだろう。ひねくれもの男子が、隣の席の地味な女の子に惹かれていく話。
【内容】
★★★★★
読み終わった後、PVも見てみました。
こちらです。
うわー。想像した通りの佐藤さんな感じ!いい!!
はじめは「あまり可愛くない」隣の席の佐藤さんが、どんどんかわいく見えてきて、いつの間にか恋に落ちる。
短いエピソードを重ねる中で、だんだんと変化していく気持ちに胸がきゅんとなる。
人を好きになっていく過程が、もう恋愛のときめきから遠ざかっている私にはとても新鮮でたまらなかったです!きゅんきゅんしました。
そして、友人から見る佐藤さんと山口くんもすごくいい!はたから見るとこんな感じなんだとにやにやが止まりません。
とてもかわいかったです。
【走ることの美しさ、強さがふんだんに詰まった一冊】風が強く吹いている
著者 三浦しをん
【内容】
箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。
【感想】
★★★★★
ただただ素晴らしかった。
実は箱根駅伝とか、マラソンとか、普段テレビで見たことがなかったんです。
全く興味がなかった。走ってるだけじゃんって。
いや、こんなにドラマが詰まってるものなんですね。
箱根駅伝のはの字も知らないど素人ですが、箱根駅伝の仕組みから何からすべてわかりました。見たことないけど。
今となっては箱根駅伝がリアルタイムで見られる日本に住んでいないのが悔やまれる。
もう年末だし。箱根駅伝に出るチームは最後の調整に入ってるんでしょうね。
大学のおんぼろ寮に集まった素人も含む10人が箱根駅伝を目指すストーリー。最後の箱根駅伝のシーンは涙なしでは読めませんでした。すごく良かったです。
とりあえず、読んでほしい。
【一人では学べないこともある】居酒屋すずめ 迷い鳥たちの学校
著者 桜井美奈
【内容】
あなたもここで、羽を休めていきませんか 居酒屋の空き時間を使って開かれる、フリースクール。 一見冷たく厳しい校長・鈴村明也と天然で明るい店長・村瀬晴彦、 そしてそこに通う様々な生徒たちが織り成す、温かで、奇跡のような時間。 友人・村瀬晴彦の居酒屋が経営難に陥っているのを救うため、親の遺産で物件を購入することにした鈴村明也。立て直しのために経営に乗り出すことになるが、その中で、晴彦の息子が不登校になっていることも相談され、無理矢理ランチをやっていない居酒屋の昼間、空いている空間を利用して、フリースクールを開くことに! 地域との繋がりを持たせつつ、居酒屋の知名度を上げるため、と仕方なく引き受けるが……。 学び直したい老人、夢がないフリーター、挫折したフィギュアスケーターなど、居酒屋とフリースクールを通して彼らの悩みを解決しつつ、明也自身の問題も、それを通じて解決されていく、五話からなる温かな連作長編。
【感想】
★★★★☆
目標に向かって頑張りたくなる気持ちにさせてくれる本でした。
晴彦が店長をやっている居酒屋すずめのお昼はフリースクール。そこに通うのは中学を不登校中の晴彦の義理の息子の亮我、そしてゲームばかりするフリーターの祐斗、学びなおしたいおばあちゃんのハツネ、そして途中で入学してくる若菜。
4人ともみんなばらばらの年、動機だけど、明也校長のいるフリースクールで勉強をしている。
亮我が中学校へ行かない理由、ハツネが英語が嫌いな理由、祐斗がフリーターで無気力なわけ、若菜がご飯を食べない理由。そして明也が抱える大きな秘密。それぞれと抱える問題は違いますが、読み進めていくうちに暖かな気持ちになれます。
学校へ行くことで一人では学べない何かを学ぶことができるということと、勉強をすることで得られる楽しさがあるということ、目標を持つことで勉強が楽しくなるということを感じました。
大人になり学校を離れた今だからわかる、勉強の楽しさ、大切さ。
ぜひ中学生高校生の子供たちにも読んでもらい、自分が何のために勉強をしているのかなどを感じてもらえたらなと思いました。
【2回驚く】アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う?
著者 青谷真未
【内容】
あなたは、ただひとつの恋人だ った--。
佐藤真白は、義肢のリハビリ専 門病院で事務スタッフとして働 いている。外見が生身の女性と 寸分違わぬ精巧さで作られてい るため、周囲には気づかれてい ないが、実はある研究機関から 送り込まれたアンドロイドだ。 ある日、院内の庭で散らばった カードを集めている青年・響に 声をかけられる。響は事故で左 腕を失い、義肢のリハビリのた め病院へやってきていた。屈託 なく笑う快活な響とのふれあい の中で、真白の中で処理しきれ ない感覚が生まれ始めて……。
【感想】
★★★★★
先日読んだ「代体」にも似た感じのお話です。こちらを読んだなら「代体」もおすすめです。
主人公はアンドロイドの女の子、佐藤真白。病院で働く彼女はある日佐藤響という男の人に恋をする。
ぎこちないながらも響に気持ちを伝え、付き合うことになった。病院からは出られないので、シアタールームで映画「ロミオとジュリエット」を一緒に観るなどデートをしたり。
でもこういった気持ちはアンドロイドにとっては「エラー」。
アンドロイドは、恋をしない。
エラーに気付かれてメンテナンスに出されることになり、そこで思わぬ衝撃の事実が。 そして最後、響のとった行動に「ロミオ!!!」と思わずにはいられなかった。号泣必至。
衝撃の結末!なんてよく言いますが、二回も衝撃を受けるとは。
最後はとても暖かい気持ちで読み終えることができました。暖かな涙があふれてきます。
切ないけれどとても素敵なお話でした。
(P[あ]8-5)アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う? (ポプラ文庫ピュアフル あ 8-5)
- 作者: 青谷真未
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2018/12/01
- メディア: 文庫
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