【ただの短編集と侮るなかれ】ずっとあなたが好きでした
著者 歌野晶午
【内容】
バイト先の女子高生との淡い恋、転校してきた美少女へのときめき、年上劇団員との溺れるような日々、集団自殺の一歩手前で抱いた恋心、そして人生の夕暮れ時の穏やかな想い…。サプライズ・ミステリーの名手が綴る恋愛小説集は、一筋縄でいくはずがない!?企みに気づいた瞬間、読み返さずにはいられなくなる一冊。
【感想】
★★★★★
660ページもあり、読みごたえも抜群。
最初は一冊の長編小説だと思ったのですが、読み始めてみたら恋愛をモチーフにした短編集。
でもそこかしこに歌野晶午さんらしいサプライズやトリックがちりばめられていて、どの話も面白くよめました。
が!!!!
さすが歌野晶午さん。最後にとびきりのサプライズを用意してくれてました!!!!
「女!」という話の最後の2行で「あれ?」と思い、その次の話「錦の袋はタイムカプセル」で「えええええ!」と。「おまえだったのか!!!!」となります。
最後の解説で詳しく説明してくれてますが、2度読み、3度読み必至の本でした。お買い得感半端ないですね。
【あの子供たちの、その後】心音
著者 乾ルカ
【内容】
私は、一億五千万円さんと呼ばれていました。
城石明音は先天性の心疾患を患っていた。両親は渡米しての心臓移植手術を決断する。そのためには1億5千万円という莫大な費用が必要だった。募金活動の末、明音はチャーター機でアメリカに渡った。ドナーも見つかり、手術も無事に成功し、明音は一命を取り留めた。誰もが明音の生を祝福しているかのようだった。このときまでは――。
白村佳恵は夫の康太とともに、8歳のひとり娘・若葉の渡米と心臓移植手術のため、募金活動に奔走していた。目標額は一億五千万円。しかし、目標の半分も集まらないうちに、若葉は帰らぬ身となった--。若葉が海外での移植手術を目指し始めた頃、佳恵は「明音ちゃんを救う会」のサイトを見つけていた。年齢こそ若葉の2歳上だが、もとの住まいが北海道であること、病名、診断された時期、転院先が東京であることなど、何か何まで似通っていた。明音には募金が集まり、手術に成功し、一命を取り留めた。娘を亡くして3年、佳恵は更新が続く「明音ちゃんを救う会」のサイトを見続けていた。明音の中学校入学にあわせて制服を買い、バイオリンを始めたと見ればバイオリンを買った。「明音ちゃんを救う会」がなければ若葉は助かったのではないか--。歪んだ思いを胸に、佳恵は明音の元に向かう--。
【感想】
★★★★★
多額の寄付を募ってアメリカで心臓移植をした明里のその後の人生の話。
よくある、子供の心臓移植のために募金を募る人。NYに旅行に行ったときに、一緒に飛行機に乗っていたこともある。
その結果命が助かり、心臓が丈夫ではないものの普通に生きることのできた「幸運な」子供のその後の物語。
なかなか心が締め付けられる展開でした。
「一億五千万円さん」などと呼ばれイジメられ、でも「死は絶対に選べない」ということがまたとても苦しく、辛くて辛くてどうにかこれから幸せになってほしいと思いつつもなかなか思い通りにいかず、幸運なことであったのにそれが呪いのようになってしまい、読んでいてとても辛かったです。
他人事だと思うと、「せっかくみんなから生かされたんだから、人生を謳歌してほしい」と思いますが、当事者だとすると、こういったプレッシャーを背負うことになるんだなと思いました。確かに自分が当事者だったら明音のように抱えながら生きるかもしれない。
考えさせられました。
【現代の風刺などバラエティに富んだショートショート】オバペディア
著者 田丸雅智
【内容】
5分で心揺らされる!!
気鋭のショートショート作家が紡ぐ、珠玉の18篇!
《収録作品》
くじ物件/ 記憶の喫茶/ 矢印の街/ 十郎/ 採集電車/ 甘海、甘魚/ プレミアム地方/ 新入社員/ 赤ちゃんエクスプレス/ 黒い犬 / メリー/ 言葉の蛇口/ 星の申し子/ 白い 犬/ あの日の花火/ オバペディア/ 雪解け のカクテル/ バルーンケーキ
【感想】
★★★★☆
1話だいたい5分で読めるショートショート集。
表題作の「オバペディア」や「言葉の蛇口」のような、現代を風刺しているかのようなショートショートなど、とても楽しめました。
私は「くじ物件」がとても面白かったです。
待ち時間にサクッと読めるし、電車の中など移動中に読むのもおすすめ。
【待ってましたの第三弾】みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語 参
氏田雄介[編著] 武田侑大[イラスト]
【内容】
【感想】
★★★★★
待ってましたの第三弾!
相変わらず面白かったです。
特に最後から最初に戻って謎が解ける話や、右から読むのと左から読むのでは意味が180度変わってしまう文章。とても上手くできている作品ばかりでした。
日本語って面白い!と思わせてくれます。
意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 ゾク編 54字の物語 怪(かい)
- 作者: 氏田雄介
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2018/11/16
- メディア: 単行本
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みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語 参
- 作者: 氏田雄介編著,氏田雄介
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2019/04/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
【独り占めするにはもったいない】#ひとりじめ飯
著者 細川芙美
【内容】
セブンルールズに出演し大反響! VERYやHERS、ELLEをはじめとした女性誌・ファッション誌にも続々と登場!! 永谷園、クックパッドなどの企業とのコラボレーションも次々に発表し、今一番話題のフードケータリングといえば名前が上がる料理家の細川芙美さん。彼女の初めてのレシピ単行本。夜中にひとりで食べる、魅惑の麺類、がっつりお肉、ほかほかご版に溶けたバター……。誰かのための料理ではない。自分の、自分による、自分だけのためのレシピ。それが”ひとりじめ飯”。日々の暮らしに追われる大人たちが、夜中のキッチンで、遅く起きた休日のブランチに、何もしたくない午後に……気持ちをアップさせ自分自身をを”あやす”ために作る最高に美味しくて、めんどくさくない料理。
【感想】
★★★☆☆
オシャレでインスタ映えしそうな簡単ご飯。
ひとりじめしてしまうにはもったいないくらいのひとりじめ飯がたくさん。
そしてハッシュタグには共感の嵐。
秋のタグの#夏より大人になった気分は本当にそう!
季節ごとに分けられてるのもいいですね。
おかきを入れた味噌汁には衝撃!そんなの思い付きもしなかった。
人に出したらなんだこれってなるかもしれませんが、自分だったらむしろやってみたい。
見てるだけでお腹がすいてくるレシピ本でした。
【平成を駆け抜けた、ある存在しない男の話】Blue
著者 葉真中顕
【内容】
平成という時代があった。
平成が始まる日に生まれ、終わる日に死んだ一人の男がいた。名は青、母親は彼をブルーと呼んだ。
平成15年12月、青梅で教員一家5人の刺殺事件が発生する。藤崎たち警察は、次女の篠原夏希(31)がほかの4人を惨殺した後、薬物摂取の心臓発作で亡くなったと推察するが、実は凶器に夏希以外の指紋があり、第三者がいたことがわかっている。事件はその後、夏希の驚愕の真実が明らかとなることで行き詰まっていく。
平成31年4月、あと少しで平成が終わる時、多摩ニュータウン団地の空き室で血まみれの男女の死体が発見される。殺されていた二人には子供がいて、彼らはネットカフェ難民だったことがわかるーー。
平成元年に生まれた男。平成15年に迷宮入りした殺人事件。平成が終わる直前に起きた殺人事件。それらが平成という時代の中でつながっていく。
平成が終わる今だからこそ、平成30年間の社会や文化の変化を描きながら、児童虐待、子どもの貧困、無戸籍児、モンスターマザーと、現代社会の問題に迫る、クライムノベルの決定版。
【感想】
★★★★★
平成が始まった時に生まれ、平成の終わりとともに消えた、平成を駆け抜けた、しかし存在していないブルー。
色んな人物のモノローグが交錯し、初めは全体的にぼんやりとしているが、どんどん読む手が止まらなくなってくる。
そして合間合間に挟まれた、平成を象徴する歌や出来事。
そして平成を震撼させた、様々な問題。
平成がもうすぐ終わるということで、とてもノスタルジックになりながら読むことができた。
【五感に響き渡る】極彩色の食卓
著者 みお
【内容】
料理上手の青年と、生活能力ゼロの元天才女流画家のお婆ちゃん。
過去持ち二人の秘密と食事の物語。
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夢に挫折し、今を無気力に生きる美大学生の青年は、かつて一世を風靡した元天才女流画家のお婆ちゃんに拾われ、生活の面倒を見てもらうことに。
引き替えとなる条件は、美味しいご飯を作ること。
自分自身の過去や絵で挫けた事実を隠したい彼は、言われるがままに美味しい食事を作り、彼女と一緒に暮らしはじめます。
でもそんな彼女にも隠している過去と秘密が……。
【感想】
★★★★☆
とても彩りが溢れた描写で、五感に響き渡る本!
絵を描くことをあきらめた青年・燕と、絵描きの年配の女性・律子。
ひょんなことから彼女に拾われ、ヒモ生活をする燕。
料理上手な燕の作る食事には彩りが溢れていてとてもおいしそうだった上に、作る描写もとても豊かでいいにおいが漂ってきそうな感じがしました。季節の食材を使い、いろんな色を載せていく料理、まさに燕君の絵のようでした。
律子の「四季の部屋」にも入ってみたいなあと思いました。部屋中が絵になっているなんてなんて素敵!
年配の女性と美大生の青年の二人暮らし、どんな感じになるのかと思ったけれど、「希望」と「愛」に溢れていました。