【夫婦間でするセックスは近親相姦】消滅世界
著者 村田沙耶香
【内容】
セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。
【感想】
★★★★★
雨音は、実は父と母が愛し合ってセックスした結果生まれた子供。
しかし、この世界では、それは「近親相姦」にあたる。なぜならば、人工授精が異様に発達し、人間はもはや人工授精でしか子供を作らないからだ。夫婦間のセックスはなく、恋愛は夫婦以外の誰かもしくはアニメなどのキャラクターとするものである。
もうこれだけでお腹一杯くらい異様な世界だけれど、千葉には「楽園」システムというもっと異様な世界が広がっている。
こういう気持ちの悪いような、薄気味悪いような世界を書くのが村田沙耶香は上手だなと思う。ものすごく衝撃的な世界なのに、どこかリアリスティックでもあり、本当にもしかしたらこれから今の常識は消えてこんな世界になってしまうのかもと思わせてくる。
「結婚」についてももはや何の意味があるのかもわからなくなる世界。
婚活ブームの今、こういった本をあえて読んでみるのも面白いと思う。
【彼は、七回死ぬ】時を壊した彼女
著者 古野まほろ
【内容】
何度、何度、何度くり返しても
彼の死だけが変わらない
星夜の学校を襲った悲劇と、くり返す夏の日。
命がけの青春を、私達は生きている。
運命と戦う高校生達のタイムリープ×本格ミステリ
☆☆☆
7月7日。部活仲間5人のささやかな七夕祭りを、謎の爆発が襲った。
その爆発は、部長を激しく吹き飛ばし殺害してしまう。
原因は、未来からきた少女2人。 彼女らはタイムマシンをハイジャックした挙げ句、爆発させてしまったのだ。
部長の理不尽な死をなかったことにすべく、彼らは協力して過去を書き換えようとする。
だが、時を繰り返すたび、なぜか犠牲者は増えていってしまい──
遡れるのは計7回。無限に思える選択肢。
繰り返す青春の一日は、命がけだ。
【感想】
★★★★☆
初読み作家さんです。
SF×ミステリー×青春の盛りだくさんストーリー。
正直、最初のタイムマシンやら脳内物質の説明やらが難解すぎて、しかも500ページ強を二段構えで、何度読むのをやめてしまおうと思ったか。
しかしその説明をこらえてこらえて、やっとタイムリープがはじまります。
要は、未来からやってきた少女二人によって吹奏楽部の仲間、真太が屋上から転落死してしまったのでそれを救おうと奮闘するお話です。
7回きっかりつかって失敗しないようにやっていくのだけど、何度やっても奴は死ぬ。それどころかもらい事故にあってほかの仲間も死んだり、なんなら100人強死ぬパターンまで出てくる。
最終的に全員生きてヤッホーな感じの終わり方かと思ったら実はミステリー仕立てで、犯人探しが始まる。
分厚いだけあって読みごたえも抜群。
秋の夜長にぴったり。
【私も一緒に夢を見た】楽園のカンヴァス
著者 原田マハ
【内容】
とうとう、みつけたわね。
ルソーの名画に酷似した一枚の絵。そこに秘められた真実の究明に、二人の男女が挑む。興奮と感動の傑作アート・ミステリ。山本周五郎賞受賞。
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。
【感想】
★★★★☆
ダヴィンチコードを彷彿とさせるようなアート・ミステリ。
MoMAにあるアンリ・ルソーの「夢」にそっくりな「夢を見た」というタイトルの真贋をある物語を読みながら探っていくというお話。
とても面白くてつい読みふけってしまった。
さすが原田マハさんと思わずにはいられないこのジャンル。アートに詳しくない私でもとても入り込みやすかったし、途中でどうしてもアンリ・ルソーの絵を見たくなってインターネットで検索したりしました。
【本の厚みを感じさせないノンストップ読書】犯罪者
著者 太田愛
【内容】
白昼の駅前広場で4人が刺殺される通り魔事件が発生。犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う。
【感想】
女の子に呼び出されてウキウキで出かけたら通り魔にあった!なんていういきなり恐ろしい目に合うところから物語はスタート。
しかも病院で手当てをしてもらっていたら謎の男に「あと10日間逃げきれ」なんて言われる。なぜか急に暗殺者に狙われる修司と、彼をかくまうはみ出し刑事・相馬と相馬の友人・鑓水と逃げながらも事件の真相を追っていく。読んでいくうちにパズルのピースがそろっていき、ハラハラドキドキが止まらない。
・目撃者
・暗殺者
・協力者
・隠ぺい工作
・内部告発
・ベビーフード
・謎のメルトフェイス症候群
が複雑に絡み合い、しかもなかなか一筋縄ではいかない展開!
ページをめくる手が止まらず飲食も忘れてしまう。
最後の最後まで目が離せないストーリー展開で、とても面白かったです。
以前『幻夏』を買ったのですが、もう一度読み返してみようと思います。こちらは相馬さんの話で、もう一つ文庫にはなってませんが『天上の葦』は鑓水さんの話ということで絶対読みたいと思います。
【樹木希林の生き方】一切なりゆき~樹木希林のことば~
著者 樹木希林
【内容】
2018年9月15日、女優の樹木希林さんが永眠されました。樹木さんを回顧するときに思い出すことは人それぞれです。古くは、テレビドラマ『寺内貫太郎一家』で「ジュリー~」と身悶えるお婆ちゃんの暴れっぷりや、連続テレビ小説『はね駒』で演じた貞女のような母親役、「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに……」というテレビCMでのとぼけた姿もいまだに強く印象に残っています。近年では、『わが母の記』や『万引き家族』などで見せた融通無碍な演技は、瞠目に値するものでした。まさに平成の名女優と言えるでしょう。
樹木さんは活字において、数多くのことばを遺しました。語り口は平明で、いつもユーモアを添えることを忘れないのですが、じつはとても深い。彼女の語ることが説得力をもって私たちに迫ってくるのは、浮いたような借り物は一つもないからで、それぞれのことばが樹木さんの生き方そのものであったからではないでしょうか。本人は意識しなくとも、警句や名言の山を築いているのです。
それは希林流生き方のエッセンスでもあります。表紙に使用したなんとも心が和むお顔写真とともに、噛むほどに心に沁みる樹木さんのことばを玩味していただければ幸いです。
【感想】
★★★★★
いわずと知れた名女優、樹木希林さんのお言葉集。
色々な雑誌などのインタビューから切り取られた希林さんの言葉はしっかりとしていて、深いものばかり。
物を持たないとか、不動産を持つなどお金の管理の仕方などは売れている女優さんとは思えないほど堅実なものであり、旦那様との関係も、どっしりと構えている、そんな感じでした。
なかなか真似できないですが、堅実な部分は是非取り入れたいなと思います。
娘の也哉子さんについてはきっと若いころかなり苦労されたなと思いますが、現在は素敵な旦那様と子供たちに恵まれており、この母、この父によりかなりしっかりとした女性であることがわかります。
ところどころに写真があり、家族写真もあるんですが皆さんとてもいい笑顔で、
これはこれで素敵な家族なんだなあと思いました。
とてもためになる本でした。
【夫婦で殺し合い】昨夜は殺れたかも
著者 藤石波矢/辻堂ゆめ
【内容】
今日も二人で殺し愛。
新進気鋭の著者二人が、夫役・妻役、二人の視点を交互にかき分ける!?
愛とトリックの殺しあう夫婦の物語!
平凡なサラリーマン・藤堂光弘(ふじどう・みつひろ)。
夫を愛する専業主婦・藤堂咲奈(ふじどう・さきな)。
二人は誰もが羨む幸せな夫婦……のはずだった。あの日までは。
光弘は気づいてしまった。妻の不貞に。
咲奈は気づいてしまった。 夫の裏の顔に。
彼らは表面上は仲のいい夫婦の仮面を被ったまま、 互いの殺害計画を練りはじめる。
気鋭の著者二人が夫と妻の視点 を競作する、愛と笑いとトリックに満ちた"殺し愛"の幕が開く!
【感想】
★★★★★
藤石さんが夫パート、辻堂さんが妻パートを担当し、それぞれ交替で殺人計画を描いた面白エンタメミステリ。書いてる人も絶対楽しそう!
アンジャッシュのコントさながらの勘違いから、夫婦はお互いに殺し合いをすることになったラブラブ夫婦の光弘と咲奈。二人はそれぞれお互いに隠している秘密があって、それを勘違いしたことで殺し合いが始まった。その秘密というのもまさか!という感じのもので、とても面白い。
まるで映画のMr.&Mrs.スミス!と思って読んでたらしっかり本編の中でも同じツッコミが。
最初の方はわりと「ハイヒールに仕掛けして足を骨折」「ネコの嫌がることをして引っかかれればいい」「夫の分の料理だけ塩分を多くする」などのの地味ーーーな感じの仕掛け、そして最後の方は大掛かりな殺人へ。どんどんヒートアップする仕掛けにこちらもハラハラしながら同時にワクワクが止まらない。
最後まできちんと楽しめる究極のエンタメ小説でした!
【完全犯罪の目的とは】20 誤判対策室
著者 石川智健
【内容】
見破ってみてください、私の完全犯罪を。
殺人の証明ができなければ、娘の命はない――。
仕掛けられた不可解なゲームに、正義は容易く翻弄される。
絶対絶命の老刑事が己の矜持をかけて臨む、運命の20日間。
7つの「20」が導く禁断の真実。ノンストップ・サスペンスの新定番!
――どうして犯罪者は、自分に繋がる証拠を残すのでしょう?
警視庁を定年退職後、「誤判対策室」――警事、検事、弁護士からなる冤罪調査組織――に再雇用された有馬英治あてに一本の電話が入る。台東区三ノ輪で殺人を犯し、自首してきた紺野真司が証言を一変。容疑を否認し、有馬にしか真実を話さないと主張しているという。勾留中の紺野と対面した有馬は、ひとつのゲームを持ちかけられる。
「私の犯罪を証明し、起訴できなければ、あなたの娘を殺害します」
動揺を隠せない有馬だったが、悲劇へのカウントダウンはすでに始まっていた――。
【感想】
★★★★★
7つの「20」と書かれていましたが、今気づいた!そんなに20にとらわれる必要はないかもしれないけどもう一回読み返そうかな。
面白くテンポもよかったのでサクサク読めました。
完全犯罪を犯し、自首してきた元裁判官・紺野。
しかしその後犯行を否認。「誤判対策室」に属する有馬にのみしか真実を話さないという。しかもそこで、「私の犯罪を証明し、起訴できなければ、あなたの娘を殺害します」 というゲームを仕掛けられる。
完全犯罪を犯したというのになぜ自首したのか
本当に紺野は人を殺したのか。
なぜ有馬にしか真実を話さないのか
謎が深まる中、少しずつ解き明かされていく背景やキーワード。
真実が浮き彫りになり、紺野の目的が果たされたとき、何とも言い難い哀しさを覚えた。
とても楽しめました。