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ぶくぶくブックレビュー

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【思春期の生々しさがとても濃厚な一冊】しろいろの街の、その骨の体温の

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著者 村田沙耶香

【内容】

2013年に三島賞を受賞。
14年に第一回フラウ文芸大賞受賞作の文庫化。

クラスでは目立たない存在である小4の結佳。
女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、
習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、
次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、
ある日、結佳は伊吹にキスをする。
恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら
彼らは中学生へと進級するが――
野間文芸新人賞受賞、
少女の「性」や「欲望」を描くことで評価の高い作家が描く、
女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、
静かな衝撃作。

 

【感想】

★★★★★

思春期の性の生々しさ、醜さ、純粋さが静かに、とても濃厚に描かれている作品。

結佳の性衝動はそのころの私は考えもしなかったりしたけれど、教室での居心地の悪さ、スクールカーストは女子あるあるがとてもリアルで、読んでいるこちらも居心地が悪かった。

 

私たちは、エピソードをくれた男の子に簡単に恋に落ちてしまう。

 

この表現がとても秀逸だし、とても好きだなと思った。

 

伊吹がとてもいい。純粋で、単純で、まっすぐ。結佳がなかなか卑屈な感じだったのでこの伊吹の美しさがとても好きになったし、結佳のこのどうにもならない気持ちがとても際立った。

あと、信子もよかった。信子のナルシストさ、外見の醜さのくだりは「女子あるある」かつ表現が割と直接的でちょっとした嫌悪感も抱いたが、最後に信子が自分のことをからかう井上に反撃するシーン、それを見て結佳が「信子を美しいと思った」のくだり、そしてそのことを伝えたときの信子の反応、結佳の変化。もうほんとに素晴らしい。

 

あとがきにあるように、著者の村田沙耶香さんご本人からは想像もつかないような濃厚さが彼女の本にはあって、癖になってしまう。

 

とにかくこの本は私はすごく好きだったし、素晴らしいと思った。