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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【年上女性×年下男子】天使の卵&天使の梯子

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著者 村山由佳

【内容】

天使の卵

そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない―。第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛した大型新人のデビュー作。

天使の梯子

バイト先のカフェで耳にした懐かしい声。それはフルチンこと古幡慎一が高校時代に思いを寄せた先生、斎藤夏姫のものだった。8歳年上、29歳の夏姫に、どうしようもなく惹かれていくフルチン。だが彼女は、体はひらいても心を見せてはくれない。10年前の「あの時」から夏姫の心には特別な男が棲んでいるのだから―。傷ついた心は再生するのか。愛は蘇るのか。それぞれの思いが交錯する物語。

 

【感想】

★★★☆☆

やっぱり学生時代に読んだ本は、30代になると感じ方が違うなと思いました。

 

昔読んだときは号泣したこの本も、今はやっぱり内容が多少わかっているのと年代の違いから「子供だなあ」なんて思ったり。

何年たっても色あせない、心のベストセラーにはなりえない本でした。

恋愛小説はやっぱりその年代に合った本があるなと思います。

 

 

 

天使の卵―エンジェルス・エッグ (集英社文庫)

天使の卵―エンジェルス・エッグ (集英社文庫)

 

 

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

 

 

 

【女の種族】対岸の彼女

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著者 角田光代

【内容】

 結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。多様化した現代を生きる女性の姿を描く感動の傑作長篇。第132回直木賞受賞作。 夏川結衣財前直見が主演、堺雅人根岸季衣木村多江香川照之国分佐智子多部未華子の豪華スタッフが共演したWOWOWのドラマは、平成18年度芸術祭テレビ部門(ドラマの部)優秀賞を受賞した。 

 

【感想】

★★★☆☆

女には種族がある。子供の時からそれは変わってくるけれど、いつも何かの種族に属している。

子どもの頃だと、真面目でおとなしい種族、遊んでいてあんまり勉強もしない種族、いじめられたり標的になったりする種族・・・・

学校を卒業して大人になるとだんだん変わっていき、独身種族、結婚して子供のいない種族、結婚して子供がいる種族・・・と移り変わっていく。

 

私たちはなかなか対岸の種族に対し積極的に近づくことはできない。

葵は「ひとりが怖い世代」といったが、それに対しては本当に共感。

 

この本では結婚して子供を持つ小夜子と、独身キャリアウーマンの葵の話、そして葵の過去の話との対比が利いている。

はじめは小夜子に共感しつつも、最後は葵の苦しさを感じた。

結末はすごく良かった。

 

 

 

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

 

【脚注に注目】名探偵誕生

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著者 似鳥鶏

【内容】

「神様。どうか彼女に幸福を」――

王道かつ斬新。似鳥鶏が放つ、直球の青春&初恋ミステリー!

 

【感想】

★★★★★

とても面白かったです。ゲラ読みなんですが、「これ紙の本で買いたいからこのまま読んでしまうともったいない気がする」と思わせてくれた本。

 

主人公はどこにでもいる少年、みーくんこと瑞人。近所のお姉ちゃんこと千歳のことが気になっている。

物語は瑞人が小学生の時、通っている小学校で噂の「幽霊マンション」の謎を解き明かすことから始まる。そのことからそのお姉ちゃんが気になって気になってしょうがない。

瑞人もだんだんと成長していき、物語は中学生時代、高校生時代、大学時代まで進んでいく。彼の恋心にも注目だけれど、注目してもらいたいのはもう一つ。

 

「脚注」

 

これがなかなか秀逸。第二章「恋のドトール」から急に脚注が出てきているんですが、もうこの章が私は一番大好きでした。この章には脚注が結構出てきて「へえー!なるほど」と思うものもあれば「セルフ突っ込み」みたいなのもあり、面白すぎました。脚注が出てくるのが楽しみになるくらい。ここの章は盛り上がりを見せてくれました。

 

そして最終章に行くにつれ、みーくんと千歳お姉ちゃんの恋にも変化が訪れてきます。みーくんの一途な恋心、切なさにうるっときます。

 

千歳お姉ちゃんが教えてくれる「推理の方法」はなるほど!と思います。ほかの推理小説を読むときにもこれを考えておくと推理がもっとはかどるかもしれません。

 

あとがきまで面白かったこの作品。最初から最後までとても楽しく読めました。

ドラマにもなっていた「戦力外捜査官」など、作者のほかのシリーズや作品もたくさん出ているので是非読んでみたいなあと思いました。

 

読みやすくテンポもよい作品なので、読書を普段しない人にもおすすめです。

 

名探偵誕生

名探偵誕生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【タイトルが秀逸】君の膵臓を食べたい

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著者 住野よる

【内容】

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。
それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。
読後、きっとこのタイトルに涙する。デビュー作にして2016年本屋大賞・堂々の第2位、75万部突破のベストセラー待望の文庫化!

 

【感想】

★★★☆☆

言わずと知れたベストセラーで、発売当初から気になっていました。観ていませんが映画化もされていますね。

 

読んだ最初の印象としては「ラノベっぽい」文章かな。小説投稿サイトからのデビューなんですね。すごい。

 

評判もいいみたいだったので読んでみましたが、うーん、これは単行本で買う価値まではないかな・・・と思ってしまいました。

 

病気の女の子のリアリティがない。膵臓の病気でお酒飲んだりホルモン食べまくったり糖分とりまくったりしていいの?特に未来の話でもなさそうだし。

そして主人公の彼。病人にブラックジョークきつすぎるでしょ・・・・。こんな子嫌だわ。そして最後まで名前を隠す意味が分からなかったです。最後名前を聞いても「へえ。ああそうだね。志賀直哉村上春樹ね。それで?」としか思えなかった。「仲良し」くんなどと、呼び方で彼女の彼に対する気持ちなどの変遷や彼の周りが彼をどう思っているかがわかりやすいってことかなとは思ったものの、それ必要あるかな・・・と思いました。

 

まあでもそれは置いておくにして、本の大方の筋としてはまあまあだったかな。ラスト、彼女が病気で死ぬのではなく、最初にさらっとはった伏線「通り魔」が出てきたのには意外でした。ほかにもなんとなく伏線あったかなと思いますが、さらっと流されていました。もうちょっとソフビ人形とかロープとか、生かせていたんじゃないでしょうか。

 

そして最後、彼女が亡くなってから一年後、お墓参りに行く描写が分かりづらい。「恭子のことを好きな彼」っていうのは最初途中で出てきたしおりくっちゃくちゃにした委員長が恭子に鞍替えしたのかと思いました。ガムの人って誰だよ。「もしかして」と読み返したら最初にさらっと出てきたあの、最初に掃除してる時に話しかけてきた男の子ね。印象薄くて忘れてたわ。確かにガム勧めてた。

 

「君の膵臓が食べたい」というタイトルはでもよかったです。目を引くし、奇をてらっている。

 

彼女が亡くなる寸前、彼女からのメール「・・・ほら、さっさと」で彼はケータイを置いて、すこし考えている。その後に「君の膵臓をたべたい」とメールを打ち、そのメールは既読になっていた。と会ったけど、現実的に考えて「さっさと」って結構メールの途中だったからこの時に刺されたとして、その後しばらくたってからのメールって読めるだろうか。刺されてしばらく生きてメールが来て、それを読んで亡くなった・・・ってことなのかな。それともお母さんがメール見たとか、変死だし警察が見たっていうこともありそうだけど。ま、彼女が読んだってことにしといたほうが話的にはいいよね。まあそういうことで。

 

映画は結構編集されていて、ラストの部分とかわかりやすそうだったので、もしかしたら映画のほうがいいのかもしれない。これはデビュー作だし、小説投稿サイトの書籍化だし、これからの作品に期待します。

 

 

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 

 

君の膵臓をたべたい Blu-ray 通常版

君の膵臓をたべたい Blu-ray 通常版

 

 

 

 

 

 

 

 

【ほっこり、おいしい】とりあえずウミガメのスープを仕込もう。

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著者 宮下奈都

 

【内容】

書き下ろし短編も!

本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』の著者がおくる食エッセイ

 

「毎月一回食べもののことを書く。食べることと書くことが、拠りどころだった気がする。」(「まえがき」より)

 

月刊誌『ESSE』の人気連載が、待望の書籍化!

北海道のトムラウシに1年間移住したり、本屋大賞を受賞したり……。さまざまな変化があった6年半の月日を、「食」をとおして温かく描き出す。

ふっと笑えて、ちょっと泣けて、最後にはおなかが空く。やさしく背中を押してくれるエッセイ79編に、書き下ろし短編1編を収録。全編イラストつき

 

【感想】

★★★★★

校了前のゲラ読了。

ESSEにて2011年より連載されていたコラムをまとめた本。

 

家族のこと、おいしいもののこと、料理のこと。

この方の暮らしは私の理想です。

 

このエッセイの中で「君の名前」というのが気になりました。

喫茶店にて「君の名前」というメニュウ(宮下さん流に書いてみました)があり、何だろうと考えたところ「片岡義男」でそれは「シュークリーム「だったということらしい。恥ずかしながら片岡義男さんの本は読んだことがなかったので、どんな話だったのかなあと気になりました。短編だそうですが、どの本に載ってるのかなあ。気になる。

 

色々な食べ物が出てきましたが、「読書会」の話も読んでうらやましくなりました。

「神さまたちの遊ぶ庭」で書かれていた食べ物を再現して出してくれていたみたいで、そんな素敵な読書会私も参加したかった!

お弁当の話や子供たちの話もとてもよかったです。

 

最後の短編も、元気が出る感じの話でとても好きでした。

終始ほっこり。

 

日付順ではなく、テーマ別に載せられていたので時系列がばらばらだったのが少し気になりましたが、やはり彼女の書く文章は好きです。

 

是非本が出たら購入したいなと思いました。

 

とりあえずウミガメのスープを仕込もう。

とりあえずウミガメのスープを仕込もう。

 

 

【真剣に仕事をする人はカッコイイ】ハケンアニメ!

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著者 辻村深月

【内容】

監督が消えた!?
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ハケンをとるのは、はたしてどっち? そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす! 熱血お仕事小説。

 

【感想】

★★★★★

これは電子書籍で読んだんですが、途中で「これは紙の本で欲しい。本棚に入れておきたい」と思える本でした。

辻村深月集めようかなー。結構好きな作品が多い。

 

この本はアニメ業界で働く人たち、もしくはそのアニメを使って町おこしを考える市役所の人などの、仕事について描かれた本で、どの人もそれぞれ真剣に仕事をしていて、だれもかれも「カッコイイ!」と思いました。

 

王子監督が逃げた後でも彼を信じて彼と真剣に作品を作り上げる、恋愛には鈍感な長身美女、香屋子。実は逃げてなくてめっちゃ必死に頑張ってたけど、それをあまり周りに’知られたくなくて余裕ぶってる、身長は低いがイケメン、王子監督。王子監督のアニメの会見でのインタビューがとてもかっこよかった!「スロウハイツの神様」チヨダ・コーキも出てきてなんかぶわっと来た。

 

王子監督と同じ時期にアニメがオンエアされる、斎藤瞳監督。彼女も必死で頑張ってるけどかなり思ったことをはっきり口に出すタイプで、最初はあまり好きなタイプのキャラクターではなかった。けど、行城の陰口を聞いたときの彼女の言い返しはこっちもスッキリした。雰囲気イケメン、行城も、斎藤監督が会社を辞めると知った時に彼女に言った言葉がすごく良くて、この人はこの人でいろんな立場の人のことを考えてるんだなと思った。

 

そしてアニメーター、並澤和奈。女子力のかけらもない彼女だけど、「神」原画を書くことで有名な彼女。彼女が斎藤監督のアニメでの「聖地巡礼」について関わることになり、市役所の観光課の宗森と知り合い、はじめは宗森のことを「リア充め」とアニメの何たるかもわかってない彼に対し良い印象を持っていなかったけれど、彼の仕事に対する真剣な態度に読んでるこっちも「かっこいい」と思えた。しかもアニメに詳しい彼の先輩は・・・・!と最後なかなか衝撃の展開が。

 

読んでいてとても熱くなるお仕事小説でした。アニメに詳しくなくてもすごく楽しめるし、この二監督のアニメ、見てみたい!と思いました。

 

 

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

 

 

 

 

 

【反省しない受刑者たち】女子刑務所ライフ!

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著者 中野瑠美

【内容】

覚醒剤で、逮捕4回、通算服役12年。

あの強盗殺人犯も、某カルト教祖の妻も、放火魔も、みんな同じ塀の中

いじめ、介護、出産、同性愛…獄中(なか)のリアルを全部ぶっちゃけます。

覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年もの月日を獄中で過ごした中野瑠美。

男子刑務所とは違い、女子刑務所は、殺人犯も放火犯も万引き犯も、罪の重さに関係なくすべての受刑者が同じ施設に収容される。

そんな「犯罪者のるつぼ」ともいえる世界で、彼女たちはどのように過ごしているのか。

獄中内のヒエラルキーから、いじめ、高齢化問題、食事やおやつの内容や、性の問題まで、塀の外からはわからない、ムショのあらゆる日常を語りつくす。

 

【感想】

★☆☆☆☆

正直出回ってほしくない本です。

 

女子刑務所ライフと称された本書は、表紙通り刑務所の中でのあれやこれがわりと明るく描かれています。

 

著者は4度の覚せい剤での逮捕で合計12年の懲役生活。

 

でも書かれていたのは「受刑者は反省していない」とか「地獄を見る」とか。読んでいる普通の人間からしたら「そりゃもちろん人間としての尊厳は守られなければいけないと思うけど、地獄ではないだろ」という感じで。食事の件とかシャワーの混雑とか大変なことはあるだろうけど、「刑務所」なんだから・・・。むしろもっと地獄を見たほうがいいのではないかと思ってしまう。

 

著書は3人の子供がいて、小さいときから親に子供たちを預けて獄中ライフ。子供に会えないのは寂しいだろうけど、それでも4度も逮捕されているのはいかがなものか。そりゃあ覚せい剤はやめるの大変なんだろうけど、最終的に「私もやめられました」って書いてあったけど、最初に逮捕されたときにやめてほしかった。

1度刑務所ライフを送っただけの人が書いた本なら、ああ、反省したんだなと思えますが4度で合計12年の服役生活。

そりゃ子供もぐれて少年院にお世話になるかもね・・・・と嫌悪感を抱かずにはいられませんでした。

 

刑務官とのちょっとした恋愛みたいのも書かれていたり、とにかく「反省してなさ」が前面に出ていて、正直これは世の中に出回ってほしくない本だなあと思いました。

 

 

女子刑務所ライフ!

女子刑務所ライフ!