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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【犯罪被害者家族が悪党のその後を追う物語】悪党

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著者 薬丸岳

【内容】

探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。依頼に後ろ向きだった佐伯だが、所長の木暮の命令で調査を開始する。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。その後、「犯罪加害者の追跡調査」を幾つも手がけることに。加害者と被害者遺族に対面する中で、佐伯は姉を殺した犯人を追うことを決意し…。衝撃と感動の社会派ミステリ。

 

【感想】

★★★★★

重い、ずっしり重いけれど面白かった。

 

元警官の佐伯は同じく元警官の小暮の事務所で探偵として働いている。

そこに犯罪被害者家族からの依頼で、息子を殺した犯人が今どうしているか、赦せるのかどうか調査してほしいとの依頼。その後も連作短編として同じように犯罪被害者からの依頼で元悪党を追うが、その結果は様々。

 

そして佐伯もじつは犯罪被害者家族で少年時代に姉をレイプで殺されていた。秘密裏にそのレイプ殺人犯も追っていて、復讐をするつもりなのだろうかなどと読んでいて緊張したが、ラストはこれでよかったんだと思えるものだった。

 

 薬丸岳さんの小説はなかなか裏切らないので色々読みたくなる。

 

悪党 (角川文庫)

悪党 (角川文庫)

  • 作者:薬丸 岳
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: 文庫
 

 

【えらく風変わりな主人公とその家族の謎】暗黒残酷監獄

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著者 城戸喜由

【内容】

【もし体がマヒしたら、あなたは切断しますか?】廃用身

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著者 久坂部 羊

【内容】

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

 

【感想】

★★★★☆

著者の久坂部羊さんはお医者さんだそうで、この小説は一見ノンフィクション風に書かれていたのでリアリティがあり怖かったです。

 

小説は2つのパートに別れていて、レポート風に書かれた漆原医師のパート、そして漆原医師から原稿を託されたジャーナリスト目線の話でできています。

 

この漆原医師のパートが本当に医学レポートのように書かれていて、とてもリアル。

漆原医師が働くクリニックは老人用介護のデイケア施設。そこには手足がマヒした人たちもいて、精神的にも不安定な患者さんがいる。

そこで考えた画期的な療法とは、なんとマヒして使えない手足を切断という思い切ったもの。レポートの中ではその後の患者さんが精神的に元気になったことなどが書かれていて読んでいるこちらも、実は本当に画期的なのかな、どうせあっても邪魔なだけだしなんて思わせてきます。

 

ところがところが物語が急展開していき、衝撃的な展開に!どんどん不安にさいなまれていきます。

 

百聞は一見に如かず、是非読んでみてください。

介護の現実などがリアルに描かれていて面白いです。

 

 

廃用身 (幻冬舎文庫)

廃用身 (幻冬舎文庫)

  • 作者:久坂部 羊
  • 発売日: 2005/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

 

【将棋の駒にそんな価値のあるものがあるとは知らなかった。】盤上の向日葵

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著者 柚月裕子

【内容】

実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ?

さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手刑事・佐野は真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは! ?
日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!

 

【感想】

★★★★★

ある山中で発見された白骨遺体には600万相当の将棋の名駒が一緒に埋められていた。刑事はその遺体の身元と誰が殺して埋めたかを将棋の駒からたどっていく。

 

一方、子供のいない夫婦の夫、唐沢は古紙回収で将棋雑誌が抜き取られていることを知り、犯人は誰なのか突き止めようとして一人の少年に出会う。その少年の服がぼろぼろだったこと、やせぎすで小学生のうちから新聞配達をして働きお父さんから虐待を受けていることを知り、将棋好きのその少年と週一回ご飯を食べさせたり将棋を指したりするようになる。そして少年の才能に気付き奨励会に入れようとするもその少年の父親に反対されてしまう。

 

この唐沢と少年・桂介のエピソードがとても暖かく、涙がこぼれた。

駒をたどっていくのと桂介のエピソードが交互にやってきて、「遺体はもしや父親なのか・・・」「けど桂介が殺人なんてするだろうか・・・」などと頭によぎる。

 

「盤上の向日葵」というタイトルも、物語を読んでいくうちにとてもしっくりときた。

 

最後の方、唐沢の妻が「(駒は)息子に譲った」と言った時涙がこぼれた。

 

とても読み応えがあり、面白い作品でした。

 

 

盤上の向日葵

盤上の向日葵

  • 作者:柚月 裕子
  • 発売日: 2017/08/18
  • メディア: 単行本
 

 

【抱腹絶倒のバッタ研究記in モーリタニア】バッタを倒しにアフリカへ

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著者 前野ウルド浩太郎

【内容】

バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに…。『孤独なバッダが群れるとき』の著者が贈る、科学冒険就職ノンフィクション!

【著者プロフィール】
前野 ウルド 浩太郎(まえの うるど こうたろう)
昆虫学者(通称:バッタ博士)。1980年秋田県生まれ。国立研究開発法人
国際農林水産業研究センター研究員。神戸大学大学院自然科学研究科博士
課程修了。博士(農学)。京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。
アフリカで大発生し、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの防除技術の
開発に従事。モーリタニアでの研究活動が認められ、現地のミドルネーム
「ウルド(○○の子孫の意)」を授かる。著書に、第4回いける本大賞を
受賞した『孤独なバッタが群れるとき――サバクトビバッタの相変異と大
発生』(東海大学出版部)がある。

twitter.com

 

【感想】

★★★★★

最近のニュースで東アフリカでバッタ大量発生の被害があるとのことでこの本を読んでみました。彼はモーリタニア、西アフリカでサバクトビバッタの研究をしたとのこと。

 

バッタの研究だけでなく、モーリタニアでの生活、フランス語を話せない彼なりのコミュニケーション方法、そしてバッタがなかなか大量発生しないときのほかの研究(ゴミムシダマシ)のことやかわいいペットとの生活などを面白く描かれています。

しかも出張中には実は私が住んでいるところの近くまで来ていたんだなあと。ファーブルにあこがれた彼、だれもが読んだことのあるファーブル昆虫記、私も是非ファーブルの村に行ってみたいなと思いました。

 

途中途中にある写真とそのコメントには面白かったり、哀愁ただよっていたり・・・。どのページもとても面白いです。

 

私は昆虫は苦手(手足が合わせて4本以上の生き物は苦手)なのですが、それでもバッタの写真などは感動しました。

 

自然が相手でもあるので苦労もあった研究生活だとは思いますが、著者の前向きかついけいけおせおせ的な行動力でとても充実したものだったのではと思います。

名前のウルドについて。これは本書にも記載されていてぜひ読んでもらいたいのですが、「~の子孫」という意味らしいです。そして本書の最後にこのウルドについてのオチもあり、爆笑しました。

 

ぜひぜひこの研究を続けていただき東アフリカのほうのバッタ問題も解決に進めばなあと思います。

 

砂漠のリアルムシキングというブログもあったのでぜひ読んでみたいと思いました。

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

 

 

 

【黒幕は一体誰なのか】坂の上の赤い屋根

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著者 真梨幸子

【内容】

わたしが人殺しになったのは、この街のせい――。

 

人格者と評判も高かった夫婦が、 身体中を切り刻まれコンクリート詰めされて 埋められた。 血を分けた娘と、その恋人によって……。

その残虐性から世間を激震させた 『文京区両親強盗殺人事件』から18年後。

事件をモチーフにした小説が週刊誌で 連載されることになる。

そこで明らかになる衝撃の真実とは!?

 

【感想】

★★★★★

 

一筋縄じゃ行かないホラーミステリーでした。 最初の描写で描かれていたのは、『文京区両親強盗殺人事件』の死刑囚の自分語り。彼は交際中だった当時19歳の女性と一緒にその両親を殺害。

無期懲役だった当時19歳の女性は事故で全生活健忘となり、釈放されたとのこと。
その後この事件について小説を書こうとする「イイダチヨ」と名乗るライター。彼女がインタビューをするのは赤い屋根の家の隣の人、そして死刑囚の元彼女聖子、死刑囚の現在の妻であり、獄中結婚をした法廷画家礼子・・・など。
登場人物が全員何かしら怪しくて、イイダチヨはもしかして・・・とか え、この法廷画家礼子めっちゃヤバい・・・・とか、この昔の栄光をかざしてくる死刑囚の元カノ聖子とかも裏で操ってるのではとか。 思惑が錯綜して真実がなかなか見えてこず、最後を読んでもうゾクゾクしました!

グロテスクな表現もありますが、とても読みやすく面白かったです。
真梨幸子さん、ホラー好きには絶対おすすめ。




 

坂の上の赤い屋根 (文芸書)

坂の上の赤い屋根 (文芸書)

 

 


 

【舞台は寒いけど、熱くて、苦しくて、感動】白銀の墟 玄の月

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著者 小野不由美

【内容】

18年ぶりの書下ろし新作、ついに!
驍宗様(あなた)こそ泰麒(わたし)が玉座に据えた王。
だが――。戴国の怒濤を描く大巨編、開幕!

戴国(たいこく)に麒麟が還る。王は何処へ──。
乍(さく)驍宗(ぎょうそう)が登極から半年で消息を絶ち、泰麒(たいき)も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎(りさい)が慶国(けいこく)景王(けいおう)、雁国(えんこく)延王(えんおう)の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国(くに)に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。──白雉(はくち)は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!

 

【感想】

★★★★★

とうとう読み終わってしまった・・・・。でもまた最初から読み返したい。

しばらくずっと十二国記の世界に浸っていたい。短編も今年出るそうなので絶対買います。

 

さて、戴国編。

前回の『黄昏の岸 暁の天』では、各国の麒麟や王が協力して蓬莱から泰麒を救い出すことに成功。今回はその後のお話です。これ、待ち望んでた人いっぱいいただろうなあ!!

 

とはいえなかなか驍宗は見つからない。少年が面倒を見ている死にかけなひとはもしかして驍宗・・・?とか、泰麒が李斎と別れてから阿選のもとへ行って、「新王阿選」というけれど、もしかして本当に天命が変わってしまったのか、それとも泰麒の思惑は違うところにあるのかずっと謎のままでやきもきしながら読み進めていきました。

 

最後の4巻ではもう、どんどんページ数がなくなっていくのにどんどん絶望していく展開で人もどんどん亡くなっていくし、左手に持ってるページ数がもうほとんどないけれどこれどうなるのどうなるのと不安で仕方ありませんでした。

 

それにしても泰麒は本当に別格でした。これは黒麒麟ということもあったのでしょうか、それとも蓬莱での生活の影響?どちらにしても他の麒麟とは全然違う行動をしていて、今までの十二国記で「麒麟とはこういう生物」ということを頭に刷りこんでいたので、泰麒には非常に驚かされました。

そして気になっていた項梁、園糸と栗(りつ)のこと忘れてなくてよかった!!!!

 

とりあえず短編がでるそうですが、戴国のその後も読んでみたいなあと思いました。

 

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/12
  • メディア: 文庫
 

 

 

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/12
  • メディア: 文庫
 

 

 

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
 

 

 

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫