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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【成瀬のキャラがとてもいい】成瀬は天下を取りにいく

著者 宮島未奈

【内容】

衝撃の新人誕生!?
R18文学賞史上初の3冠受賞で圧巻のデビュー!!!

新潮社は、成瀬を推します!

2021年、今まで窪美澄さんや町田そのこさんを輩出してきたR18文学賞で「ありがとう西武大津店」という作品が初めて3冠を受賞しました。

この作品、恋愛もどんでん返しも大冒険もないですがなぜかすっごく面白いんです!

この「ありがとう西武大津店」を収録した連作短編集、『成瀬は天下を取りにいく』が満を持して刊行になります!

 

【感想】

★★★★★

やたら評判が良かったので読んでみたくなった本。

 

最初のエピソードがとてもよかったです。デパートの閉店に伴い、テレビで閉店まで毎日取り上げられることになったのでそのテレビに映りに行く成瀬。しかも野球の西武のユニフォームを着て。テレビのインタビューは回ってこないけれどなんだか目につくので少しずつ認識されるようになったりSNSでちょっとした話題になったり。

 

なかなか変わった女の子の成瀬、私も友達になりたい!

けどみゆきちゃんみたいにお笑いコンビとか組めないけど。この二人のコンビすごくいいなと思いました。

 

ちょっと一風変わった青春小説で、とても楽しめました。とにかく成瀬のキャラがいい。成瀬のキャラだけで進んでいく物語という感じです。

 

膳所(ぜぜ)という地名、初めて読みました!!この物語でも読まないと絶対に一生知ることがなかった地名だったと思います。個人的にときめき小学校が出てきたので中学校はなんでときめきじゃないの!って思いました。きらめき坂もあるのかな。

 

 

 

【バルセロナを再訪したい】ガウディの遺言

著者 下村敦史

【内容】

 

 

【感想】

★★★★★

ガウディをテーマにしたミステリ。

これを読み終わった後無性にバルセロナに行きたくなった。

ここから車で4時間ほど。

 

以前行ったとき、カサ・ミラに入らなかったことが悔やまれる。夏でものすごく湿気があり暑く、すごい行列だったし入場料が結構高くて、ガウディ制覇したかったけど、「ま、また来れるし今度」と思ってまだいっていない。

 

途中で「サグラダファミリア2020年代に完成する」と書いてあったので、うわ!もうすぐだ!とおもったけど、最後にコロナで白紙に戻ったと書いてあり、『方舟』以来ですが、最後にガクッと来た。

 

カタルーニャ語カスティーリャ語の暗号解読も面白かった。私が住んでいるあたりは「カタラン語」(つまりフランス側のカタルーニャ語)の地域で、標識やメトロの音声案内などにはカタラン語も使われている。少し身近に感じた。

 

バルセロナに行ったときロマの女の人が私の肩掛けカバンのファスナーを開けようとしていて、びっくりして彼女の手を思いっきりひっぱたいた。そんなスリの思い出などを懐かしいなと思いながら、この本を読み終えた。

 

 

 

【戦争反対】ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記

著者 ズラータ・イヴァシコワ

【内容】

たとえ戦争から逃げても、夢からは逃げない。

・報道番組で複数回単独特集、オンエア後問合せ殺到! ・ウクライナ侵攻からの逃避行ドキュメンタリー、出版後の反響必至! ・親子関係、日本と海外での教育の違い、避難民がみた日本のリアル ・明日、日本にもし戦争が起きたら、16歳の少女のような決断ができるか~今、もう一度生き方を考えさせる本
「みなさん、明日は戦争になります」―--。 もし、学校の先生から突然こう言われたら?  マンガの世界だけだとおもっていた戦争が起きたとき、 人見知りだった16歳の少女は、たった一つの夢にすべてをかけて祖国から脱出することを決意した。 もし無人島でたった一つもっていけるものは、なんて考えていたのは何だったのか?  持っていけたのは、1冊の本とスケッチブック。 敵は兵士や爆弾だけではない。 コロナとの闘い、親子の葛藤、運命的な親友との出会い―-現実はマンガより奇なり。 これは夢が明日につながると信じた少女の等身大のサバイバル日記だ。
1章 私を変えた日本語の教科書 2章 皆さん、明日戦争になります 3章 待ったなしの人生・運命のターニングポイント 4章 運命まかせ、列車まかせ 目指すはポーランド 5章 日本を見ずに死んでたまるか 6章 今、そこにある転機 7章 世界でいちばん自分が不幸に思えるときの乗り越え方 8章 今日のホテルは道端!? 9章 母と夢と今日という日 10章 待ちわびて日本への飛行 11章 戦火がつくった友情 12章 私を救ってくれた日本の足長お姉さん 13章 憧れとため息の日本 14章 本音をいえば、アルバイトより仕事がしたい16歳 15章  日本の当り前は世界の素敵『ワンダーランドジャパン』 16章 やっぱり、日本が好き、人が好き
※本書の売上の一部をウクライナ人道危機救援をはじめ日本赤十字社が行う国際活動に寄付いたします。

 

【感想】

★★★★★

戦争は、どこか遠くの自分たちには関係ない話ではない。爆撃などの攻撃はなくても、物価が上昇したり、私たちは現在、戦争を経験しているのだ。

特に日本へ帰る飛行機が一人3000ユーロを越えているので切実に戦争が終わってほしいと願っている。給料は変わっていないのに物価は上がるし日本への一時帰国もなかなかかなわない。

 

先日『戦争は女の顔をしていない』を読みました。それはソ連時代のドイツとの戦争の話で、女性視点からの戦争についての語りがとても印象的でした。

 

piyopiyobooks.hatenablog.jp

 

ズラータさんはまだ16歳。自分の時の16歳は何も考えずに高校へ行き平和に楽しく暮らしていた。

元々日本に憧れがあり独自で日本語を学習していた彼女だけれど、今回の戦争で単独日本に来ることになった。しかし、彼女が日本語を勉強していたおかげでポーランドで日本人ジャーナリストに会い、テレビの取材を受けたり無事に日本に来れて色々な援助を受けることができたのは、運ではなく彼女の努力と挑戦の結果だ。

 

YouTubeで彼女がポーランドでお母さんと取材されていた映像も見た。彼女は現在夢に向かってものすごく頑張っている。16歳で。一人で。

 

彼女の住んでいたドニプロの場所を調べてみた。ドニプロの集合住宅も攻撃を受けたらしく、彼女の友人や家族がいなかったことを願ってやまない。続きも読みたいので、日本に帰った時に買いたいなと思う。

 

 

 

【ジェンダーレストイレについて考えた】赤泥棒

【著者】献鹿狸太朗

【内容】

誰も無傷ではいられないーー。
心と身体の居場所を探す高校生たちの姿を、無呼吸で叫ぶように描かれたデビュー作。

「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する・・・・・・。

表題作『赤泥棒』に加え、文藝賞最終候補に選ばれた『青辛く笑えよ』、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる『寄食のダボハゼ』をおさめた短編集。

 

【感想】

★★★★☆

なかなかの衝撃作。

特に一番初めのお話の始まりが衝撃的過ぎる。

 

内容にも書いてあるが、女装をして女子トイレに侵入し、生理用ナプキンを盗むのだ。

ちょっと話題になっていた歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレを思い出した。どうやら今はパーティションで区切られて女子トイレもできたらしいけれど。

ジェンダーレストイレだったらこういう人は別に女装をするまでもないよね。

普通に生理ナプキンが捨てられているトイレに入れるんだから。

 

女性としてはすごく嫌。

ジェンダーレストイレを作るのはいいけれど、なぜ女性用トイレをなくすのか本当に意味が分からなくて逆にその頭の中をのぞいてみたいとさえ思う。

しかも基本的に男性がそこを利用するのは「大」の時。そのあと入るの絶対嫌だ。

ジェンダーマイノリティに対する配慮はいいんだけど、なぜ女性に対しての配慮をなくすのか。更衣室とかトイレとか、男性が入ってきたら怖くて仕方がない。変質者に追いかけられたら逃げることもできない。

 

私は日本在住ではないけれど、前に通っていた市民プールの更衣室は男女分かれていなかった。ただボックスがあり、棚が少しあるのでそこにカバンを置けるが基本的に昔懐かし電話ボックスサイズのものが10か所くらいあり、すべて施錠できるタイプ。そこで男女の区別なく着替えることができる。荷物は鍵付きロッカーが別に用意されていてそこに入れる。もしジェンダーレスをどうしても採用したいのであればそういうのでいいのではないか。ちなみにシャワーは壁にシャワーが取り付けられていて水着のまま使用する感じだったような気がする。

 

本の話題に戻ろう。

とにかく最初の序盤が衝撃的過ぎたけれど、なかなか面白い作品だった。

2番目のお話もなんかすごいけれど面白かった。男子の友情も良かった。

 

 

 

 

 

 

【現在のロシアウクライナの状況もこれと同じ】戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

【著者】スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ

【翻訳】  三浦 みどり

kindle unlimitedがまたキャンペーン中なので入った。

 

【内容】

ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し,看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った.しかし戦後は世間から白い目で見られ,みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――.500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした,ノーベル文学賞作家の主著.(解説=澤地久枝

 

【感想】

★★★★★

寝る前に読んだのがいけなかった。

寝る前に一気読みしてしまったので、なかなか寝付けなかった。

 

ずっと語られてこなかった、女性視点からの戦争。

ソ連とドイツが戦争をしていたときの女の話。しかし、女性だからと言って洗濯や料理、看護師などという人たちだけではなく、希望して前線で男たちと同じように戦った人もたくさんいる。

 

現在もウクライナとロシアは戦争中なので、その人たちに思いをはせながら読んだ。

 

残酷な描写も山ほど出てくる。ニュースでも山ほど死体の映像を見た。この本の中では戦争は過去の話だったけれど、現在のこの状況を見て、彼女らはどう思っているのだろう。

 

戦争で親や兄弟を亡くし、夫や恋人を亡くした女性たち。

多くの人は、お墓を作ってあげることすらできない。私は平和な暮らしをしていて、こういう悲しみや絶望は想像すらつかないところにいる。なぜ戦争をしなければならないのか。なぜこんな悲しい思いを国民に味わわせるのだ。この時からずっと変わっていない。

 

女性兵士には生理の問題がある。

もともと兵士は男性ばかり、生理用品の準備なんてあるわけがない。そしてもちろん男性用の緩い下着をはかされている。

彼女らは流れ出る出血を垂れ流すほかはない。寒いので血はかたまり、股はすれる。

下着の袖をつかい当てるしかないが、下着は2枚のみしか与えられていないので袖は4本。

生理が止まってしまう人もいて、それはそれで辛い。

 

 

生まれたばかりの子供を自分の手で殺さなければいけなかった女性がいた。

たくさんに人と隠れていて、赤ちゃんがお腹がすいてミルクをのみたいのだけれど、母親もお腹がすいていて乳がでない。赤ちゃんが泣くと外の兵士に見つかってそこに隠れている全員が殺されてしまう。母親は自らの手で子供を殺さなければならなかった。

 

たくさんの子供がいる母親。子供たちはドイツ兵に撃たれて殺された。残っている、自分が抱えている赤ちゃんを、ドイツ兵が「空中に投げて撃ち殺そう」と楽しそうに言っている。その前に母親はその子供を地面にたたきつけ、自らの手で殺した。

 

なんという絶望か。

 

 

 

 

 

 

苦しい余韻が今でも続いている。

 

この本を参考に書いてあるらしいのでこれも読んでみたいと思った。

 

 

マンガ版もある。読みやすそうなので是非。

 

 

 

【新築を建てといて住まない人の謎】ノースライト

著者 横山秀夫

【内容】

週刊文春ミステリーベスト10」国内部門 第1位!
「このミステリーがすごい! 2020年版」国内編(宝島社) 第2位!
「ミステリが読みたい! 2020年版」国内作品ランキング(早川書房) 第2位!

無人のY邸に、なぜ「タウトの椅子」が残されていたのか?
そして、仲睦まじそうに見えた一家は一体どこへ?
感動を超えた人間ドラマがここにある。

北からの光線が射しこむ信濃追分のY邸。建築士・青瀬稔の最高傑作である。通じぬ電話に不審を抱き、この邸宅を訪れた青瀬は衝撃を受けた。引き渡し以降、ただの一度も住まれた形跡がないのだ。消息を絶った施主吉野の痕跡を追ううちに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在が浮かび上がってくる。ぶつかりあう魂。ふたつの悲劇。過去からの呼び声。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。
 
【感想】
★★★★★
この本ずっと読んでみたくて、でも文庫待ちしてて、やっと文庫になったからAmazonジャパンで買ってこっちまで送ってもらったんですよね。Amazonジャパンで海外でも買い物できるってほんといい。何気のAmazonで買うより配送が早かったりするし。
 
でもなんか、もったいなくて読めなくて積読になってたんですよね。
 
やっぱすぐ読めばよかった。凄く面白かった。
ドラマ化もされていたんですね。ドラマで実際のお家を見てみたいなあと思いました。NHKか・・・。u-nextとかにないかな。あってもNHKだと有料だろうな。
 
さて、お話は、建築士が建てた最高傑作のお家に、依頼者が住んでいないという謎から始まる。行ってみると玄関の鍵は空いてるしおいてあるのは椅子一脚。
 
しかしその椅子一脚がその依頼者一家を探す手掛かりになるというお話。
 
建築のこととか家具職人のこととかあまりよくわからないですが、タウトは実在する人物で、ネットで調べながら読みました。面白かったです。
 
吉野淘太とか、香里江とか、タウトとエリカ(タウト妻)の偽名かなって思ってました。香里江とか読みづらくてなんじゃこの名前と思って、淘太が出てきたときにあれ?タウト?みたいな。でも真実はまた違っていて。とても楽しめました。
 
 
 
 
 
 
 

【何度もページをめくる手が行ったり来たり】いけない

著者 道尾秀介

【内容】

★ラスト1ページですべてがひっくり返る。
話題の超絶ミステリがついに文庫化!

各章の最後のページに挟まれた「写真」には、
物語がががらりと変貌するトリックが仕掛けられていて……。
2度読み確実! あまりの面白さが大反響をもたらした、
道尾秀介渾身の超絶ミステリ。


第一章 「弓投げの崖を見てはいけない」
→自殺の名所が招く痛ましい復讐の連鎖。
第二章 「その話を聞かせてはいけない」
→少年が見たのは殺人現場? それとも……。
第三章 「絵の謎に気づいてはいけない」
新興宗教の若き女性幹部。本当に自殺か?
終 章 「街の平和を信じてはいけない」
→そして、すべての真実が明らかに……。

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。

 

【感想】

★★★★★

とても面白かったです。

一話目からええ??ってなってしまいました。

最初の方のページに「殺されたのは誰?」と書いてあるのですが、その通り最後に人が死にます。でも、誰が殺されたのかは第一話には書いてはないです。ただ、ヒントがあり、最後のページに写真がついています。それを見て推理するのですが、何回も何回も死にそうな人のページを行ったり来たりして、ようやく「まさかこの人?」そして死んだのはこの人のせい?と強制的に推理させられます。

 

第二話、第三話とそんな感じで自分で推理していき、最終章で真実だったりヒントだったりが描かれています。(第二話一回読んだだけではよくわからなくて最終話の会話でやっとわかった!)

 

ネタバレサイトもたくさんあるこの小説、『いけない2』もあるそうで、ぜひ買ってみたいなと思います。面白かった!