【偽の妊娠を貫き通す】空芯手帳
著者 八木詠美
【内容】
第36回太宰治賞受賞作
『太宰治賞2020 』のムックより、受賞作を抜粋して掲載いたします。
単行本化は、2020年秋の予定。ぜひご注目ください!
【あらすじ】
紙管製造会社に勤める柴田は、女性だからという理由で雑用をすべて押し付けられ、
上司からはセクハラ紛いの扱いを受ける34歳。
ある日、はずみで「妊娠した」と嘘を吐いたことをきっかけに、
“にせ妊婦”を演じる生活が始まってしまう。
しかしその設定に則った日常は思いがけず快適で、
空虚な日々はにわかに活気づいていった。
やがてマタニティエアロビに精を出し始めた柴田は、
そこで知り合った妊婦仲間との交流を通して“産む性”の抱える孤独を知ることになる。
表面的な制度や配慮だけは整っていく会社、ワンオペ育児や産後うつに苦しむ女性たち……
現実は「産んでも地獄、産まぬも地獄」だった。
柴田は小さな噓を育てることで自分だけの居場所を守ろうとしていた。
そしてついに、ぶじ妊娠40週めをむかえた柴田の「出産」はいかなる未来を切り開くのか――。
【感想】
★★★★☆
偽妊婦として産後までしっかり嘘をつき通しているのが面白い作品。
途中でばれそうなものなのに、それにしても主人公・柴田が妊娠生活を楽しんでいるのも面白い。
マタニティエアロビに行ったり。徹底して妊婦を貫くこの主人公の根底にある気持ちが切なくも面白かった。
とても奇妙なんだけど周りの人の変化も面白く、リアルでよかった。