【入れ替わって１５年】君の顔では泣けない
著者 君嶋彼方
【内容】
高校１年の坂平陸は、プールに一緒に落ちたことがきっかけで同級生の水村まなみと体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた陸だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、うまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。男として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながら、陸は高校卒業と上京、結婚、出産と、水村まなみとして人生の転機を経験していくことになる。
【感想】
★★★★★
入れ替わりもの。
入れ替わりものって男女、年の差、立場、色々なパターンですでに出尽くした感があるくらいたくさんありますが、この物語は、高校の同級生の男女が岩川って１５年。
３０歳になり、もはやその人生を自分の物として過ごさざるを得なかった二人のお話です。とても斬新で引き込まれました。
描写も結構生々しい。物語は主に坂平くん目線です。
入れ替わったとたん生理を経験する坂平くん。
中に彼が入ったまま、襲われそうになり、「女性として生きるのにきちんとしていかなければいけない」とちょっと男らしさ？を見せる坂平君。
処女をなかなか捨てられない坂平君。そして初めてのセックスを体験する坂平君。そして妊娠し、出産をする坂平君。描写がリアルで面白いです。
彼は結構保守派でナイーブな感じなのですが、現坂平君の中身水村まなみは案外ひょうひょうとしていてパニックになる坂平君をなだめたり、あっという間に童貞捨ててしまったり、男とも付き合ってみたり。
それでもまなみだって懸命に生きている。そんな片鱗がちらちらと見えるのはとても切ない。
この作品がデビュー作ということで、次回も楽しみな作家さんです。
