プロフェッショナルな読者 グッドレビュアー 500作品のレビュー 80% VIPメンバー NetGalley.JPベスト会員2021

ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【人に嫌悪感を与える存在であるということ】獏の掃除屋

著者 風森章羽

【内容】

夜のトンネルで「悪夢の相談承ります」と添えられた名刺をもらった奈々葉。彼は悪夢を食べる能力を持つ男だったーー

白木の家系に稀に生まれる、「獏憑き」の黒沢彩人。
桂輔が社長を務める「白木清掃サービス」で、依頼者の夢の中に入り、悪夢の原因となる穢れを取り除く夢祓いを行っている。

実家のパン屋を継ぐ夢を絶たれた館平奈々葉
妻子と別れ、占い屋を営む根津邦雄
四歳の娘にどうしても優しくできない笑原香苗――

他者の穢れを喰べ悩みを解決し続けた彩人が、今度は桂輔の悪夢を喰べようとすると、
白木家に潜む自分の出生の秘密が明らかになり――

 

【感想】

★★★★☆

夢を食べる動物、獏。

獏は想像上の生き物で、獏の生態について考えることはなかったけれど、このお話の中の獏はとても孤独だった。

 

獏憑きとして生まれてきた彩人。ぶっきらぼうな感じだけれど、そのぶっきらぼうさはきっと彼の孤独から、人とあまり関わらないようにしてきたからだと思われる。

その彩人の飼い主、桂輔は彩人のことをとても大事に思っている。

 

獏憑きの使命は依頼人の夢を食べることで、そして獏憑きの寿命はとても短い。そして極め付けに見た人に嫌悪感を抱かせる背中の痣。そんな獏憑きの彩人が何も欲しがらない、期待をしないというのがとても悲しかった。すでに獏憑きとしての運命が悲しすぎるのに、短いと思われる人生を堪能しようともしないなんて。獏憑きじゃなくても、こういう人っているだろうなと思った。

 

鬱とかであったり、生きづらさを抱える人たちも、こういう考えをする人がいるのかもしれない。そう言った人たちに桂輔のような、救いが現れるといいなと思った。