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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【婚活している人に是非読んでもらいたい】傲慢と善良

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著者 辻村深月

【内容】

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

【感想】

★★★★★

婚活で出会った一組の男女の大恋愛小説。

 

西澤架・・・父親が始めた事業を受け継いだ、小さな会社の社長。アラフォー。30代前半の時に付き合っていた20代の女性に結婚を迫られるも流し、振られた過去を持ち、後悔。アプリなどの婚活を使って50人以上の女性と出会い、真実と出会い、結婚を決意した。

坂庭真実・・・親に進路も就職も何でも決めてもらいずっとやってきた人。地元ではお嬢様大学といわれる香和大学出身であることが誇り。地元での婚活につかれ東京で一人暮らしを決意し、架と出会う。

 

この二人がメインのキャラなんですが、正直私は読んでいて真実という人物が好きではありませんでした。どっちかというと私は彼女の姉の希実タイプ。

 

けど、読み進めていくうちに架が真実が最初に利用した結婚相談所の小野里さんという女性と話をしたり、お見合い相手と話をしたりしていくうちに、婚活事情というものや、架がカウンターパンチを食らったりしているところ、そしてこの本の題名にもなっている「傲慢さ」と「善良さ」のせいで結婚できない人が多いなど、実際私も実は今婚活している30代以上の人なんかをちょっと下に見ている部分もあったんですが、気持ちも理解できるようになったというか。

同じく最近婚活の話を書いた『うちの子が結婚しないので』とはまた違った辻村深月さんらしい切り口で、読んでいてとても興味深かったです。

 

piyopiyobooks.hatenablog.jp

 

そして面白かったのが香和大学のくだり。

中学からそこに通っている子は"純金"。高校からの子は"18金"。大学からの子は"メッキ"って呼ばれて。

これはもう、名古屋の金城大学のことですね。このネタ使うなんて!ちょっと興奮しました。

 

最初はどうかなーと読み進めていましたが、どんどん登場人物たちの気持ちに共感をしていって、最後はもう、グッときました!

婚活で出会ってすぐ結婚っていうのは恋愛結婚とはまた違うのかなあと思ってましたが、婚活で出会っても大恋愛になる!

とてもよかったです。

 

傲慢と善良

傲慢と善良

 

 

 

 

【次刺されたら死ぬ】雀蜂

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著者 貴志祐介

【内容】

11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!

【感想】

★★★☆☆

思ったよりB級パニックホラーって感じでした。

読んでいて楽しかったです。

なぜか雀蜂が飛び回る別荘。逃げ回る安斎。

最終的にはスキーウェアとフルフェイスヘルメットと思いもよらない+アルファで完全防御!

想像したらめちゃ面白くて笑ってしまいました。

私も高校の時に学校で刺されていて次刺されたらアナフィラキシー発症しそうなので共感はしましたが。

最後のオチまで楽しめました。

 

雀蜂 (角川ホラー文庫)

雀蜂 (角川ホラー文庫)

 

 

【買って、読んでよかった素晴らしい本】かがみの孤城

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著者 辻村深月

【内容】

鏡の世界で謎を追う不登校児 大人と子どもの目が共存する救いの物語

大人である現在の自分と、子どもだったあの頃の自分の両方を、同時に、ここまで慰め、励ましてくれる小説なんてはじめてだ。辻村深月の新作『かがみの孤城』のことである。

中学一年生のこころは、ある出来事を機に学校へ行けなくなり、いつも家で過ごしている。ある日一人で家にいると、部屋の鏡が突然輝き始め、潜り抜けてみると、そこは城の中だった。集められたのはこころを含め、似た境遇にいるらしき中学生が七人。九時から十七時まで滞在が許されるその城で、彼らにはひとつの課題が出される。猶予は一年。戸惑いながらも七人は、少しずつ心を通い合わせていくのだが……。

大人も子どもも、みんなが関係を構築していこうとしている。その部分だけでも充分読ませるが、もちろんミステリーパートも秀逸で、孤城の秘密がすべて明かされていく終盤は驚きの連続。それがまた、胸をしめつける真相だ。救いを求める側から救う側へとなった時、人は本当に救われるのだとも気づかせてくれる一冊である。

【感想】

★★★★★

すごく良かった。さすが本屋大賞

鏡の中のお城に招かれる不登校の子供たち。

お得意のSF(スコシフシギ)な世界のお話。さすが辻村深月さんという感じで、かなり分厚い本でしたがあっという間に一気読みしました。

フリースクールの先生は、なんてすばらしい人なんだ、でも途中でもしかしてこの人の正体は・・・とか、この世界はパラレル世界ではなくもしかして・・・なんて結末はわかってしまいましたがそれでもものすごくよかった!!!お見事としか言いようがないです。ほんとに辻村深月さんの本は大好き。最後はもう涙なくしては読めませんでした。感動の嵐が待ってました。これは、絶対いろんな人に欲しい布教本です。

 

 

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 

 

 

 

 

【どちらの結果になっても辛いだけ】望み

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著者 雫井脩介

【内容】

東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登(いしかわかずと)と校正者の妻・貴代美(きよみ)。
二人は、高一の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)と共に、家族四人平和に暮らしていた。
規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、二人は特別な注意を払っていなかった。
そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡すら途絶えてしまった。
心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、二人は胸騒ぎを覚える。
行方不明は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとも……。
息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。揺れ動く父と母の思い――。
『火の粉』の不穏な空気感と『クローズド・ノート』の濃密な心理描写。
両方を兼ね備え、執筆時、著者が最も悩み苦しみ抜いた、渾身の力作。

 

【感想】

★★★★★

一戸建てを購入する予定なので最初の家の描写に「なるほど、参考になる」なんて読み始めました。

 

途中から事件が起こる。長男の規士が家に帰ってこないし電話も通じない。

そして近所では彼がかかわったとされる事件が。

 

果たして息子は被害者なのか、それとも加害者なのか。葛藤が募る。

被害者であった場合、亡くなっている可能性が高い。加害者であった場合、友人を死に至らしめたということでこれから家族として何をするべきなのか、どんな未来が待っているのか。

どちらを選んでも辛い。

 

最後の方に書かれていた

「信じるとか信じないとか、一登たちが’勝手にぶつかり合っているときにはもう・・・・」

最初から結果は決まっていたというところでもう涙が止まりませんでした。

 

読んでいる間中辛くて辛くて仕方なかった本ですが、すごく良く描かれているなと思いました。

 

 

望み (角川文庫)

望み (角川文庫)

 

 

 

【朝井リョウ風味の世にも奇妙な物語】世にも奇妙な君物語

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著者 朝井リョウ

【内容】

いくら流行っているからといって、経済的にも精神的にも自立した大人が、なぜ一緒に住むのか(第1話「シェアハウさない」)。その人がどれだけ「リア充」であるかを評価する、「コミュニケーション能力促進法」が施行された世界。知子のもとに、一枚の葉書が届く(第2話「リア充裁判」)。親のクレームにより、幼稚園内で、立っている金次郎像が座っているものに変えられた!(第3話「立て!金次郎」)。…そしてすべての謎は、第5話「脇役バトルロワイアル」に集約される。

1 シェアハウさない
2 リア充裁判
3 立て! 金次郎
4 13.5文字しか集中して読めな
5 脇役バトルロワイアル

【感想】

★★★★★

もともと世にも奇妙な物語朝井リョウも好きなので、この二つの組み合わせはもう神でした。

 

しっかり朝井リョウ風味になっていて、もう全話面白い!

 

いちばん怖ーーーって思ったのは第四話。「13.5文字しか集中して読めな」どんなタイトルって思ったけど、いやーオチがほんと怖い。

第三話の「立て! 金次郎」はもう普通に世にも奇妙な物語にありそうな感じ。

もう、1から5まで「世にも奇妙な物語」としてドラマ化してほしいです。キャストももう決まってるし(笑)

 

かなりお薦めです!

 

世にも奇妙な君物語 (講談社文庫)

世にも奇妙な君物語 (講談社文庫)

 

 

 

 

【親婚活は過保護か否か】うちの子が結婚しないので

一か月夏休みを日本で過ごして戻ってきました。少しずつ記事もアップしていく予定です。

 

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著者 垣谷美雨

【内容】

老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。 28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ……? 不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!

 

【感想】

★★★★★

「親婚活」ちょっと気になってました。

図書館で226人待ちで、夏休み1か月の間はやっぱり借りられなかったので帰国前に購入。

なのでこの本を読んでなるほどーーー。と。うちも下はいい歳した独身なので。

婚活、大ブームですね。近所のお寺も「寺婚活」なんて垂れ幕がありました。最近は若いうちから婚活していかないと結婚できないみたいな風潮も伺えますが・・・。お見合いというものもあまりしない世代なので、婚活なんてものも流行るのかもしれませんが。

 

さて、28歳の一人娘、成人してから誕生日もずっと出かけたりしない一人娘。確かに親御さんは不安に思うかも。でも28歳で婚活について考え始めた両親は賢明。

年取るにつれて難しくなっていくのが婚活。

はてさて婚活で結婚するのってどうなんだろうとかも思いつつ。

まあお見合いみたいなものだよね。ただしお見合いと違って婚活の場合は身元が確かではない人が来るので選ぶのも一苦労。

親婚活はさらに、親の気持ちも入るので、一昔古い世代だと

・息子が家事ができないしそういうことをやってもらえるお嫁さんがほしい。

・自分たちを介護してくれるようなお嫁さんが欲しい。

とかそういうのも入ってくる。やっかいなことに

・でも共働き

なんて現代風なことも言ったり。

 

この本の中では「あるある」とか「うわーこういう人いそう!!」など、リアルな親婚活が描かれていてとても楽しかったです。やってると大変なんだろうけど。

 

 

うちの子が結婚しないので (新潮文庫)

うちの子が結婚しないので (新潮文庫)

 

 

 

 

 

 

【悪だくみ三人組の後始末をさせられるフランス人ちゃっかり神父】モッキンポット師の後始末

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著者 井上ひさし

【内容】

食うために突飛なアイディアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の“不良”学生3人組。いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師──ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作。

 

【感想】

★★★★★

カトリック学生寮に住む大“不良”学生3人組と寮を管理する関西弁モッキンポット師の話。

またこの3人組の悪知恵が働くことはたらくこと。

そのたびにモッキンポット師が各方面へ謝罪し「頭髪をかきむしりながらフランス語で呪いの言葉を吐き散らしながら」3人組を指導する。

最初はモッキンポット師の人の好さ、カトリックの教えに付け入って全く反省せず悪い三人組だと思ってましたが、モッキンポット師もなかなかちゃっかりしているところがあったり、何より関西弁ということでなんかとっても面白いんですよね。やりとりが。

 

解説や井上ひさし氏の年譜が最後にあり、最後の最後まで楽しく読めました!

 

モッキンポット師の後始末 (講談社文庫)

モッキンポット師の後始末 (講談社文庫)