【私の推し王は断然珠晶】図南の翼
著者 小野不由美
【内容】
この国の王になるのは、あたし! 恭国(きようこく)は先王が斃(たお)れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔までも徘徊(はいかい)していた。首都連檣(れんしよう)に住む少女珠晶(しゆしよう)は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしと教育を与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂えた珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山(ほうざん)を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟(きりん)によって、王として選ばれるのか。
【感想】
★★★★★
十二歳ながら王を目指す珠晶。
賢く勇気もあり、時には大胆ですが間違いは謝ったりできるこの珠晶が私は大好きです。
この巻で
『
』で出てきた更夜が出てくるのです!しかも立派になって!!!!もう更夜の名前が出てきたとたん感動に震えました!
さて、話は戻りますが珠晶。彼女は実は『風の万里 黎明の空』でもちらっと出てきましたが彼女のはっきりとしたところが私はすごく好きなんですよね。あまり出てこないですが彼女の麒麟は状に深いがあまり頼れなさそうな。珠晶とぴったりなんじゃないでしょうか。よくできてるー!
この話はロードノベル的な展開で、豪商の娘の珠晶が王になるために昇山し、困難に巻き込まれながらも運に恵まれめっちゃ頑張ったのち最終的に王に選ばれるというストーリーです。麒麟に選ばれたときの台詞も珠晶らしくて面白いです。
【ファンタジーでありながらリアリティのある十二国記の世界】丕緒の鳥
著者 小野不由美
【内容】
「絶望」から「希望」を信じた男がいた。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか──表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編を収録。
【感想】
★★★★★
ここにきて短編集。
これは王の下で働く下っ端の人たちや市井の人たちを描いた作品。
この作品によってまた十二国記の世界に深みが生まれました。どんどん深みを増していく十二国記。この作品に出会えて本当に幸せです。
さて、短編集ですが、4編収録されています。
「死刑」をめぐる話。これはまた現代に通じる話であると思います。何とも言えないラストも、これはこれで読み手に「あなただったらどうする?」と考えさせてくるものだと思います。
陽子の前の王、予王により女全員国から出ていけと言われ家族を亡くし、友人も失くし、希望を失っていた少女がまた希望を取り戻していくお話。あらたな景王によって救われていってほしいと思った。
【景王と助さん格さん】風の万里 黎明の空
著者 小野不由美
【内容】
人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊(しょうけい)は、芳国(ほうこく)国王である父が簒奪者(さんだつしゃ)に殺され、平穏な暮らしを失くし哭(な)いていた。そして鈴は、蓬莱(ほうらい)から辿り着いた才国(さいこく)で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難(くるしみ)を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福(しあわせ)を信じて歩き出すのだが──。
【感想】
★★★★★
景でのお話。またここで陽子のストーリーに戻ります。
急に王になった陽子はこの世界のことが何もわからず役割も果たせず舐められるばかり。なので市井で遠甫という老人から教えを乞うことに。
そして違う国「芳」では王の娘祥瓊(しょうけい)が王である父や母を目の前で殺され、王宮を追い出され貧乏生活を余儀なくされて今までとの生活の差に泣き暮らす日々。
また、「才」では蓬莱から流されてきた鈴が、言葉もわからない異世界で戸惑い、言葉が分かる仙に出会い自身も仙として下女に召し上げてもらいながらも女主人の横暴に泣き暮らしていた。
陽子、祥瓊、そして鈴が重なるとき、私には聞こえてきた、あの音楽・・・・
「人生楽ありゃ苦ーもあるさーーーー♪」
今までの中で一番スッキリするエピソードでした。もう印籠や桜吹雪が見えるかのような勧善懲悪ストーリーでした。
上巻あたりで祥瓊や鈴にイラっとするんですよね。やっぱり。
祥瓊なんかはもうフリガナが振ってないときは「なんて読むんだっけこの子!!」なんて全然関係ない苛立ちまで。
登場人物が増えていくにつれ、名前や言葉が難しくなってきます。章ごとにフリガナが振ってあるのでとても親切なんですが老いてきた脳にはそれでも追い付かないことがしばしば(笑)
いい国になってほしいなあ、景。末永く続いてほしい。
【何も考えていないようで実はすべてが見えているかのような王】東の海神 西の滄海
著者 小野不由美
【内容】
国が欲しいか。ならば一国をやる。延王(えんおう)尚隆(しょうりゅう)と延麒(えんき)六太(ろくた)が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くのか。そして、血の穢(けが)れを忌み嫌う麒麟を巻き込んだ争乱の行方は。
【感想】
★★★★★
十二国記、500年以上前のエピソード。
十二国記の世界観ならではです。王やその下で働く仙は年を取らない。何百年でも。
雁(えん)の国の延王尚隆と、延麒六太の物語。
尚隆はやることなすこと結構ハチャメチャな王ですが、それでも500年も続く雁国。
その延王尚隆と、延麒六太の信頼関係が生まれるストーリーでした。
ここで延麒六太の言葉が気になります「尚隆は雁国を滅ぼす王だ」
これはずっと十二国記を読んでいくと短編に出会い、そこで奏の太子と会話をしているときに「なるほど、そういう意味なのか。ある意味めっちゃ怖いな」なんて思いましたがここでは割愛。是非読んでみてください。
尚隆もなかなか、市井に紛れ込んで内側からいろいろと活躍していきます。何も考えていないようで実はすべてが見えているかのようなそんなかっこよさがあります。六太が救出されたときに「あまり心配をかけるな」と声をかけたのにはもううるっと来ました。かっこよすぎでしょ。
ここでとても怖いエピソードがありました。
幽閉されている人が出てきますが、仙は年を取らず、病気などで死ぬこともないので飲まず食わずでも生きながらえてしまう。誰にも会わずひたすら長い時を死ぬこともできずに生きるというのは何と辛いことなのだと思いました。
ここで出てくる六太の友人、更夜ですが、またまた後のエピソードで登場し、感動します。一気読みのいいところはたくさんいる登場人物を覚えているということですね(笑)その時々で読み直しするのもそれはそれで楽しいですが。
【泰麒をひたすら愛でる巻】風の海 迷宮の岸
著者 小野不由美
【内容】
幼(いとけな)き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕(しょく)〉で蓬莱(ほうらい)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。
【感想】
★★★★★
これはエピソード0「魔性の子」の「神隠しの間」のストーリーになっています。
胎果で流されてしまった泰麒、しかし捜索の結果蓬莱から連れ戻しに成功。
麒麟への転変もできぬ、麒麟としての役割もよくわからない幼い泰麒の葛藤の物語。
とりあえずもう泰麒がものすごくかわいい。蓬莱(日本)では弟や祖母との関係に委縮する泰麒でしたが、蓬山でのゆったりとくらしに戸惑いも見せる。しかも大きな役割「王を選ぶ」が自分にきちんとできるのか、悩む泰麒。
Netflixアニメでも出てきたエピソードですが、正直活字の方が分かりやすかったというか、泰麒が王を選ぶとき、「王気」が小説の方では感じられたのではないかと思います。アニメでも面白いですが私は断然活字派でした。
ここでも世界観がどんどん複雑になっていきます。
麒麟も胎果から生まれ、母ではなく女仙によって世話をされます。
複雑になっていく世界観ですが、物語に深みが増してくるようでとても面白く感じられました。
【人生の教訓は十二国記で学べる】月の影 影の海
著者 小野不由美
【内容】
「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。
【感想】
★★★★★
十二国記の世界第一巻!
ここでやっと十二国記の世界が見えてきます。
優等生だった女子高生陽子のもとに急に金髪のケイキと名乗る男が現れ異世界に連れていかれた。
十二国記はもともと講談社ホワイトハート文庫から出ていた作品でライトノベルレーベル作品だったんですね。なのでこのお話もザ・ライトノベル的な感じで始まります。よく言う異世界召喚的なやつですね。
でも、申し訳ないですがよくある異世界召喚ラノベと違い(あまり読みませんがだいたい主人公がチート並みに強くて結構事がうまく進んだり美女といちゃいちゃできたりするんでしょ←偏見)もうなんか世界観からして全然違います。子供はなんか木の実から生まれたりするし。
主人公陽子は異世界に飛ばされながら景麒(ケイキ)とも離れ離れになりますが蝕を起こした「海客」としてとらわれたり死にそうな目にあいながら裏切られながらも必死で生きていきます。「騙されるんだしもう信じない!」とくさっていきます。
そこで出てくるヒーロー「楽俊」。いっちゃえばネズミ男なんですがもうネズミ姿なんて気にならない、めっちゃイケメンなんですよ。心が!
彼は「半獣」と呼ばれる種族で、彼の国「巧国」では差別の対象。勉強したくても学校に入れてもらえないし仕事もできない。頭が良いのですが生かすことができない。
半死状態の陽子を救って彼女を「雁国」まで案内してくれるんですがほんとうに楽俊の考え方は、全世界の人たちが目にすべきだと思う。もうなんか人生の教訓本なんていらない、十二国記さえあれば!っていう感じです。
神様の考え方も面白かったです。
当たり前のことを頑張るだけで願いはかなうのだから神様にお願いなんかする必要もない。
日々神頼みで「こうなったらいいな!」とか言ってばかりいるだらけた精神を鍛え直したいです!
楽俊のおかげで無事陽子の身柄もはっきりし、そこからは怒涛の展開で景王となる陽子ですが、ボリュームもちょうどよくてサクサク読むことができました。というか、ゆっくりじっくり読みたいけどページが勝手にどんどんめくられて行ってしまう。
エピソード0の魔性の子、エピソード1の月の影 影の海、どちらから読んでもハマれると思いました。
私は新潮文庫が大好きで(なぜならスピンがあるから!)毎回ダ・ヴィンチのアンケートにも好きな出版社は新潮文庫と書くくらいですが、十二国記も新潮社からの完全版を購入しました。新潮社様、ありがとうございます。是非これからもスピンをつけ続けてください!
可愛いしおりもたくさんありますが、やっぱスピンがあるといい!
【十二国記はじめました】魔性の子
著者 小野不由美
【内容】
どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。
【感想】
★★★★★
十二国記シリーズに手を出しました。ページをめくる手が止められず眠れない日が続いています。
最新の4巻連続刊行ということもあり、ダ・ヴィンチで十二国記特集が組まれておりました。ファンタジー物が苦手な私は今まで手を出さずにいたのですが、Netflixでアニメ版もあったので、家事しがてら流し見してたらまんまとハマりました。アニメ版は少し設定などが違っていますが、それはそれで面白かったです。
この魔性の子はエピソード0ということで、1から読むかこれから読むか迷いましたがとりあえずここから読んでみることに。
十二国記の世界じゃないんですよ。現代の日本というか、高校でのお話。
高里というちょっと変わった子が気にかかる教育実習生広瀬。自分も臨死体験しており、自分がいる世界はここではないのではないかと考えていた広瀬にとって高里は動詞なのかもと思えて気にかかる。
高里の周りでは怪奇現象が起こる。高里を悪く言ったり手を出したものはけがをしたり悪ければ死を迎えることも。
と思いますが、高里は実は十二国記ではかなりメインのキャラクターなんですね。後々わかることですが。
魔性の子は魔性の子で、ホラー小説として面白い。しかしこれが十二国記の物語へ続く序章でもあり、とても楽しんで読むことができました。この裏側が描かれたものがまた後のエピソード8『黄昏の岸、暁の天』につながっていきます。そこまで一週間で一気読みしてしまったので休憩がてら感想をどんどんアップしていこうと思います。