【喪失からの希望】春を待つ
著者 松下隆一
【内容】
愛する家族を喪った者たちの絶望が希望に変わる日
愛する息子を喪い、未来をなくした夫婦は悲しみの果てに離別。
平和だった家族は崩壊した。
それから数年を経た命日の前日、夫は過去を忘れるために、息子の骨壺を抱え、心が凍てつき暗い家に引き籠る妻を訪ねる。
だがその途上、夫は実の両親を亡くした少年と出会い、妻の家に一緒に泊まることに。
その日から心に仄かな灯が生まれた。
3人の孤独な魂が寄り添う時間のなかで、それぞれの絶望が希望に変わり、夫婦は再生の路に立ち、少年は未来に向かって歩みはじめる。
「人は少しずつよくなるしかない、少しずつ幸せになるしかないんだ……」
第1回京都文学賞受賞作家であり、NHK『雲霧仁左衛門』など、映画やドラマで絶大な影響力を誇るベテラン脚本家が、人間の業、そしてどん底から這い上がる人の強さと家族の絆を感動的に描く。
【感想】
★★★★★
子どもを失くした夫婦+放置子の話。
子どもを失くし、離婚した夫婦。そこに放置子が加わってつかの間の幸せな「家族」生活を送る。
いつかこの幸せが終わってしまうのかと思いながら読み進めていくのはなかなか辛かったです。できればこの幸せが続いてほしい、この3人で家族になれることはないのだろうかと願いながら読みました。
震災、水俣病なども出てきて、そういえば友人の夫は長崎の被爆二世だったなあと思いだしました。私より少し年下ですが、30代でも被爆二世がいるということに聞いたときは少なからずショックを受けました。
水俣病とか、社会でちょこっと習っただけの記憶しかなかったですけれど、こういうストーリーを読むと、ものすごく辛いなと思います。苦しんだ人がたくさんいるでしょう。今も、震災のことで心も体も辛い人もいる。コロナ禍でさらに辛い思いをしている人がいる。
少しずつ幸せな「春」に向かって生きていくしかない。
200ページ以下ですぐに読めてしまう話ですが、とても考えさせられました。