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ぶくぶくブックレビュー

読んだ本のレビューを書いています。

【急に脚光を浴びた検疫という仕事】成田空港検疫で何が起きていたのか ─新型コロナ水際対策の功罪─

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著者 田中一成

【内容】

──成田空港検疫所600日間の闘いの記録と元検疫所長からの提言──

空港検疫は、国内へのウイルス流入を阻止する最初の関門である。

新型コロナ感染症のアウトブレイクにおいて、その水際の最前線で何が起こっていたのか? 

元成田空港検疫所長による記録の書。

普段、ほとんどの人が意識することのない空港検疫だが、新型コロナウイルスの流行によって注目を集め、水際(出入口)=検疫というイメージから、時に「お粗末」「対策が粗い」など批判の的となった。

圧倒的な人員不足の中、現場ではさまざまなドラマも起こっていた。

検疫体制強化のために机や椅子をはじめとした備品をレンタルしようとしても、ウイルス汚染の風評被害を懸念し、リース業者は頑なに対応を拒否した。

帰国する日本人たちの横暴な態度にも悩まされた。

そして、パンデミック下のオリンピックでの検疫という、前代未聞の事態も経験することになる。

未曾有のパンデミックに検疫が混乱したのは事実。しかし、今回生じた数々の問題は、従来、検疫制度が抱えてきた問題が、コロナという極めて厄介なウイルスによって顕在化されたことによるところが大きい。この経験を検証し、改めるべきことは改めていかないと、次、新たなウイルスがやってきたとき、私たちは同じ過ちを繰り返すことになる、というが著者の切実な思いである。

2020年春から始まった新型コロナウイルスパンデミックの記録と、この先、議論・検証される検疫制度改革に対する現場からの提言。 

 

【感想】

★★★★★

 

検疫官という仕事についてどれくらいの人が知っているだろうか。

コロナ禍になり急に脚光を浴びた検疫官。

私は以前空港で働いていたので検疫官という仕事をある程度、お客さんに案内できる程度には知っている。仲良くなった検疫さんともご飯に行ったことがある。

検疫官はだいたい空港や港にいて、日本に植物や食べ物から病気を媒介する虫や海外から病気などが持ち込まれないように頑張っている人たちだ。

コロナ禍の前は、空港に降り立った時、入管の前に通っていくけれど、サーモグラフィーで発熱などがないか、なにか症状がないか見ているが、乗客はほとんどの人がただ通過していくだけだろう。

 

時々虫取り網を持って到着した飛行機に乗り込んでいく。何のためか聞いたところ「かぞくちょうさ」と言われた。家族調査?虫取り網持って?と思ったら「蚊族調査」だった。飛行機の中にマラリアなど病気を媒介する蚊がいないかなどを調べるらしい。

普段そんなに目立つことはないけれど、とても大事な仕事であり、厚生労働省所属の国家公務員だ。

 

この本はコロナが始まったころから成田空港でどのように検疫官が動いていたのか書かれた本だ。検疫の仕事に対して少し知っている私も、今回のコロナで初めて知った人も、国の、特に上のほうの対応に「お粗末」と思うことだろう。特にコールセンターのくだりは本当にそう思った。

検疫官は普段から少人数でいろいろな仕事をしている。それに加えて今回のコロナでたくさんの人員が必要になった。なのにひっきりなしにかかってくるクレームの電話。あまりにも仕事に差し支えるのでコールセンターを作ったところ、コールセンターが検疫に聞いてと検疫に回してくるという・・・。何のためのコールセンターなのか働いている人にきちんと説明はしていないのか、簡単でもマニュアルはないのか・・・。

 

その他にも、未知の病気で検疫に近づきたくない、できれば海外から来る人とは距離を置きたい。その気持ちはとてもわかる。私もそうだった。

けれど、数少ない(思ったよりすごく少なかった検疫官)検疫官や医療従事者に、国はその人たちが現場でスムーズに、きちんと仕事ができるようにしてあげないと思う。未知のこと、初めてのことで現場に混乱が出るのは仕方がないと思う。それでも国が現場で働く人たちにさらに負担をかけたり混乱を招いたりするのはどうなのか。何が起きているのか、当初は誰にもわからなかった。それでもできるだけスムーズに対応するにはいろいろな機関の対応も必要だ。

 

2年前よりはだいぶ仕事もわかってきたしウイルスに対してもわかったこともあり、ワクチンの普及もあって少しはましになったのかもしれない。それでもまだまだ隔離やアプリ対応、検査などなど、忙しい日々はなかなか終わらなさそうだ。

 

まだまだ落ち着かない日々が続きますが、検疫官の皆様、いつも本当にありがとうございます。

 
 

 

 

【×解決〇処理】桜底 警視庁異能処理班ミカヅチ

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著者 内藤 了

【内容】

彼らは、事件を解決せず救わず、ただ「処理」する。
内藤了待望の新シリーズは、警視庁の底に棲むやつらを描く、
前代未聞の警察×怪異チーム誕生!

☆☆☆
ヤクザに追われ、アルバイト先も失った霊視の青年・安田怜は、路上で眠っていたところ、サラリーマン風の男に声をかけられる。
曰く「すこし危険な、でも条件のいい仕事を紹介しよう」「場所は警視庁本部――」

警視は首無し幽霊、同僚も捜査一課も癖の強いやつばかり。
彼らは人も怪異も救わない。仕事は、人知れず処理すること。

桜の代紋いただく警視庁の底の底、彼らはそこにいる。

 

【感想】

★★★★☆

幽霊×警察の小説って結構ありますが、これはとても面白かったです。

登場人物のキャラクターが個性が強く、読み手を引き込みます。 結構怖い幽霊が出てきたり、平将門の怨霊とか、都市伝説とか呪いのようなものも出てきます。

 

昔授業で教えるために日本三大怨霊について昔調べたことがあるのですが、それだけでも結構面白い。 本当に警視庁の形って「呪」の形してるのかなとか思わずグーグルマップで調べてしまった。

 

心霊現象や呪いを解決しない、処理するちょっと変わった警察ミステリー。

このシリーズ、追いかけてみたいなと思いました。

 

 

 

【雰囲気のある、奇妙な話の数々】 10の奇妙な話

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著者 ミック・ジャクソン

【内容】

隠者となった男、蝶の修理屋を志す少年、骨を集めてネックレスを作ろうとする少女。ブッカー賞最終候補の著者が、日常と異常の境界を越えてしまった人々を描く珠玉の短編集。

 

【感想】

★★★★☆

扉をめくると最初にそのお話の絵が描かれているんですが、なんとも味のある奇妙なイラストで、このお話の雰囲気にぴったりだと思いました。

 

こういう本、昔大好きでした!雰囲気のある、奇妙な物語。

短編なので読みやすいです。 私は「蝶の修理屋」と「もはや跡形もなく」が好きでした。

蝶の修理屋に関してはちょっと昔教科書に出てきたヘルマンヘッセの「少年の日の思い出」を思い出しました。 エーミールが潰してしまった蝶はもうこの修理キットでは直せないけれど・・・。ああ懐かしい。少年の日の思い出をやったあと、この本に出会いたかった。

もはや跡形もなくは切ないお話でした。お話によってちょっと怖い感じだったり、色々な気持ちになれます。いろんな読後感も楽しめるし、何より雰囲気がある!こういうの好きな人絶対いっぱいいると思う。

短編でとっつきやすいので是非電車などでの移動中や、お休み前に!

 

 

 

 

 

【入れ替わりの王女】王女の遺言 1 ガーランド王国秘話

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著者 久賀 理世

【内容】

王女アレクシアはかつて、驚くほど自分とそっくりな顔をした少女に出会ったことがある。
うら寂れ、冷えきった聖堂にいたのは、襤褸をまとった物乞いの少女ーー。
偶然にすぎない、その一度きりの邂逅が、いずれ数え切れない命を食らいつくす陰謀を呼ぶことになろうとは、いったい誰に予想できただろうか。

政略結婚で異国に嫁ぐことが定められている王女ーー。
明日にも“花”を売ることになりそうな貧しい孤児ーー。
生き写しのような姿をしながら、身分も境遇も正反対の二人がその立場を“入れ替えた”とき、波乱に満ちた物語の幕があがる!!

 

【感想】

★★★★☆

面白かったです。オレンジ文庫なのでラノベなのかなと思いましたが、結構しっかりとした文章で読ませてくれます。

 

最終巻の4巻が出たところらしく、続きが気になるところで終わってしまったのでKindleで4巻まで一気に買うか、2-4巻を買うか、それとも2巻から順番に勝っていくか迷う。

 

世界には、3人自分とそっくりな人がいると言われています。

王女があったのはボロボロの服を着て明日にでも娼館に売られてしまいそうな自分とそっくりの少女。「逃げたらいい」と自分の着ていた外套を私少女に言う王女。

 

時が立ち、王女が他国へ嫁ぐために向かっていると船が賊に襲われてしまう。護衛の騎士に助けてもらいなんとか一命をとりとめたものの、娼館に売られてしまう。そしてそのころあの時の少女は女優になり、王女の身代わりという役を引き受けていたという話。

 

王女アレクシアも、女優ディアナもすごくすごく魅力的なキャラクターで、とてもハラハラする展開が続くけれどすごく面白かった。

 

あー、やっぱ続き買おうかな。とりあえず2巻から買って面白かったら3巻買おうかな。kindleってそういうのが便利です。海外に住んでいても日本の活字が読める。

 

 

 

 

 

 

【大人のいない島】 無邪気な神々の無慈悲なたわむれ

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著者 七尾 与史

【内容】

辻村正樹と京子夫妻が瑠偉を養子に迎えて1年目。記念旅行として美しいリゾート児宝島を訪れた。ちょうど島の生き神様について取材するという鶴見真治、朱美夫妻と知り合い、ともに島に向かうことに。ちょうど前日隕石の墜落があり、さらに近隣の島には怪しげな電波を研究する研究所があるいう。そんな話を聞きながら到着した島は、奇妙なことに大人不在、宿も無人。無邪気な笑顔を浮かべた子供しかいなかった。正樹と京子が大人を探し回ると、隠された死体を見つける。その死体は、まるで子供が人形を壊したように腕をもがれ、髪が抜かれ、無邪気ないたずらで壊されたようだった……。 

 

【感想】

★★★★☆

七尾与史さんの作品て「ドS刑事シリーズ」とか「死亡フラグシリーズ」とかしか読んだことがなくて、ミステリーだけどちょっとコメディ色の高い作品を書かれる方だと思っていました。ちなみに今は全裸刑事シリーズが読んでみたくて読みたい本リストに入ってますが。

 

そんな七尾与史さんの作品だから、と思って、表紙結構怖い感じだけど、タイトルもなんかちょっと怖そうだけど・・・と読んでみました。

 

はい怖い。ただただ怖い。最後までずっと怖い。

 

ちょっとどこかにコメディ要素あるのかなーと思ったけれど、全力で探したけれど、子供たちを追いやる作戦くらいかな、ちょっと面白いのは。え、これなんだ。でも確かにwみたいな。あとはただただひたすら怖い。

 

ホラー好きの人に強くお勧めします!

 

 

 

 

【文字を読んでいるのに目が楽しい】 鎌倉硝子館の宝石魔法師 守護する者とビーナスの絵筆

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著者  瀬橋ゆか

【内容】

鎌倉・鶴岡八幡宮のそばにひっそりと佇む『硝子館 ヴェトロ・フェリーチェ』は、

謎めいたイケオジの店長と、時折美青年に変身する黒猫のいる不思議なガラス雑貨店。

女子高生の桐生更紗(名前ルビ:きりゅう・さらさ)は

「王子」と呼ばれる同級生・蒼井悠斗(あおい・ゆうと)が、

そこで「家業の手伝い」をしていることを知るのだが、

ここは、人の持つ唯一無二の「心の宝石」を鑑定&メンテナンスする

『宝石魔法師』の一族が営む店で――⁉


訪れる人たちが、それぞれ抱える心の傷を宝石の魔法が癒す、

色鮮やかなほっこりジュエリーミステリー!

 

【感想】

★★★☆☆

「綺麗なものを見たら喜ぶと思って」

うわーイケメンにこんなこと言われたらきゅんときちゃう!

悩みを宝石で解決してくれる素敵なショップ、私も行ってみたい。

出てくる宝石想像するだけで頭の中が綺麗になってくる。

私、きれいなものを見て(読んで)喜んでるよ!、蒼井くん!

出てくるおやつも美味しそうだし、蜂蜜がいろいろあるっていうのも素敵。フルーツサンドが食べたくなりました。

想像して目が喜ぶ一冊でした。

 

 

 

【心えぐられる】 ドライブインまほろば

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著者 遠田潤子

【内容】

生きるのに理由なんかいらへん。

誰の許可もいらへんから――

幼い娘を亡くした女、義父を殺めた少年、親に捨てられた男。

もし、十年に一度現れる“奇跡の池”を見ることができたなら……。

家族の崩壊と人間の再生を描き切る感動長編、待望の文庫化!

 

#あらすじ

山深い秘境を走る旧道沿いにぽつんと佇む「ドライブインまほろば」。店主の比奈子が一人で切り盛りする寂れた食堂に、突然男の子が幼い妹を連れて現われた。憂と名乗る少年は「夏休みが終わるまでここに置いてください」と必死に懇願する。困惑する比奈子だが、事故で亡くした愛娘の記憶が蘇り、逡巡しながらも二人を受け入れてしまう。その夜更け、比奈子は月明かりの下で激しく震え慟哭する憂に気づいた。憂は、義父を殺し逃げてきたことを告白し――。「生きる意味」を問い、過酷な人生に光を灯す感動長編。

【感想】

★★★★☆

すごく重く辛い話で読んでいるのがとてもきつかった。  

虐待をする父親と離婚し、再婚後義理の父親からも虐待を受ける少年。

 

あまりにも辛すぎる現実が、少年を凶行に走らせてしまった。

 

少年は妹を連れ「十年池」へと向かう。 途中でお腹がすいてよった「ドライブインまほろば」のオーナーと出会うがそのオーナーも辛い過去を背負っていた。登場人物全員がしんどい。

 

でもその中でも嫌悪感を抱いてしまうのは芽衣という少年の母親。 育児放棄して男に依存してしまうこの母親も、辛い過去を背負っていたが、それでも彼女のしていることは許されない。  

けれど最後は希望が持てる終わり方だったので、そこは救われたかな。