【絵画に込められた画家の秘密】ショパンの心臓
著者 青谷真未
【内容】
「あの絵は、俺にとって“ショパンの心臓”なのだ」世間から忘れ去られた画家がひっそりと 息を引き取った。彼が遺した最高傑作と呼ばれる作品と謎の言葉「ショパンの心臓」。そこには、二つの国に引き裂かれた作家の苦悩が隠されていた……。傑作アートミステリ長編。
【感想】
★★★☆☆
表紙のイメージよりも読みやすい文章でした。
就職活動負け組の、礼儀作法も知らない学生上がりの健太が、『よろず美術探偵』というところでバイトをしつつ就活をするという感じで働き始めた。
そこで立花貴和子という美術館に勤める女性からの依頼を受け、『ショパンの心臓』という絵を探すことに。
何せ働いたこともなく礼儀も知らない健太。そんな健太に時々イライラさせられることもありましたが、貴和子が一喝してくれたりスッキリする場面もしばしば。
絵の謎に迫っていくにつれ、絵画に秘められた思いや画家の秘密、そして健太が抱えていた秘密まで暴かれる。
軽い感じなのに読んでいくうちにディープな、暗いものになってきて、読みごたえがありました。
【韓国の真実】82年生まれ、キム・ジヨン
著者 チョ・ナムジュ
【内容】
女性が人生で直面する差別の現実を正面から描く!
韓国で絶大な共感を得て100万部、 社会現象となった異例の大ベストセラー小説、ついに日本上陸。
ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかの様子のキム・ジヨン。誕生から学生時代、就職、結婚、育児……彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。
【感想】
★★★★★
82年生まれ、私とほぼ同じなんですけど。
同じくらいに生まれて、あんな感じで家族の中で性差別とか、社会で明らかな性差別を受けるとか、今の韓国の様子や流行ったドラマからしてとっても意外でした。最初読み始めたとき、「あれ?中国の話だっけ?」とか「北朝鮮だっけ?」とか思いました。
道を歩けばセクハラに会う、就職試験を受ければ「もしお酒の席で取引先の相手がセクハラをしてきたらどうする?」なんていう質問を受ける。家族の中でも男性優位。産休育休はほとんどとれない。
彼女と同じ年代だからこそ日本とはっきり比べることができる。もちろん日本の社会にもやはり、性差別っていうのはある。女性の総理大臣もまだ出ていないし、産休育休も他の国と比べて取りにくかったりとかもある。私も就職の面接のときに「結婚したら仕事をどうするか」という質問を最終面接で女性面接官から受けた。
でも、ここまで明らかな感じではない。「オルチャン」とかで有名になった韓国の女性たちも、こんな目に合ったりしたのだろうか。
最後の一行。ここまで語ってきた精神科医の言葉。「自分も性差別を受けたりした妻を持つから彼女の気持ちがよくわかる」といってからの最後の言葉。やはり韓国での性差別はまだまだ続いているんだなあと印象的でした。
【いい意味で裏切られた結末】烏に単は似合わない
著者 阿部 智里
【内容】
史上最年少松本清張賞受賞作
人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界「山内」ではじまった世継ぎの后選び。有力貴族の姫君四人の壮大なバトルの果て……。史上最年少の松本清張賞受賞作品。解説・東えりか
松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作。壮大な世界観と時代設定に支えられた時代ファンタジーをご堪能あれ。
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか? あふれだすイマジネーションと表現力、そして予想を覆す意外な結末。
最後まで息をつかせない極上のエンタテイメント!
【感想】
★★★★★
私、ファンタジー系苦手なんですよ。でも、この本はずっと気になっていて、夏にとりあえず3冊購入してきました。
最初の方はなんか、ファンタジーそのもの+後宮での女のバトルみたいな感じで、このままだとまあ、普通の本だな、って思っていました。そしてなかなか若宮出てこないなみたいな。メインはあせびで、あせびのシンデレラストーリー系かと思っていたら。
若宮が出てきた後半、全部ひっくり返りました!
最初の方、若宮なんだよ今更出てきてこんな感じはないわーって思ってましたが、読んでいくうちにえっえっ!みたいになりました。
いやー天然女が一番怖い。
あとがきにも書いてありましたが、こういう書き出しからあんな展開になるとは想像もつかない。
アマゾンのレビューは結構悪いです。酷評されてます。確かに登場人物に感情移入できないのは確かだし、デビュー作らしくキャラクターにもぶれがあるのも確か。
でも、でも、私は面白かったです。若干20歳の人が書いていてこういうストーリー展開なら、まだまだ成長していくし、先が楽しめそうと思います。
【本当に自分の兄なのか、盲目だからわからない】闇に香る嘘
著者 下村敦史
【内容】
村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。
27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。
【感想】
★★★★★
内容のところを読んで面白そう!と思い購入した本。
なぜ母親と田舎で暮らす自分の兄は、自分の孫の為に腎臓移植の検査すらしてくれないのか、兄は自分が盲目になってから中国から帰ってきたから、もしかして兄は偽物なのかもしれない。と盲目の主人公、村上和久は兄を疑う。
兄を調べていくうちに不審な人物から「私はお前の本当の兄だ」とで電話が来る。果たして兄は本物なのか、それともこの人物が本当の兄なのか・・・・。
とっても面白かったです。
中国残留孤児についてはあまり私はよく知らないのですが、中国から帰ってきてからの日本での教育というか、生活をしていくうえで基盤を作る教育は、私が今住んでいる国で行った移民教育よりもひどいなと感じました。
日本人なんだから、もっときちんとしてくれてもいいのにと思いました。
オチもとてもよかったです。ほかの著作も読んでみたいと思いました。
【おっさんずラブ】東京パパ友ラブストーリー
著者 樋口 毅宏
【内容】
夫婦ってなに?
子育てってそんなにしんどいの?
ヒグタケ渾身の、怒濤の痛快子育てエンタメ!
有馬豪は、30歳という若さながら、青山にあるファンドマネージメント会社のCEO。5歳になる亜梨が通う保育園で、鐘山明人というおっさん建築家と出会い、飲みに誘われた。楽しく過ごした豪だったが、その晩、明人に唇を奪われてしまう。
怒りながらも急速に明人に傾いていく豪。
これが、それぞれの妻を巻き込んでの地獄の幕開けとも知らずに――。
子育てと仕事の葛藤、夫婦の狂気が切なく刺さりまくる、高濃度圧縮エンタメ!
【感想】
★★★★☆
30歳の若き社長有馬豪はまなみという妻と、亜梨という名前の娘を持つパパ。
まなみは絵にかいたような社長妻というか、金持ちの奥様という感じで、娘をいい学校に入れるために自身も英会話学校に通ったりとか、お料理上手だったりとか、いつもきれいにしている、雑誌「VERY」に出てくるような奥様。
そして50代の鐘山明人は奥様が政治家で、女性政治家としてフェミニズムを謳っていて、光(ライト)という息子がいる。
そんな二人が出会ってひょんなことから恋に落ちていくという純愛小説。
ドラマも流行りましたが、小説界でもおっさんずラブ!
しかもめっちゃ純愛そして主夫と社長。
妻からするとこれは仰天、しかも妊娠中に発覚とか、たまったもんじゃなくて、社長側の奥様、まなみはすごい剣幕だったけど、内心こういう奥様嫌いだったのでちょっとすっとしました。
とってもロマンチックだったのですが、映像で想像するとまたおっさんずラブ的な構図が思い浮かんでしまい(年齢的にも)ちょっと面白かったです。
2018年 おすすめ本ランキング
最近いろいろと忙しくなかなか本が読めていませんでした。
さて、2018年のお薦めランキングです。
第一位
神さまたちの遊ぶ庭
『羊と鋼の森』を書いた宮下奈都さんのエッセイ。北海道の僻地で暮らした記録です。とにかく面白い。この夏宮下奈都さんの小説やエッセイを買いあさってきました。とりあえずこの本は布教用でいくつか買って友人のプレゼント用などにしたいなと思いました。本をそんなに読まない人でも軽く読めます。
新しく出た『とりあえずウミガメのスープを仕込もう』もおすすめ。
第二位
こちらはなかなかの衝撃作です。
ありえない状況ながらも、どこか現実的で、考えさせられる作品。
第三位
ノンフィクションです。ドラマでもあった通り、刑事裁判の有罪率99.9%を覆すのはとても難しい。そしてお金になるわけでもない。この弁護士さんはその99.9%と向き合い、戦う人物。面白かったです。
第四位
大好きな作家さん、朝井リョウさんの作品です。
すごく心に刺さるものがありました。さすがです。つんくさんの書くあとがきも見ものです。
第五位
テレビ番組だったものの書籍化です。できるのものなら映像としてみたかった!大好きな作家さんの実態や、おすすめ本などが紹介されています。読書好きにはzった言お薦めの一冊。
第六位
図書館の本で読みましたが、これは絶対買おうと思いました。文庫化が9月だったので間に合わず、来年買うことにします。涙なしには読めませんでした。
第七位
これは、すごく心に刺さりました。女性にも、男性にも、未婚既婚問わず広く読まれてほしい作品です。いろんな立場の視点から考えることができます。
第八位
『百年法』も是非是非読んでもらいたい作品です。
視点が面白いですよね。SFっぽいんだけど、夢中で読んでしまいます。
第九位
普段よく使うトマト缶やトマトケチャップの闇を覗いてしまった。全く他人ごとではない、みんなが知るべき真実が書かれている。
第十位
もうなんか、タイトルからして「なにやってんの」って感じですが、面白かったです。現在彼女は新しく本屋さんの店長をしているみたいで、行ってみたいなと思いました。
さて、その他にもおすすめがあります。
2018年おすすめ マンガ
これ、全五巻でちょうどいいんですよ。ダヴィンチのプラチナ本で見て読んでみたんですが、本当におすすめです。ハマってしまい「スケットダンス」も読みました。これもよかったですがいかんせん長い。本棚にしまっておくにはこれくらいの作品がちょうどいいんですよね。
2018年おすすめ 絵本
これはNetGalleyで見て、こっちの本屋さんで売っているフランス語版ですがすぐ購入しました。それくらい良かった!ワイン好きにはお勧めです!!!
また来年も素敵な本に巡り合えますように!
【関西弁の男の人ってなんかいいな】世界の端から、歩き出す
著者 富良野馨
【内容】
京都での出会いが起こした
小さな、確かな奇跡。
就職も決まった短大二回生の秋、篠崎千晴のもとに叔母から奇妙な依頼が舞い込んだ。ずっと存在を知らされていなかった「叔父」に届けものをしてほしい、というものだった。戸惑いながらも、千晴はある箱を持って彼を訪ねるが、その中身は――。
出逢いが出逢いを呼び、人との縁が人生を確かなものにしてくれる。孤独な半生を送ってきた千晴が最後に見つけた場所とは……。京の街が舞台の、思わず涙が頬を伝う再生の物語。
【感想】
★★★★★
はっきり言ってめちゃめちゃよかったです。
幸せではない、冷たい家庭で育った主人公、千晴が、ある日叔母にそんなに年の離れていない叔父のシンさんがいることを聞く。届け物などで何度か会ううちに、シンさんの暖かさを知る。シンさんも千晴の父や叔母とは父親が違うため、育ってきた環境が、家族に恵まれず、家族の暖かさを知らないところが千晴と似ていた。
千晴の家族がとてもとても異様で、読んでいてこちらも怖くなった。特にお父さんが怖い。もはやサイコパス。
反対に、シンさんの彼女のレイコさんがすごくすごく好きで、素敵だと思った。レイコさんとシンさんのカップル、すごくいい。
千晴が叔父に対して抱く「余すところなく幸せになってほしい」という気持ちが、とても素敵だった。
そして千晴にもやがて出会いが。それはものすごい出会いだったけれど、すごくすごく素敵な人で心の中で「がんばれ!」と応援したくなるような。めっちゃいいひと。
読んでいて途中途中涙があふれてきた。
シンさんも、千春も、幸せになってほしい。
心がとても温かくなりました。
ていうか関西弁の男の人、いいな。なんかきつい感じだけど優しいみたいな。
お薦めです。
(P[ふ]5-1)世界の端から、歩き出す (ポプラ文庫ピュアフル ふ 5-1)
- 作者: 富良野馨
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2018/12/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る